昨日(11/10)開催された第38回社会保障審議会介護給付費分科会介護事業経営調査委員会では、令和5年度介護事業経営実態調査結果の概要(案)資料1として示された。
令和5年度介護事業経営実態調査結果
それによると2022年度(令和4年度)決算の利益率が全体平均で過去最低の2.4%に悪化していたことが明らかになった。

特に施設系サービスで厳しい結果となり、特別養護老人ホームの利益率はマイナス1.0%、介護老人保健施設は同1.1%と、01年の調査開始以降で初めてマイナスに陥った。

この結果を受けて厚労省は、光熱水費や人件費の伸びが経営に影響を及ぼしていると分析。「他産業の利益率は約6%にあがっている中で、介護分野はかなり厳しい状況にある」と見解を示している。

今年の春闘では全産業平均で3.6%の賃上げだった一方、価格転嫁できない介護事業所は1.4%にとどまったことで、介護業界から小売業などへ人材流出も起きており、介護人材不足も深刻化の一途を辿っている。

こうした状況を受けて、政府は来年度の改定で引き上げる方針を固めたと各メディアが今朝、一斉に報道している。

ただし水面下でプラス改定になることは、それ以前から事務方を中心に決定事項として作業が進んでいたことは確かである。だからこそ報酬改定の施行時期を6月まで先延ばしすることに反対する声も根強かったのである。今後は、この施行時期を巡った綱引きが水面下で行われることになる。

さて問題は改定率である。

政府は、介護職員や看護補助者への賃上げを行った医療機関などを対象に、一人あたり月額6000円の賃上げに相当する額を補助金として支給する方針を固め、来年2月から支給を開始するとしているが、この補助金も当然、統合一本化される処遇改善加算に含まれてくると思え、さらに月額改善額が1万円以上になるように改善を要求する声に応えた上乗せも期待されているが、それのみをもってプラス改定とされてはかなわない。

職員の給与行き上げ原資となる処遇改善加算も大切だが、事業経営を脅かさないためにも基本サービス費の相応の引き上げが不可欠だ。

6日の介護給付費分科会では、介護保険料・利用者負担に関する各種取りまとめという資料が示され、この中で、介護サービス利用時の自己負担割合2割の対象者を、現行の20%〜25%に引き上げる案も示され、年末までにこの案も承認される見込みになっていることから、プラス改定の財源は存在することになる。

それに加えて、インフレ下で初めて行われる報酬改定という状況を鑑みて、政治的判断による財政出動を期待しつつ、介護事業経営の安定化を図ることができるようなプラス改定を期待したいところである。

それにしても特養の収支差率はひどい状況だ。10年前は収支差率が二桁レベルで、まおかつ多額な内部留保も問題とされ、社会福祉法が改正されて、2017年からは社会福祉法人の財務規律の強化の取り組みが法律に基づいて実施されるようになり、社会福祉法人は毎会計年度において、社会福祉充実残額が生じたときは、厚生労働省令で定めるところにより、「社会福祉充実計画」を作成し、これを所轄庁に提出しその承認を受けなければならないとされた。

しかしすでにそのような大きな利益が出る状況はなく、毎年内部留保を切り崩して何とか運営を続けているという特養が多いわけである。

しかし内部留保と呼ばれる繰越金は未来永劫存在するわけではない。この状況の改善を急がないと、社会福祉法人の倒産が全国各地で引き起ることになる。

それを防ぐためには、介護報酬の大幅なプラス改定が不可欠であるが、それと共に運営しかできない社福トップ・特養トップはその地位から退いて、きちんと経営ができるトップを据えることが重要になる。

今後の社会福祉法人の生き残り策とは、そうした改革に取り組めるかどうかにかかっていると言っても過言ではないだろう。






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