介護支援専門員がケアプランを作る際などに用いる「課題分析標準項目」が、(※痴ほうを認知症に表記変更するなどを除いて)介護保険制度施行以来初めて改正され、10/16付で介護保険最新情報Vol.1178Vol.1179において通知されている。

この通知では、課題分析標準項目の変更理由について、次の2点を挙げている。

・各項目の名称や「項目の主な内容(例)」の記載が一部現状とそぐわないものになっていること

・来年4月から開始される介護支援専門員の新たな法定研修カリキュラムに「適切なケアマネジメント手法」が盛り込まれることを踏まえ、これとの整合性を図る必要があること


項目の主な内容が現状にそぐわないと言われれば、なるほどと思わざるを得ない。

例えば、「(旧)コミュニケーション能力」は、「(新)コミュニケーションにおける理解と表出の状況」に変更され、「(旧)意思の伝達、視力、聴力等のコミュニケーションに関する項目」とされていた内容も、「(新)コミュニケーションの理解の状況、コミュニケーションの表出の状況(視覚、聴覚等の能力、言語・非言語における意思疎通)、コミュニケーション機器・方法等(対面以外のコミュニケーションツール(電話、PC、スマートフォン)も含む)に関する項目」というふうに変えられている。

スマートホンやタブレットを使いこなしている高齢者が介護サービスを利用する時代になっているので、それは現状に即したアセスメント内容と言ってよいだろう。
きみの介護に根拠はあるか
こんなふうに、より時代と現状に即したケアプランの根拠が求められているというわけである。

変更内容は文言の適正化や記載の充実を図ったもので、情報収集項目がこれまでと変わるわけではないし、課題分析標準項目は23項目のままで変更はないとされている。しかし項目名や記載例が幅広く改正されおり、確認すべきこと・分析すべき内容は確実に増えることになるので、介護支援専門員が課題分析に費やす時間は増えることになる。

ただし通知(課題分析標準項目の改正に関する Q&A)では、『項目の主な内容(例)」について、各項目の解釈の違いで把握する内容に差異が生じることのないよう、全体的に具体的な記載を増やしている。ただ、こうした内容の全ての情報を収集するよう求めるものではなく、個々の利用者の課題分析に必要な情報を判断するための例示であることに留意されたい。』としており、一部の内容は割愛してよいことを示唆している。

さらに、『各保険者においては実地指導等において、「項目の主な内容(例)」に記載されている内容が把握されていないことのみをもって、アセスメントが適切に行われていないと判断し、基準違反とすることが無いよう留意されたい。』と運営指導担当者にも釘を刺している。

しかし、「個々の利用者の課題分析に必要な情報を判断するための例示」であるとされているため、担当利用者全員の特定内容が空白であれば問題とされるだろうし、「内容が把握されていないことのみをもって〜」という言い回しは、それだけでは運営基準違反とはならないものの、ほかの要素が加われば違反だとも解釈できるので、この部分ではローカルールールが横行する可能性も大である。

そのため要らぬ苦言を受けないために、内容をすべて埋めておこうと考えるケアマネも多くなるだろう。それはそれでよいと思う。従前の課題分析標準項目が初めて示された時も、ずいぶん面倒くさいことをさせられるなと思ったものの、いざ行ってみると慣れてしまって、それが普通の状態になるのにさほど時間はかからなかった覚えがある・・・今回も、まずは新しい課題分析標準項目に一日も早く慣れて、その内容を把握することを普通にしたほうがポジティブである。

それによって今まで気づかなかったものも見えてくるかもしれない。むしろ利用者ごとに、どの内容を埋めて、どの内容を埋めなくてよいのかと考えるほうが面倒だし、時間もかかってしまうのではないだろうか・・・それなら例示された内容を、機械的と言われても良いから埋めておくほうが楽である。

ところで新しい課題分析標準項目をいつから用いなければならないのかという質問を受けることがある・・・その時期は示されていないものの、10/16付で新項目が通知されたということは、すでに課題分析標準項目は変更されたという意味であり、できるだけ速やかに切り替える必要があるということは間違いない。

勿論、その準備にそれなりの期間を要すことは当たり前のことなので、今時点で旧項目でアセスメントを行っているからと言って即、運営基準違反とするようなおバカな行政担当者はいないと思う・・・いるとしたら性格がかなり悪いか、知性が低いかのどちらかである。

しかしながらこの改正は、『来年度からの新たな法定研修に導入される「適切なケアマネジメント手法」に準拠した項目と記載例になった』とされているので、少なくとも来年度以降は、新しい課題分析標準項目を用いてアセスメントを行わねばならないと考えるべきであろう。

手法を変えることはなかなか容易なことではなく、最初は手間に感じるだろう。しかし多様化したニーズ・社会情勢の変化に応じた変更であると考え、ケアマネの皆さんもそこに柔軟に対応できる能力を示すという意味でうまく対応してほしい。

そして課題分析標準項目に合わせるだけではなく、自らの思考回路も進化させていこうではないか。






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