先々週から今週にかけて、居宅介護支援事業所の介護支援専門員(以下、居宅ケアマネと略する)の方々から憤りの声が多数聴こえてきている。
居宅ケアマネはいなくなって良いのか・・・あるいはもう居宅ケアマネは続けられないという悲痛な訴えがそこには含まれている。
ここにきてどうしてそんな声が沸き上がっているのか。その理由は人材確保が難しくなっている居宅ケアマネも待遇改善が必要だとされているのも関わらず、国の処遇改善策の蚊帳の外に置かれる状態がさらに顕著になっているからである。
例えば、経済対策として介護職員らの給与を月6千円アップする具体策は、来年2月から現行の介護職員等ベースアップ等支援加算(以下、ベースアップ加算と略)に上乗せされて支給されることが決まった。
その為、現行の同加算の算定要件と配分ルールを引き継ぐことになるので、事業者の裁量で介護職員以外にも配分可能となり、施設ケアマネなどの給与も2月支給分から改善が可能となる。
ただし介護職員以外に配分する分は、介護職員に配分予定の部分から回されることになり、介護職員に対しては月のアップ分が6千円より少ない支給となる。これに対して話が違うと言って非難の声を挙げる介護職員も少なくないだろう。
しかしそれにも増して可哀そうな境遇に置かれるのが居宅ケアマネである。ベースアップ加算の支給対象ではない居宅介護支援事業所等はその恩恵が一切ないからである。
前述したように、施設ケアマネは来年2月支給分の給与から、ベースアップ加算の上乗せ分で、給与月額が挙げられる可能性があるのに対し、居宅ケアマネにはそうした恩恵が一切ないのだ。そうなると同じ法人内で、施設ケアマネと居宅ケアマネの間で給与格差が生まれかねない。
そうなったとき、居宅ケアマネを続ける動機付けは存在し続けるだろうか・・・。
さらに来年度の介護報酬改定で統合・一本化される(現行では3種類の)処遇改善加算について、経済対策による6.000円アップ分からの更なる上積みも検討されるとされているものの、算定対象事業の拡大はされないために、居宅介護支援事業所にその運慶は一切ない。
このような状況に居宅ケアマネの方々は、憤っているというより、あきらめてしまって、既に退職を決められた方、退職届を出した方さえいる。(参照:怒りの声であふれている表の掲示板のスレッド)
このような状況が生じていることを鑑みると、居宅ケアマネは減る一方で増えることはなく、居宅介護支援事業所の人材確保は益々難しくなるのではないか。逓減性の更なる緩和で、居宅ケアマネの担当者数を増やしたとしても、それに追いつかないほどの、居宅ケアマネの大量脱退が字始まるかもしれないのである。
そうなれば今後ケアマネジメント難民が生じるのではないかという懸念がぬぐえない。いやケアマネジメント難民は既に発生していて、特に介護予防支援は地域包括支援センターでさばききれずに、居宅介護支援センターに委託しようとしても、受託してくれるところが見つからずに、予防プラン作成が大幅に遅れているという状態も見られる。
そうであれば、5月に法案が成立した介護保険制度改正関連法の中で、「介護予防支援について、地域包括支援センターに加えて、居宅介護支援事業所も市町村からの指定を受けて実施できることとする」とされているが、この指定を受ける居宅介護支援事業所も少なくなると予測できる。
その結果、地域包括支援センターの予防プラン作成業務はほとんど減らないという結果に終わりかねない。地域包括支援センターの予防プラン作成以外の機能を強化しようとする目的は、それによって達成不能となるのである。
そんなことにならないようにする唯一の手段は、処遇改善の蚊帳の外に居宅ケアマネが置かれているという状況を変えることである。
国はこのことを理解しているのだろうか・・・居宅ケアマネに確実に行き渡る処遇改善の具体策を示さないと、介護支援専門員になろうとする動機づけも奪われ、この国の福祉の底辺を引き上げてきた大事な職種が消滅しかねないという危機感を抱いてほしいと思う。
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