介護保険施設での暴行死亡事件として、現在一審の審議が進行中で、11月27日に判決言い渡しが予定されている裁判がある。

2022年10月、福島県小野町の特別養護老人ホーム「つつじの里」で入所者の女性が死亡した事件をめぐり、当時94歳の女性に暴行を加え、死亡させたとして介護福祉士の冨澤伸一被告(42)が傷害致死の罪に問われている裁判である。

11月8日の初公判で冨澤被告は、「暴行などは行っていない」と起訴内容を否認した。

これに対して冒頭陳述で検察側は、冨澤被告が「故意に暴力をふるった」と指摘した上で、事件当時同僚に対して「警察に逮捕されるかもしれない」などと話していたと主張した。

一方、弁護側は「暴力は振るっていない。被害者が自ら転倒した可能性もある」などと無罪を主張し、双方の主張は真っ向から対立している。

判決は11月27日に言い渡されるが、被告の主張が認められて、無罪放免となる可能性は低いと予測されている。
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というのも、判決に先駆けた2023年10月19日、小野町が本件が冨澤の犯行であることを認定するとともに、他の虐待行為も存在したと認定し、特別養護老人ホーム「つつじの里」に対し、介護保険法に基づき、事業者の指定の効力の一部を停止し、新規入所者の受け入れ停止6カ月の行政処分を行っているからだ。(※処分は同日付で、期間は来年4月18日まで。

小野町の調査によると昨年10月8日深夜から翌朝にかけて入所者の女性1人が死亡した事件では、介護福祉士冨沢伸一被告(42)による身体的虐待が認められた。そのほか、事件後に町が7回にわたって行った監査で、別の職員1人が大声を上げるなどの心理的虐待をしていたことも判明。施設の虐待疑いに対する予防が一時的なもので、対応を放置しており、介護などの放棄が認められたとした。

こうした調査報告と処分内容も判決に影響してくると思われる。11/27にどういう判決が出されるか注目したいところだ。

この事件に関しては、被害者の親族らが損害賠償を求める訴えも起こされている。訴えによると親族らは、冨澤被告と施設を運営する「社会福祉法人・かがやき福祉会」に対し、女性の死亡による慰謝料などあわせて約4.975万円を求めている。

小野町の調査で、「施設の虐待疑いに対する予防が一時的なもので、対応を放置していた。」と結論付けられている以上、母体法人が損害賠償責任を負うこともほぼ間違いないところだろう。

このように一度このような事件が起きると、その法人及び施設の社会的信用度が一気に低下するにとどまらず、損害賠償という形の金銭補償が必要になる。場合によってそのことは、今後の事業経営に大きな支障となり、廃業に進む道につながりかねない。

虐待予防対策がアリバイ作り的な形式なもので、本当に人の暮らしを護ろうとする人材育成をしてこなかったつけであるとしても、その結果はあまりも代償が大きいものといえる。

そうならないための唯一の方法は、虐待などが起きてから対処するのではなく、日ごろから不適切対応が起きないように対策することだ。

その基盤になるのが、従業員に対して定期的にサービスマナー教育を行って、利用者はお客様であり、家族とは違う存在であるという理解を促し、顧客対応としてふさわしい対応の基本姿勢を身に着けたうえで、その上にさらにお客様におもてなしの精神をもって接することができる、「ホスピタリティ精神」を醸成することだ。

そうした精神はマニュアルで作ることは不可能である。精神とは自然と心の中に湧きあがってくる気思いなのだから、湧き上げろと言ってどうなるものでもないのである。

そうした精神は、日常的お客様に対するサービスマナー意識をもって接する先にしか生まれないのである。

そんな精神基盤のない場所で昨日も事件が明らかになっている。
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道新Webより転載
札幌中央署は9日、傷害の疑いで、札幌市中央区宮の森、介護職員・成田匡徳容疑者(30)を逮捕した。逮捕容疑は、10月29日午後5時ごろから同30日午前8時50分ごろにかけ、勤務する介護付有料老人ホームで、入所者の女性(73)をベッドに放り投げるなどし頭や腕などに軽傷を負わせた疑い。
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こんな哀しくて情けない事件が繰り返されることがないように、対人援助のプロとして、人として、ごく普通に人を護る介護支援に携わるようにしていかねばならない。

その為には利用者を人として敬い・人間愛を寄せて手を差し伸べる基盤を創り上げなければならない。

良い介護をする前に、当たり前の介護を毎日繰り返すことができる対人援助のプロを育てていく必要がある。

今日は19:00〜20:30の予定で、長崎県島原市に向けて島原市グループホーム連絡協議会主催研修として、「サービスマナー講演」をオンライン配信する予定だ。日勤を終えた方も受講できる時間帯ということで、遅い時間の配信となるが、受講者の皆様の心に響いて、ごく当たり前にマナーを忘れずに利用者対応できるように伝えたいと思う。

島原市の介護関係者に向けて、エールを送る動画も作成しているので、ぜひ下記参照願いたい。

島原市の皆さんと午後7時から、オンラインを通じてお愛できるのを楽しみにしています。どうぞよろしくお願いいたします。






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