先週金曜日に正式に閣議決定された介護職員らの月6千円の賃上げについては、来年2月からベースアップ加算に上乗せして支給されることとされた。

そのため現行の要件を踏襲し、交付額の3分の2以上をベースアップに充てるよう求めるほか、他職種への柔軟な配分も認めていくとされている。

しかし居宅介護支援事業所はその支給対象に含まれないので、居宅ケアマネには一切配分されないことも確定した。

また来年度の介護報酬改定で統合・一本化される処遇改善加算については、「介護職員への配分を基本とし、特に経験・技能のある職員に重点的に配分することとするが、事業所内で柔軟な配分を認める」とされているために、施設ケアマネについては従前の特定加算の配分より額が増える可能性もある。

しかしこの加算の算定事業の拡大は見送られることから、居宅ケアマネにはその恩恵は一切ないことになる。

その為、「居宅介護支援の逓減制の再緩和という鞭」で指摘したように、逓減性の再緩和で収入を増やした分しか居宅ケアマネの待遇改善は難しいという状態になる可能性が高い。

本当にそれでよいのだろうか・・・これでは居宅ケアマネの成り手がなくなりかねない。それとも今後、居宅介護支援事業所の介護支援専門員の待遇改善策が別に示されるだろうか?だが僕の知る限り、そんな議論は水面下でも行われていないように思う。
紅葉
ところでそれほど厳しい居宅介護支援事業であるが、来年度の報酬・基準改定は大改定ともいえるのではないだろうか。

逓減性の再緩和のほかにも、いくつかの大きな変更が示されているので検証してみよう。

まずは毎月のモニタリングルールの変更である。月1回の利用者宅でのモニタリングについて、テレビ電話(ビデオ通話)などを活用した実施も認めることが提案されている。この場合、少なくとも2ヵ月に1回は利用者宅を訪問すること、他のサービス事業所と連携することなどを要件とすることも同時に提案されている。

これは言うまでもなく、逓減性の再緩和とリンクした改定である。モニタリングの訪問回数が現行より少なくて済むという業務軽減を行って、それによって担当利用者を5名増やすことができるようにすることで、逓減性の再緩和ルールを使いやすくしようというものだ。

それで本当に業務負担が軽減されて、逓減性の再緩和の恩恵を受けようとするケアマネが増えるかどうかはともかく、高齢者もスマホやタブレットを使い込なしてる現状を鑑みれば、モニタリング訪問をオンライン確認に代えて実施できるようにすることは良いことだと思う。

訪問するケアマネと訪問される利用者双方に、負担軽減というメリットがあるし、モニタリング訪問にそぐわない人は、従前通り訪問モニタリングすればよいだけの話で、その判断もケアマネジメント能力の一環なのだから、そこは居宅ケアマネの能力を信じれば良いのである。

それにしてもせっかく規制緩和を行おうとする際に、新たな規制を加えてどうするのかといいたい・・・2月に1回は訪問が必要という条件なんて必要ないだろう。これでは業務負担軽減の効果は著しく削がれる。自宅での状況確認がどうしても必要だとしても、その頻度は半年に1度程度でよいだろうと思う。思い切った規制緩和ができないのは、くそっ狭い役人根性そのものであるといえよう。

業務負担軽減に関連しては、過去半年に作ったケアプランの訪問介護、通所介護、福祉用具貸与の割合を利用者へ説明することなどが義務付けられているが、これを努力義務に改めるとしている。

義務努力義務はどの程度異なるかといえば、努力義務はあくまで努力でしかないのだから、やっていなくても運営指導の対象にはならず、少なくとも文書指導は行われないという意味だ。

つまり「しなくてよい」という意味で、2021年度の前回改正で新設したルールは、説明を受ける利用者からも必要ないと言われ、むしろ迷惑に思われているので、ほとんど意味がないことが明らかになったという意味だ。

しかしルールを廃止したいが、そうなるとルールを作った役人の責任問題となるために、努力義務化したというに過ぎない・・・ということで来年度以降は、この説明は遠慮なく居宅ケアマネ業務からはカットしよう。

また、「入院時情報連携加算」については、現行では入院後3日以内、または7日以内に病院などの職員へ利用者の情報を提供した事業所を評価しているが、これを入院当日、または3日以内の評価に改めるとしている。

これについては、「入院時の迅速な情報連携を更に促進する」との意味であり、そのことが早期治療・早期退院にむずびつくという理由だろう。現行でも入院・即情報提供を行っているケアマネが多いのだから、これは否定される変更ではない。ただしスピード感を求められるのだから、それに応じて加算単位も引き上げてもらわねばならない。ここは強く訴えておこう。

特定事業所加算の4段階の全区分に求めている要件の変更も提案されている、
《現行要件》
地域包括支援センターなどが実施する事例検討会などに参加していること
《見直し案 》
ヤングケアラー、障害者、生活困窮者、難病患者など、他制度にも関する事例検討会、研修などに参加していること

以上のように単に事例検討会ではなく、他制度に関する学びの内容がなければならないとされいる。

国が進める、『適切なケアマネジメント手法の策定・普及推進事業』では、介護支援専門員に対して、「仕事と介護の両立支援」や「ヤングケアラー支援」などの役割も担うことが期待され、来年度から変更されるケアマネ法定研修でもそれに沿ったカリキュラムが組まれることになる。

本加算の要件も、それの沿った形で変更されるわけだが、居宅ケアマネにそれだけの役割を求めるならば、それなりの待遇も手渡せと言いたい。

居宅ケアマネはボランティアではなく、プロの相談援助職だぞ。待遇改善の優先順位を介護職員のはるか下層に置いている状態で、役割だけ増やしてどうるのだと言いたい。この部分は居宅ケアマネの皆さんは、もっと怒った方が良い。あまりにもおとなし過ぎる・・・。

また特定事業所加算については、現行の「運営基準減算、または特定事業所集中減算の適用を受けていないこと」という要件の見直しを提案し、運営基準減算が利用者ひとりひとりに適用され毎月の確認作業の負担が大きいとして、「特定事業所集中減算の適用」のみを減算要件とするとしている・・・個人的には、医療系サービスが対象となっておらず、ケアマネジメントの中立性確保にとって意味のない特定事業所集中減算そのものを廃止すべきだと思う。

さらに居宅介護支援費にも、同一建物減算を新たに導入する案が示されている。

これは明らかにサ高住の囲い込みサービスをターゲットにした制限だろう。サ高住の入居要件に、併設居宅介護支援事業所との契約を条件にして、担当ケアマネを替えさせ、さらに訪問介護等のサービスもサ高住併設事業所で囲い込むことの批判と受け止めてよいと思う。

居宅ケアマネは、事業経営者のプレッシャーに負けないで、適性プランの立案に向けた姿勢を崩さないことが求められている。

また制度改正では、予防プランを居宅介護支援事業所が利用者との直接契約で計画できる改正が行われた。そこでは予防支援の単価が問題となるが、その額が低くて予防プラン作成はできないと判断するなら、予防支援事業の指定を受けなければよいだけの話で、居宅介護支援事業の選択肢が広がるという意味で、その改正自体を否定的に捉える必要はない。

どちらにしても現時点で決まっていることだけでも、これだけ大きな変更がある。居宅介護支援事業所の介護支援専門員は、それに向けた心構えを持っておく必要があるだろう。






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