居宅介護支援事業における逓減制とは、ケアマネジャー1人あたりの担当件数が一定数を超えると基本報酬を引き下げる仕組みである。

2021年度の介護報酬改定では、逓減される件数が40件目からとしていた従前の適用ルールを、ICTの活用や事務職員の配置などを要件として45件目からに緩和している。

さらに24年の報酬改定では、国のケアプランデータ連携システムの活用などを新たに要件として加えたうえで、この要件をさらに5件上乗せして、50件目から逓減とするように変更する案が示されている。(参照:居宅介護支援の逓減制の再緩和という鞭

逓減性を緩和する理由とは、より多く(5名)の利用者を担当するという前提で、その分収益アップを図れるのだから、それをケアマネの給与に反映させようという考え方だと理解されている。つまり処遇改善加算等の恩恵が受けられない居宅介護支援事業所の介護支援専門員の給与改善策として理解されているということだ。

現に主任ケアマネの有資格者の一人は、JOINTというニュースサイトで、「1人あたりの担当件数を適切に49件まで増やすことができれば、事業所の収入は増加します。ケアマネジャーの給与も上がるでしょう。これが、厚労省が想定しているケアマネジャーの処遇改善策の柱です。」などと評論している。

しかしその考えは間違っていると指摘する声がある。

そのようなことをすれば運営基準違反に問われるので、実際には逓減性緩和で収益アップを図ることは不可能であり、その収益を介護支援専門員の給与に暗影されることもできないことが、僕が管理する表の掲示板のスレッドで情報提供されている。
意味のない逓減性緩和
リンク先を貼り付けたスレッドの No.21〜 No.23を参照願いたいが、問題は逓減性緩和を行っているのに、それの関連する基準改正が行われていないという問題である。

指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(平成十一年厚生省令第三十八号)の第二条2項は、「前項に規定する員数の基準は、利用者の数が三十五又はその端数を増すごとに一とする。」と定めている。

「前項に規定する員数」とは、「指定居宅介護支援の提供に当たる介護支援専門員」を指しているので、逓減性緩和を利用して担当者数を35件より多く増やしてしまうと、「その端数を増すごとに一とする」という規定で言えば、その分だけ常勤加算で介護支援専門員の人数を増やさねばならないのである。

そうしないためには、逓減性緩和を利用して担当者数を増やした介護支援専門員がいるとしたら、同じ居宅介護支援事業所の他の介護支援専門員の担当人数をその分だけ減らさねばならないということになる。

そして一人しか介護支援専門員が配置されていない居宅介護支援事業所は、介護支援専門員の配置を増やさない限り、逓減性緩和は利用できないということにもなる。

そうすると居宅介護支援事業所自体の収益は、逓減性緩和を利用しようと・利用しまいと変わらないことになり、介護支援専門員の給与改善原資は生まれないということになってしまう。

現に文字リンクを貼った掲示板スレッドの No.27では、保険者の集団指導において、「標準担当件数はあくまでも35件である」と指導されており、逓減性緩和で収益が増えるものではないと指導されていることが情報提供されている。

基準省令の第二条2項規定に変更がない限り、この集団指導内容は正当な考え方と思え、昨年9月サービス提供分で逓減性を利用している事業所が全体の8%程度しかないという低調な理由も、案外このあたりにあるのではないかと考えることもできる。

国は基準省令・第二条2項規定と逓減性緩和の矛盾に気が付いていないのだろうか。

次の改正で逓減性を再緩和するのならば、基準省令・第二条2項規定は、「前項に規定する員数の基準は、利用者の数が五十又はその端数を増すごとに一とする。」と変更する必要があると思う。

その実現をぜひ図っていただきたい。






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