2024年度の介護報酬改定で、特養(介護老人福祉施設)の基本サービス費の改定状況を従来型個室とユニット型個室で比較した場合、16単位〜26単位の引き上げとなっている。(※下記図参照)

この改定率が高いのか低いのかは、個人によって感じ方に差が生ずるかもしれない。
しかし前回2021年度の改定状況と比較して考えると、わかりやすくなるのではないだろうか・・・ということで下記図が2021年度の改定状況である。

これをみて解かるように、前回は従来型個室とユニット型個室で比較した場合、14単位〜16単位の引き上げでしかなかった・・・しかもこの引き上げの中には栄養マネジメント加算14単位/日と口腔衛生管理体制加算30単位/月が報酬包括されていたために、15単位上乗せされて初めて同レベルの報酬になるというカラクリがあった。
つまり2021年度の特養の報酬改定は、実質マイナス1単位〜プラス1単位でしかなかったのである。
それを考えると今回の16単位〜26単位の引き上げは実質的な引き上げ額であり、8月〜居住費(光熱水費相当分)の基準費用が1日60円引き上げられることと併せて考えると、平均でマイナスとなっている特養の収支差率の改善につながる改定ではないかと思う。
イヤそうではない・・・物価高を考えると、これでも引き上げ額は足りないと言われる関係者も居られるだろう。
しかし今回の報酬改定率は、本体部分では2021年度の0.7%を下回る0.61%でしかないわけである。そのため他のサービス種別では、基本サービス費が引き下げられたり、引き上げ額が一桁単位で終わっている事業も少なくない。
それを考えると今回の特養の単位増はそれなりの成果といってよく、全国老施協がよく頑張ったと評価されても良いのではないだろうか。
一方で老健の改定状況をみると、区分によって大きな差があることがわかる。
今回の改定では、老健の在宅復帰・在宅療養支援機能をさらに評価するため、在宅復帰率の高い区分へ高い報酬が支払われるという傾斜配分の強化が予測されていた。その為、基本型とその他については、かなり厳しい改定報酬になるのではないかと思われていたが、結果は予測通りとなった。
その他型は、その数自体がかなり少ないが、基本型は全国に数多く存在しており、その影響はかなり大きなものになると思われる。
実際に改定された単価について、従来型個室と多床室の単位数で比べてみると、基本型老健は、従来型個室が3〜9単位増、ユニット型個室が6〜12単位増となった。これは特養よりかなり低い増加単位である。
一方で在宅強化型老健は、従来型個室が32〜39単位増、ユニット型個室が35〜42単位増となっており、特養以上に優遇されたと言えるかもしれないが、それは基本型とその他型にかける財源を削り取って得た額とも言えなくもない。
このように諸物価高騰・運営経費の増加という状況下で、基本型はかなり厳しい対応が迫られる。特に要介護1と2の利用者が多い基本型老健は、プラス単位が最低レベルなので、より厳しい経営状況に陥いざるを得ない。
その為、単年度赤字に陥る施設も少なくないだろう。
また介護職員以外の昇給財源を確保できず、介護職員等処遇改善加算を、介護職員以外の昇給財源に回すという施設も増えるかもしれない。しかしその場合は、介護職員の給与改善額が減ることになるので、介護職員が他施設へ転職するケースも増えるかもしれない。
どちらにしても基本型老健は大ピンチである。しかも傾斜配分は、今後の報酬改定でもさらに差が広げられていくことは間違いなく、基本型老健の経営状況を改善させる方策は見えてこない。
ということは基本型老健は、在宅復帰率とベッド回転率を引き上げる努力を行い、在宅強化型老健へと転換を図っていくしかないように思える。
老健の経営は、基本型の区分にとどまったまま続けられるという幻想を持つべきではないのである。




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