18日の介護給付費分科会でまとめられた、「令和6年度介護報酬改定に関する審議報告(案)」の総論では、「生産年齢人口の減少が顕著となり、介護を含む各分野における人材不足が更に大きな課題となることが見込まれる」とし、「介護人材の確保と介護事業所の健全な経営環境を確保することが重要な課題である。これに相まってDX等の事業環境の変化が生じ、生産性の向上も課題となっている。」と課題と対策が明記された。
このように社会全体で労働力不足が深刻化する中、介護人材についても必要数を充足できないことは確実になっており、介護DXを進めてより少ない人数でサービス現場を回す方法論が求められている。
その為、2024年度の報酬改定に向けて、ICTや助手活用を図り人員配置基準を緩和できないかという議論が行われ、三重県津市の老健施設では、利用者対看護・介護職員の配置を、現行の3:1〜4:1まで削るためのモデル事業を行っていた。
その事業はうまく行き、配置基準緩和も不可能ではないとする結論が示されたと言われているが、そんな配置であっては、有給休暇が満足に取れず、職員が疲弊しバーンアウトしてしまうことについて警告する意味で、「看護・介護職員配置基準緩和の危うさ」・「介護助手議論がなぜ馬鹿馬鹿しいか」という二つの記事を書いている。
幸いにも今回の報酬改定・基準改正では、3:1の施設配置基準をいきなり4:1に変えるような乱暴な基準改悪は行われなかった。
ではいったいどのような形で配置基準緩和が行われたのだろう。
報告書の41頁に、「生産性の向上等を通じた働きやすい職場環境づくり 」が記されているが、そこでは見守り機器等のテクノロジーの複数活用及び職員間の適切な役割分担の取組等により、介護サービスの質の確保及び職員の負担軽減が行われていると認められる特定施設については、看護・介護職員の配置基準が要介護者に対して3:1(要支援者に対しては10:1)であった基準を、要介護者に対して3:0.9(要支援者に対しては10:0.9)に緩和している。
0.1の緩和効果がどれほどのものになるか、それをどのように活用するのかについては、特定施設がそれぞれ創意工夫する問題であろう。
また2021年度基準改正で、特養の夜間配置が見守り機器とインカムの活用を条件に緩和されたが、今回はこれと同様の緩和が短期入所療養介護と介護老人保健施設にも適用されることになる。(参照:特養で夜勤する人がいなくなるかもしれない緩和策)
また生産性の向上に向けては、短期入所系・多機能系・居住系・施設系サービスについて、「生産性向上委員会」の設置が義務付けられた。(※3年間の経過措置期間を設けている)
さらに上記のサービスについては、業務改善の取組による効果を示すデータの提供を行うこと等の要件を定めた新加算が創設されることになる。
新しくなる介護職員等処遇改善加算の全区分に求められる職場環境等要件でも、生産性向上に向けた複数の取り組みが要件とされていることを考えても、今回の報酬改定・基準改正の注目点は、介護DXの実現による生産性向上に向けて大きく舵を切っているという点である。
この流れに乗っていかないと、介護事業者は生き残ることができないと考えて、事業戦略としてそれらの取り組みを早急に行っていく必要があろうと思う。
この部分で方向性を読み違えてはならない。
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