介護サービスの利用者は単なるユーザーではなくお客様である。
この極めて当たり前の意識が介護事業従事者に浸透しないのは何故だろう。
介護関係者の中には、介護サービス利用者を顧客というのは違うのではないかと口に出して云う人も居る・・・利用者が顧客でないと云うなら、ボランティアで介護を行い、家族同様にケアを行う対価を求めるなといいたい。
介護サービス利用者が間違いなく顧客であるという意識を持てない人は、そもそも顧客という意味を分かっていない知識のない人間でしかない・・・その知性も疑われても仕方がない。
顧客とは一般的に、「自社の商品やサービスを購入してくれている、または購入したいと考えている人」のことを指すものであり、介護サービスは一般的な商品とは異なり目に見えない形のサービスではあるが、そうした目に見えない介護サービスであっても、お金を支払って利用する人は間違いなく顧客そのものであり、今後自社の介護サービスを利用したいと考えている地域住民もまた顧客なのである。
そうであるからこそ介護サービスの提供主体(事業者及び従業員)は、「顧客サービス」の在り方を常に考え、そのニーズに合わせていく必要がある。
そこで必要となることが、介護サービス利用者の方々に対するサービスマナー意識であり、サービス提供者は、顧客である利用者に対して礼儀をもって接する必要があることを30年近く前から訴えてきた。

僕が唱える、「介護サービスの割れ窓理論」は、その理解を促すために僕が提唱している理論である。(※文字リンク先は安全な場所なので、警告文字が出ても安心してつなげて問題ありません)
全国各地で行ってきた、「介護事業におけるサービスマナー講演」でもそのことは詳しく説明してきた。そのことを多くの関係者に理解してほしい。
このことをおざなりにしている事業者において、利用者対応が適切に行われない先には、事業経営を危うくする問題が起こるだけではなく、対応を誤った従業員自身の人生終了という事態にもつながりかねない。
そのような問題が続々と明るみにされている。今月はまだ8日しか経っていないのに、介護事業者における利用者への暴行致死事件で、従業員が逮捕されたという事件報道が相次いだ。下記に2件の暴行逮捕事件の概要をまとめているので参照してほしい。
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(事件1)
大阪府警は5日、大阪府泉大津市の特別養護老人ホーム「オズだいすき倶楽部」(泉大津市池浦町3)で入居者の高齢男性を暴行して死なせたとして、元職員白井宏次朗容疑者(31)=大阪府吹田市=を傷害致死の疑いで逮捕した。白井容疑者から暴行を受けたと訴える入居者が他にもおり、府警が捜査している。
逮捕容疑は2020年12月20日夜〜21日早朝に起きた。容疑者は入居していた福田功さん(死亡時90歳)の胸を何らかの方法で圧迫。胸骨や肋骨(ろっこつ)計9本を折り、翌21年3月に呼吸器不全で死亡させたとしている。
(事件2)
奈良市の住宅型有料老人ホーム、「かさね奈良六条」の職員・西山弘樹容疑者(33)が、11月19日夜から翌日の午前にかけて施設内の部屋で入所する90代の女性に暴行を加え顔にけがをさせた疑いが持たれ逮捕された。防犯カメラには西山容疑者が被害者の女性(90代)の部屋に入った後、女性が「痛い、痛い」と叫んでいる音声が残っていた。西山容疑者は警察の調べに「夜中に何度も呼び出されて腹が立った。」と供述している。
この施設では別の入所者の高齢女性にも不審なケガが確認されている。
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上記のように2件の加害者共に、他の利用者への暴行が疑われている。
利用者が顧客であるという意識を持っていたら、ものを頼まれるのは当たり前だと思うはずで、「夜中に何度も呼び出されて腹が立った。」などということにはならないはずだ。
利用者に対して、自分が施しを行う上から目線しか持てないから、このような事件が相次ぐ。しかも本件のみではなく、他に複数の利用者に被害を及ぼさせていたということは、常習的犯行が当該施設内で日常的に行われていたということだ。
当然、経営法人や経営者・管理職の責任も問われてくるだろうし、地域の信頼を失い利用者確保に苦労することになって、場合によっては事業経営に多大な影響が出るかもしれない。
加害者は罪を償った後も、卑劣な犯行を行った者として、周囲から蔑視されて生きなければならなくなるかもしれない。
利用者=顧客であるという意識をもって、適切なマナーを護ったサービス提供をお行うという教育を怠った先には、このような末路が待っているのである。
それは対岸の火事ではなく、自らの問題であるという当事者意識を持つ必要がある。
利用者に対するタメ口対応が日常化している介護事業者は、そのことで明日事件を引き起こすかもしれないと覚悟するべきである。




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