僕が社福法人の理事と総合施設長を務めていた頃、地域の社会資源として訪問リハビリがなかった時期がある。
その為、社福の母体である医療法人が経営する訪問看護ステーションからリハビリ専門職(以下:リハ職と略)の派遣を行って、実質訪問リハビリ資源を創ろうとしたことがあった。
幸い医療機関のリハ部門には、PT・OT・ST等のリハ職が複数のがいて、地域への訪問リハビリに興味をもってくれたので、話はトントン拍子に進んで、訪問看護サービスとしてリハ職を派遣し、利用者の自宅でのリハビリテーションが実現できた。
そのことは地域の方々に大変喜ばれたという記憶がある。
ところが今、診療報酬改定と介護報酬改定の両方の議論で、リハ職による訪問看護の提供に対して、「訪問看護の本来の役割に沿ったサービスではない」という議論が展開され、「評価の差別化」(※要するにリハ職の訪問看護の算定単位を低くしたり、看護師の訪問回数の一定割合に制限すること:筆者注)が提案されている。
そうであれば同時に、訪問リハビリテーションがもっと地域展開できるようにルール改正すべきである。
訪問看護の指定事業所に比べて、訪問リハビリの指定事業所数が延びない理由は、リハ職の独立開業を阻むバリアが存在するからだ。それを撤廃して、リハ職が独立開業できれば、訪問リハビリが増えて、訪問看護からのリハ職派遣は必要無くなるのではないかと思う。

ところで訪問看護に限らず、訪問サービスには厄介な問題が存在する。それは利用者宅という密室で、異性介助が行われることに対する抵抗感である。
例えば、前述したように僕が関わって実現した訪問看護ステーションからのセラピスト派遣も、男性のセラピストしかいなかったという点で、利用拒否されるという問題が生じた。
自宅でのリハビリニーズがある要介護高齢者であっても、女性でひとり暮らし方は、男性のサービス提供者は受け入れてくれない人が多いのである。
女性が密室化する自宅で、専門職とは言え、男性に身体に触れられてリハを受けることに懸念があることついて当時の僕は、「サービス利用者である要介護高齢者に対し、サービス提供者が卑猥な行為に及ぶようなことはあり得ないだろう」と考えており、「心配し過ぎではないか」とも感じていた。
しかしそれは高をくくった安易な考え方であると気づかされた。下記のような事件が実際に起きているからである。
11/9、静岡県御殿場市の訪問介護員の男(53)が80歳代の訪問介護利用者の女性に、わいせつな行為をした疑いで準強制わいせつの疑いで逮捕された。女性は1人暮らしで、女性の息子が日常生活の見守りカメラを確認したところ、男の行為がおかしいと警察に相談したことで事件が発覚したとのことで、男は容疑を認めているという。
「準強制わいせつ」とは、被害者が心神喪失または抗拒不能に乗じてわいせつな行為に及ぶ行為であるから、被害者の女性は認知症だった可能性が高い。そのような方に対して、1対1で身体介護を行うヘルパーは、誰よりも信頼できる人間でなければならないのに、わいせつな行為に及ぶとは卑劣極まりない。人でなしの行為である。
被害に遭われた80代の女性利用者の方は、本当にお気の毒だ。それまでどんなに幸せな人生を歩んできたとしても、最も安心して自らの身体を委ねることができるはずであった介護サービス提供者に、わいせつな行為で穢されたことによって、幸せな人生が不幸で哀しい人生に変わってしまったかもしれない・・・それほど汚らわしい犯罪である。
このような野獣がヘルパーという衣をかぶって、ひとり暮らしの利用者宅という密室の中で犯罪に及べば、利用者は逃げ場がない。全く救いようがない胸糞が悪くなる事件である。
本件の容疑者のような人間が従業員に交じっていたら・・・と考えると背筋が寒くなる。こういう手合いは、教育して良くなるものではないだろう。できるだけ実務に就かせる前に、その性癖に気づいて排除する以外ないと思う。
こうした人物は、改心したふりをしても同じことを繰り返す手合いと思え、訪問サービスに従事させてはならないのである。しかしその性癖を見抜くことは至難の業でもある・・・。
そういう意味では、訪問サービスで女性利用者に対応する場合は、できる限り同性派遣を心掛けることがだいじかもしれない。
特にサービス提供者と女性利用者しかいない場面での訪問サービスは、同性介護を行うことが最重要と考えることが、リスクマネジメントにつながるのではないだろうか。




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