介護保険制度見直しで積み残された課題の取り扱いも先が見えてきた・・・まずは積み残した3課題について、どうなったか確認してみよう。
1点目は利用者負担割合2割負担者の拡大である。5日の「経済財政諮問会議」で、政府は少子化対策の財源確保へ工程案を示しているが、その中で「介護保険サービス利用時の自己負担率2割負担者を現行20%から25%まで増やす案」について来年度からの実施を求めている。
このことについては与党内で現在調整中であるが、来年度からの実施がかなり可能性が高くなったといえよう・・・結論は今月中に示される予定であるが、これが実現するとプラス改定の財源にもなるので、改定率に大きく影響する問題として注視する必要がある。逆に言えば、これが見送られるとプラス改定は、処遇改善加算の上乗せだけでお茶を濁される可能性もないわけではなくなるのだ。
2点目は1号保険料負担問題だ。1号保険料は制度創設時の2.911円〜6.014円(第8期)と増加しており、将来的に9.000円に達する見込みとなっており、低所得者が負担に耐え切れなくなる懸念が生じている。このことを防ぐために、「年間の合計所得が410万円以上などおよそ140万人の保険料を引き上げそれを財源として低所得者は引き下げる」ことについては、11/6の介護給付費分科会で来年度からの適用が大筋合意されている。これは実施が確実である。
3点目は介護老人保健施設と介護医療院の多床室室料負担についてである。(※特養は2015年度〜自己負担化されている)これについて12/4の介護給付費分科会で対応策が示され、療養型老健及びその他老健の2種類の老健及び介護医療院は室料自己負担化が実現されることとなった。
次にいよいよ佳境に入った介護給付費分科会での議論(※というより、国の一方的な提案でしかないが・・・)であるが、新しい介護報酬の全容が徐々に明らかになりつつある。
その中で注目したい点は、「生産性向上委員会設置の義務付け」である。
短期入所系・多機能系・居住系・施設系サービスについて、介護現場の生産性向上の取組を推進する観点から、利用者の安全並びに介護サービスの質の確保及び職員の負担軽減に資する方策を検討するための委員会の設置を義務付けているのである。(※3年の経過措置期間を設ける。)
これは、社会全体の労働力不足という状況を鑑み、介護人材が今後も充足する見込みはないと考えられるところから、介護サービスの場で生産性向上の取り組みを前進・深化させて、今より少ない人手でより多くの結果を出すことを求めているという意味である。しかもその方策を介護事業者自身が検討して導き出す必要があるとして、新たな責務を定めているということになる。
自分たちで新しい働き方を考えて、介護DXを図りなさいと言っているようなものだが、このことは統合・一本化される、「介護職員等処遇改善加算」の全区分の算定要件にも表れている。
新要件は、「介護ソフトやスマートデバイス、インカムの活用、介護ロボットの導入、介護助手の配置、5S活動の実践、記録・報告の工夫、事務部門の集約などのうち、複数に取り組むことを必須とする」(※小規模事業者向けの例外措置も導入される。)というものだから、必然的に介護事業者はICT活用などを図り、新しい働き方を模索していかねばならない。
そういう意味で、今回の介護報酬改定・基準改正は、介護DX元年といえるものになるのだろうと考える。
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