11月27日の介護給付費分科会では、LIFE科学的介護情報システム)についての論点と対応策が示された。

ここではLIFEを活用したPDCAサイクルを一層推進するため、新たな考え方が示された。

第一に入力項目の見直しとして、複数の加算で重複している項目の選択肢を統一し重複入力を求めない等の簡素化の方向が示された・・・これは歓迎されるべき見直しだろう。

第二にデータ提出頻度の見直しとして、すべてのLIFE関連加算のデータ提出頻度について、少なくとも3か月に1回に統一するとするとともに、同一の利用者に対して複数の加算を算定する場合に、算定する加算のデータ提出のタイミングを統一できるようにするため、一定の条件の下で、初回のデータ提出に猶予期間を設けるとしている・・・これが実現されれば、科学的介護推進体制加算などはデータ提出回数が年2回から4回に増えるわけだが、入力項目の簡素化と提出タイミングの統一と併せて考えると、大きな負担増ではないだろう。むしろデータ提出時期がわかりやすくなるように思う。

第三にフィードバックの見直しとして、介護事業所におけるPDCAサイクル推進に向けてフィードバックを充実させる観点から、事業所フィードバックにおいては自事業所と平均要介護度が同じ事業所との比較や、利用者別フィードバックにおいては同じ要介護度の方との比較、全国集計値だけでなく地域別等のより詳細な層別化、複数の項目をクロス集計すること等の見直しを行うとしている・・・しかし果たしてこれは、フィードバックの改善といえるのだろうか。

要するに今後の利用者別フィードバックは、現在の全国集計値とデータ提出事業所の数値比較でしかない内容を継続するという意味だ。それをより細かく比較するとして、果たしてそこからどんなエビデンスが生まれるというのだろう。

下記の図は、LIFEのフィードバックの将来像として2020年12月18日の介護給付費分科会資料で示された図である。(※最下部の吹き出しのみ、僕が講演資料として追加している
科学的介護の目指す将来像
このように栄養と身体機能の因果関係を導き出すようなフィードバックは不可能だという結論が27日の介護給付費分科会で示されたということになる。

ご存じのようにLIFEのシステムは東芝が組み立て、システム稼働後1年間は管理していたわけである。上記の資料も東芝がLIFEシステムを構築中に示された資料だから、そのようなフィードバックを行うことを目指してデータを解析していたものと思える。

しかしそのフィードバックが全く機能しなかったため、厚労省はLIFEの管理を東芝からNECに変えたことは衆知の事実である。そしてNECは、2年間フィードバックの改善に努めてきたが、27日資料に示された内容のフィードバックしかできないと結論づけたという意味である。

これはまさに、「LIFEのフィードバックに頼るなと言い始めた関係者」で示したように、介護事業者に意味のないデータ集計を放り投げて、「あとは勝手に介護の場でエビデンスを導き出してくれ」と、事業者に丸投げしたことに他ならない。

まったく無責任でいい加減な態度としか言えない。

こんな形で生まれる科学的介護とは、原因と結果の因果関係を導き出すものではなく、単に声の高い事業者内でだけ通用する我流の介護の方法論にしか過ぎなくなるのではないか。

LIFE(科学的介護情報システム)の構築と運営に、どれほどの巨額の国費がかけられているかわからないが、あまりにも無駄で意味のないシステムに、無駄金を垂れ流しているとしか思えない。

この国の役人は、本当に能天気である。






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