今年は元日に能登半島地震という大災害で幕を開けた感があるが、その地震が発生する前に、北海道では介護事業所内でまたぞろ虐待死事件が起きていた・・・。事件概要は以下の通り。
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今月1日早朝、札幌市南区澄川のサービス付き高齢者施設「リーフィール澄川ヒルズ」で、94歳の入所者の女性に暴行を加えけがをさせたとして、介護職員・藤井孝輔容疑者(29歳)が14日逮捕された。

藤井容疑者は、今月1日午前5時ごろ、勤務する札幌市南区入所者の94歳の女性に対し、額を殴るなどの暴行を加え、けがをさせた疑いが持たれている。

女性は8日に施設で心肺停止となり、その後、運ばれた病院で死亡が確認されたが、司法解剖で外傷性ショックが死因とわかり、藤井容疑者の暴行が判明したという。

警察は傷害致死容疑を視野に調べを進めているそうだが、取り調べに対し藤井容疑者は、女性を殴ってけがをさせたことを認めているという。
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介護事業者で従業員が利用者に暴力をふるって死に至らしめた事件は、昨年も複数起こっている。

仮に死に至らしめることがなかったとしても、介護事業者内で利用者に対して暴力をふるうという行為は決して隠すことはできないし、その行為によって自分の人生を狂わせかねないことは誰しも理解できるはずだ。

それなのになぜこのような事件が続くのだろう。己の一時的な感情に任せて、後先を考えずに突発的な行為に及ぶなんてことは、まともな大人として成熟していないとしかいようがない。

だからといって、こうした行為をなくすために、アンガーマネジメントみたいな技法に走ってもしょうがない。

そんなことよりもまず、対人援助という仕事が人間尊重の価値前提に基づいて提供されるサービスであるという根本を理解できるような教育と共に、同時に私たちが向かい合う利用者は、れっきとしたお客様であるという意識を強く植え付け、タメ口対応が親しみやすさの表現であるなんて言う誤解を与えない教育が大事になるのである。

虐待は悪だ・・・虐待はしてはならない・・・そんなことは云われなくとも、誰しもがわかっていることだ。そうであるにもかかわらず、自分が虐待当事者だということが明白にされるような状況で、なぜ虐待行為に及ぶのかという根本を考えなければならない。

対人援助の価値前提や、顧客に対するサービスマナー教育を行っても、その考え方についてこれない人間や、理解しようとしない人間は、対人援助サービスに関わらせてはならない人なのである。

犯行の舞台となったリーフィール澄川ヒルズの公式サイトにアクセスすると、「その人らしい、暮らしを支える」なんていうくだらない理念が掲げられている・・・こんな昭和の遺物のような理念を掲げているから駄目なのだ。

そもそもその人らしさって何だ?意味不明瞭で、これでは理念が達せられているか測定不能で、達せられる方向に向かっているのかさえも不明確になるではないか・・・もっと顧客対応にふさわしい理念づくりをしないと事件は繰り返される。(参照:家庭的・アットホームという理念は昭和の遺物

このような事件が立て続けに起こると、介護事業に対する社会全体の信頼と信用が大いに揺らいでいく。その結果、国費をかけてまで残さねばならない事業なのかという論調に振れるとしたら、それは由々しき状況といえる。

介護報酬が思うほど上がらない理由にもされる。

そんなことがないように、介護事業関係者すべてが自浄作用を発揮すべく、自らの所属する事業者における意識改革への取り組みを進める必要があるのではないだろうか。






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