2024年度からの介護報酬改定に関連して、新たに創設が予定されている複合型サービス(訪問介護と通所介護の組合せ)の概要が、11/6の介護給付費分科会で示された。

この複合型サービス(訪問介護と通所介護の組合せ)については8/30の介護給付費分科会で、「必要性がない」・「制度をますます複雑にする」などという反対論が複数出され、厚労省はその創設について今後慎重に検討するとしていた。

しかし今回の資料によって、厚労省はいよいよ新サービス創設に舵を切ったことがわかる。

創設反対意見等を無視する形で創設に舵を切った理由は、昨年末の介護保険制度の見直しに関する意見で、その必要性を高らかに謳っていた以上、面子にかけてもこの新サービスの創設は見送ることはできなかったからだろう。

ただしこうなることは、僕が行う講演では予言していた。受講された方はその予測が当たったことに気がついているだろう。
紅葉
それはともかく、今回の資料では複合型サービスと呼ばれる新サービスの概要が示されているが、その内容を見て僕は少しがっかりしてしまった。

複合型サービスは、コロナ特例で通所サービスから職員を利用者宅に派遣していたサービスをモデルにし、既存の通所サービスが柔軟に職員を利用者宅に派遣できるスタイルになるのかと思ったら、どうやらそうではないようだ。

資料を読むと複合型サービスは、定員29人以下の地域密着型サービスとして、要介護度別の包括払い(月額定額報酬)とされている。

複合型サービスの利用者の計画担当者については、居宅介護支援事業所の介護支援専門員が担うこととされ、複合型サービスに内包しないことになった。

これは小規模多機能居宅介護がケアマネジメントを内包することで、居宅介護支援事業所の介護支援専門員が担当を外れることを嫌うケースが多いために、予想外に普及しないことを鑑み、その轍を踏まないようにしたものである。

指定条件については、複合型サービスとは(訪問介護と通所介護の組合せ)とされているように、まさに訪問介護と通所介護を一体的に同一建物の中で指定するスタイルのようである。

その考え方は、「既存サービスの組み合わせであるため、訪問介護、通所介護で必要とされている人員・設備・運営の基準と基本的に同様とする」というふうに示されており、例えば通所介護事業所が複合型サービスを行おうとすれば、現在の人員配置に加えて、訪問介護に必要な訪問介護員を常勤換算で2.5名以上を配置し、かつサービス提供責任者を利用者40名に対して1名以上配置する必要がある。

管理者は両方併せて一人配置でよいとされており、設備についても既存の訪問介護、通所介護で必要なものを全て共有して使用することはできるが、訪問介護員やサービス提供責任者を新たに雇用するのは大きなバリアになりそうである。

しかも問題は訪問サービスの担い手の資格要件である。資料では、「複合型サービスと訪問介護事業所の指定を併せて受け、一体的に運営している場合、複合型サービスの訪問介護員の基準を満たすこととする。」としていて、その意味が分かりづらい。

しかし厚労省の担当者は会合後、「引き続き議論していくが、初任者研修の修了などホームヘルパーの資格を要件として定める方向で検討していきたい、と現時点では考えている」と明らかにしている。

ということは今後、複合型サービスを経営しようとするの当たって、最大の課題は訪問介護員集めということになる。

何しろ2022年度の訪問介護職の有効求人倍率は15.53倍であり、今年度は既に16倍を超えていると予測されている。雇用する側から見ればこれは壊滅的数字といえるわけである。

募集しても応募がほとんどない訪問介護の有資格者を、今後は複合型サービスと訪問介護で奪い合わねばならなくなるということだ・・・その結果は、どちらかが勝利するのではなく共倒れが落ちだろう。

ということで、新設される複合型サービスは事業経営するにはあまりにもハードルが高く、人材も集まらずにサービス提供が困難であるというリスクの高い事業となる。

近い将来(早ければ2027年度にも)、軽介護者(要介護1と2の対象者)の通所介護が地域支援事業化されることを見越して、その人たちの受け皿として、介護給付として利用し続けることができる複合型サービスを経営したいと考える介護事業経営者も少なくなかったが、今回の資料を見て二の足を踏むことになるだろう。

さすれば複合型サービス事業に参入することができるとすれば、すでに通所介護と訪問介護を行っている法人が、その両者をくっつけて一体的に営業する形が主になるのではないかと思う。

よって僕個人としては、こんな形のサービスが浸透・普及するわけがないと思うのである。






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