人材不足が深刻化し、その解決策が見えないことから介護DXの推進による生産性の向上が求められる介護事業では、スケールメリットを働かせて業務効率をよくするという意味で、サービス規模の拡大が必要になる。
その為、通所サービスは大規模区分の減算幅を縮小するというところから始めて、近い将来は規模が大きな通所サービス事業の方が報酬も高く設定されるように変わっていくだろうということは先週論じた通りだ。(参照:小規模区分から大規模区分への人材流出が促される通所サービス)
しかし2022/12/20の、「介護保険制度の見直しに関する意見」(社会保障審議会・介護保険部会)の中に、要介護1と2の通所介護の総合事業化について、「第 10 期計画期間の開始までの間に、結論を出すことが適当である」と書かれている意味は、2027年制度改正までに地域支援事業化は結論を先送りするという意味だが、それは同時に、2007年度の制度改正時には、必ず要介護1と2の対象者の通所介護は地域支援事業化するという手形を切ったという意味であろう。
つまり通所介護に限って言えば、大規模化を目標にしてそれを実現できたとしても、2007年以降は利用者対象者そのものが大幅に減るため、その規模を維持できないのではないかという懸念がぬぐえない。
そこで期待を寄せたのが、2004年度から新設される複合型サービス(訪問介護と通所介護の組合せ)であった。
このサービスが既存の通所介護の中で、同時一体的に指定を受けて実施できるとすれば、設備や職員を新たに増やすことなく実施できて、通所介護の生き残り策につながると考えていた通所介護経営者も多い。
ところが複合型サービス(訪問介護と通所介護の組合せ)の人員配置基準と設備基準を確認してがっかりした事業経営者が多いことは、「こんな形の複合型サービスは浸透・普及しない」で指摘したところだ。
その人員・設備基準は下記のように示されている。
複合型サービスは地域密着型サービスに位置づけられ、登録定員が29名上限とされてるが、同時に通所介護の利用定員は、「19名以上とする」とされている。
この基準は、29名の登録者の65%以上が通所サービスを利用できるようにしなければならないという意味だろうが、これが既存の通所サービスと一体的にできるようになれば、複合型サービスの普及はかなり進むと思える。
例えば定員60名の通所介護が、その中で29名を複合型サービスの定員とし、通所介護と複合型サービスの職員配置も一体的に行うことができるなら、複合型サービスの指定を受けて、将来通所介護の利用者減の代替サービスとするという考えも生まれるからだ。
しかし職員配置や設備基準を読むと、そのようなことは不可能であると読める。職員配置や設備使用を一体的に行うことができるのは、複合型サービスの中の、訪問介護と通所介護に限っていると読めるからだ。
そうであれば既存の通所介護事業所が、複合型サービスを立ち上げようとすれば、事業所も建て増しして設備を新たに備え、職員も通所介護とは別に雇用する必要があるということになる・・・人材不足が叫ばれる今日、そこまでして複合型サービスの指定を受けようとする経営者はどれだけいるのだろう。
訪問介護員の確保も難しいことから、この複合型サービスに手を挙げようと考えていた多くの介護事業経営者が、配置・整備基準を目にして、その手を下ろしたことだろう。
さすればこの複合型サービスは、人員確保が比較的容易で、かつ多様なサービス利用ニーズが見込まれる都市部の一部で、大規模な法人が新たな顧客確保戦略として立ち上げるという形でしか増えていかないように思う。
地方では決して根付かないサービスだろうと思うし、そもそも地方では創設されないサービスに終わってしまうのではないだろうか。
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