介護保険施設や居住系施設は、何らかの理由で自宅での暮らしが不自由となった方が、住み替えの場所として選択する新たな居所である。

しかしそのような住み替えは、決して軽い気持ちでできるものではない。

人生の晩年期を迎えた人が住み慣れた自宅を離れ、住み替えようとするには相当の覚悟と決意が必要だろうと想像できるのである。

住み替えようと決意する人には、それだけ切羽詰まった事情があると同時に、住み替えによってそれまでより良い暮らしを手にすることができると期待しているのではないだろうか。

だからこそ住み替え場所として選択される場所で働く関係者は、その期待に沿うことができるスキルを備えてサービスを提供しなければならない。それがプロとして他者に関わる者の矜持(きょうじ)ではないかと思う。

そうしたプロの矜持をもって仕事に従事することが、私たちの社会的使命といえるし、その使命を果たすことが自分の職業に誇りを持つことができることに繋がるのではないだろうか。
水の光
私たち人間は、人生を過ごす大部分の時間を仕事をする時間に費やすのだから、自分の就く職業に対しそうした使命と誇りを抱くことができることこそ、人生を豊かにすることではないかと思う。

だからこそ自分が働く職場が、どのような理念を掲げているのかは重要なことである。

理念とは、「このようにあるべき」という根本となる考えを意味するものであり、介護事業者の理念は、何のために介護事業者が存在しているのかという根本を司るものである。

その理念が、「家庭的〜」とか「アットホーム」であるとしたら情けないと思う。それは素人の発想であり、昭和の遺物でしかない古く拙(つたな)い考え方といってよい。

介護施設は、家族のように遠慮ない関係で馴れ馴れしく接してサービス提供する場所ではないのである。そこでは介護支援のプロとして、適切な知識と確かな技術をもって利用者に向かい合うことが求められているのだから、それにふさわしいパフォーマンスにつながる理念を掲げてほしい。

そうした理念を達成する方法論を持つことで、介護保険施設や居住系施設は利用者にとって、どこよりも安全で安心した暮らしの場となるのである。

家庭的とか、アットホームなんてくだらない理念を掲げているから、理念は形骸化するし、家庭的という言葉に胡坐をかいて、無礼で馴れ馴れしい利用者対応が横行するのだ。

そしてその先には、利用者の人権を無視した不適切対応〜虐待に繋がっていくのである。その結果、利用者への暴力行為で職員が逮捕というニュースが、11月だけで何件も報道されている。

さらに表の掲示板では介護施設の職員がスレ建てして、「家族が職員への差し入れ品をSNSに画像アップしているが、あまり豪華な品物だと他の家族も豪華なものを差し入れないとならないと思うのではないか」という意見が書き込まれている。

これもひどく拙い発想だ。差し入れ物品をSNSで投稿するか否かとか、品物が高価なものであるか否かではなく、誰かひとりであっても家族から差し入れ品を受け取ってしまえば、他の人も差し入れしなければならないと思うのではないかと考えるのが普通であり、差し入れ品を安易に受け取ってしまうことを疑問視する意識がなければならない。

こんな書き込みを見て、日本の介護事業とはなんと民度が低いのだろうと思う人も出てくるだろう。

対人援助のプロとして求められる理念を掲げて、その理念の達成に向かう目標を持たない限り、そうした見方に反論できなくなってしまう。

そうであってはならないのだ。なぜならそんな職業であるとしたら、有能な人材がますます介護という職業を見放して、人材不足に拍車をかけかねないからである。

そうならないようにするためには、対人援助とは「人権」を護ることを何よりも重要であると考えるべき場であることを忘れないように、そのことを実現できる、形骸化しない理念を掲げてほしいと思う。

例えば、「対人援助のプロとしての知識と技術を備えた支援者により、お客様一人一人に安心で豊かな暮らしを提供します」といった理念はどうだろう・・・どちらにしても対人援助のプロとしての矜持を持つことができる理念づくりをしていかないと、理念という名のお飾りができて終わりということになりかねないのではないだろうか。






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