我が国では少子高齢化が益々進行し、生産年齢人口が減少し続けるため、全産業が深刻な人手不足に陥っている。

そのため多死社会を迎えているにもかかわらず、納棺士など、葬儀・火葬に関する専門職も不足し、葬儀・火葬の順番が回ってこないという笑えない話も聞こえてくる。

本来人手が一番必要な介護という職業も、必要な人材確保は困難という見込みの中で、「生産性の向上が不可欠」という掛け声によって、介護DXも求められている。

しかし安易に生産性の向上を叫ぶ輩には、「この国の大企業の生産性向上の実態を見てみろ」と言いたい。その実態は下請け企業の犠牲によって成り立っているにすぎず、この10年間で下請け企業に渡される手間賃は下がり続けているのだ・・・それは下請け企業の社員給料が据え置かれるか、下がり続ける状況で生まれている大企業の生産性向上に過ぎない。

これを介護業界に当てはめると、コスト削減より業務削減が主たる目的として生産性向上が図られるのだから、そのつけは自ずと利用者に犠牲を強いることになるのではないのか・・・それは非常に懸念されることだが、人手が増えないという事実はひっくり返らない。

高齢者の人口が増えている中にあって、既に介護職員の人数が足りないということが明確になっている。

例えば10/23の日経新聞は、厚労省の分析によると2022年は、介護業界から離職した人の数が、新たに入職した人の数を上回り、就労者数が1.6%減ったことを伝えている。

介護保険制度開始以後に増え続けていた介護労働者数が、初めて減少に転じたのである。
冬の美瑛
こうした状況を考えると、益々人が少なくなるのに対応したケアサービスの在り方を模索せざるを得ない。だからといって安易に配置基準を緩和して、人を減らして対応するなんて言う乱暴な対策には、おのずと限界が生ずる。

人が少なくなってもICT等を活用すれば、今までと同じケアを提供できるなんて言うことはないのだ。

介護という職業には、人手をかけなくてはできないことはまだたくさんあるわけで、そうした部分のケアは人手が少なくなれば劣化するし、人手を削ってワンオペ場面が増えれば、そこで働く人々のメンタル低下リスクの増大は避けられない。

介護サービスの生産性の向上は、人を削る前に考えるべきことがある。それはサービス提供者の知識と技術を向上させることだ。

その為には、人を育てられる熟練者を効率的に指導の場に就けるようにすることであり、そうした限られた人材を、「専従規定」で縛りつけることなく、複数の職場・複数のサービスで効率的に活用できる制度や仕組みを考えることである。

既に管理者の兼務をより柔軟に認める考え方は示されているが、管理者にとどまらず有資格者の実務者も個々の事業所に張り付けなくてよいように、兼務を広く認める必要があると思う。

厚労省は数年前に、「モデル就業規則」を改正し、原則禁止としている副業を認めるように規則緩和している。具体的には、「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」を削除した上で、「労働者は勤務時間外において他の会社等の業務に従事することができる」と規定変更しているのだ。

介護事業者がこうした規則変更も取り入れるべきであるし、国はさらに規制緩和を進め、介護保険制度サービス内にも、どんどん兼業を認める規制緩和を推進すべきである。

例えば、通所介護だって看護職員の配置のない通所介護を創設したって良いと思う。それでは利用者の健康管理ができないという馬鹿な意見が聴こえてくるが、居住系施設のグループホームに看護職員配置義務がないのに、通所サービスで1日数時間しか滞在しない通所介護に看護職員配置義務があるという矛盾を考えてみろと言いたくなる。

どちらにしても人手はさらに足りなくなるのだ。ないものねだりしてもしょうがないのであり、その時よりましなサービスの在り方を考えたならば、人手をかけないことを考える前に、有能な人をより多くの場面で活用できる方法を考えた方が良いのではないのか。

それが結果的に、今より少ない人手の中での、よりましなサービス提供に結びつくと考えるのである。






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