11月26日の介護給付費分科会の通所リハビリの論点のひとつには、規模別報酬の見直しが挙げられている。

現行の通所リハビリテーションの報酬体系は「規模別」「時間区分別」を基本とし、スケールメリットに着目した評価の視点から、大規模ほど単位数が低くなる仕組みとなっている。

これについて厚労省から、「大規模型であっても、体制を整えて個々の利用者のニーズに応じたリハを行う事業所などは、必ずしもスケールメリットが働かない」という説明があり、「大規模型の中にも体制が厚いところと必ずしもそうでないところがある。例えば体制が厚い事業所、一定の要件を満たす事業所などの減算を軽くする」との案が示された。

つまり大規模区分の報酬の減算幅を小さくして、通常規模報酬単価に近づけるという意味だ。そのうえで、リハ専門職などの配置に手厚く加算するというのだから、大規模区分の方が収益が挙がりやすい報酬構造になっていく。

しかしそれは第1段階の考え方に過ぎず、近い将来には規模別報酬という考え方の根本を変えて、スケールメリットが働く一定規模以上の通所リハビリを基本サービス費の基準にしようというものだ。つまり規模が大きな事業所の方が高い報酬を算定できる時代に変えていこうという考え方である。
夕暮れ
この考え方は財務省が先行して示しており、昨年3月に行われた「財政制度等審議会」で、規模を大きくして効率的経営を行っている介護事業者をメルクマール指標)として介護報酬を定めることを提案している。(参照:経営規模拡大を図る財務省の暴論

社会全体で労働力が減る我が国では、より少ない人手によって成果を高めるという生産性の向上があらゆる分野で求められ、介護事業もその例外ではない。その為、スケールメリットが働く一定規模以上の事業展開が求められてくることは必然となってくる。

介護保険制度は、利用者の自立支援と福祉の向上を旗印にしており、その実現を図る方法の一つとして、サービス提供の規模を小さくして、利用者と職員の馴染みの関係を作りやすくして、利用者の細やかなニーズに応えてゆくというユニットケアの思想を広げる方向で制度構築されていたが、それは今は昔という話になるのだろう。

それが証拠に2ユニットが原則だったGHは、3ユニット+サテライト事業が認めらえるようになったが、これも橋頭保の一つに過ぎず、いずれは4ユニット〜5ユニットというGHの創設も現実化されていくことが想定される。

その第一歩が、通所リハビリの規模別報酬の見直しという形で表面化しているに過ぎない。

そして大規模型の基本サービス費の減算幅が縮小され、将来的には小規模より大規模型報酬が優遇される仕組みは、通所介護も同様にそのレールに乗せられていくことになるだろう。

そうなると大規模通所サービス事業が、経営モデルとしてはスタンダードになっていくことは確実だといえよう。地域密着型通所介護等の小規模通所サービスは、その波にのまれていくのではないだろうか。

そもそも今でさも地域密着型通所介護の経営は厳しい。利用者上限は1日18人でしかないのだから、開設当初はそれで経営できたとしても、職員が定着して給与の引き上げが必要になっても、顧客を増やして昇給原資を確保する手立てがなく、人件費が年々上がるたびに収益率が下がっていくというのが特徴である。

よって遅かれ早かれ、報酬体系がどうあっても、地域密着型通所介護は都道府県指定型の規模を目指していかねばならないのだ。新設時は立ち上げ資金が比較的安価で済む地域密着型通所介護としても、そこで経営努力を続け、顧客から信頼されるサービスを地域展開し、地域住民から選ばれる事業所として規模を拡大していく必要があるということだ。

ところで小規模通所サービスのメリットの一つは、人材不足の介護業界にあって、比較的従業員を集めやすいということが挙げられている。しかしそのことにもいずれ逆転現象が起こる。

なぜなら統合・一本化される処遇改善加算も、収益に対するサービス種別ごとの掛け率で支給されるからだ。

今現在は、小規模通所サービスの基本サービス費が高いことで、利用者数が少なくとも処遇改善加算への影響は限定的であるが、大規模区分と通常規模区分・小規模区分の報酬差額が小さくなることで、より利用者が多く通い収益が挙がる大規模区分の処遇改善加算の算定額が大きくなる。

つまり今後の通所サービスは、大規模区分で働く方が、小規模区分で働くよりも処遇改善加算による給与改善額が大きくなり、その差は年々広がっていくことになるのである。

そうなったとき、小規模区分の通所サービス事業所に今のように人材が集まるかと考えたとき、それは難しくなるだろう。

大規模区分の方が有給などの休みも取りやすく、給与体系も良いとなれば、小規模サービスの質の高い介護などという理屈は吹っ飛んで、そこに人材が張り付くことは困難となっていくのではないだろうか。

こうした展望と分析も、今後の通所サービス経営を考える上では必要になってくると思われる。






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