千葉県袖ケ浦市野里の「袖ケ浦瑞穂特別養護老人ホーム」で、職員が入所者に罵声を浴びせるなどしたことが発覚し、市が心理的虐待と認定したそうである。

本件は虐待情報が市高齢者支援課に寄せられ、同施設で職員12人に話を聞き、全職員35人にアンケート調査も行ったうえで虐待認定したものだ。それによると1人の職員が80代女性の入所者に対し「うるせえばばあ」や「たたくぞ」、「水あげないぞ」などと発言したことが判明している。

それだけでも許しがたいことであるが、さらに問題なのは、同施設での虐待認定が今回が初めてではないということだ。
終焉介護
同施設では昨年も職員の暴言が発覚し虐待と認定されており、改善計画及び結果報告を市に提出していたにも関わらず、まったく実効性がなかったという意味だ。

運営する社会福祉法人「瑞光会」は「1度目の対応が不十分だった懸念がある」と説明しているが、非課税法人として社会的に大きな責任を負うべき社福の姿勢が、このような暢気なものでよいのだろうか。

暴言による虐待認定を受けながら、それからわずか1年も経ない時期に同じような行為が繰り返されているということをもっと重大事と考える必要がある。「対応が不十分だった懸念がある」ではなく、「対応ができておらず、社福としての責任を果たしていない」と認識すべきだ。

そもそもこの法人は、最初の虐待認定をどう捉えていたのだろうか。社会福祉法人の公益性と鑑みて、あってはならない事件を引き越してしまったという認識があったものかどうか・・・ただ単に改善報告を提出し、アリバイ作りのように虐待防止の学習会を行えば虐待がなくなるなんてことはないのだ。

虐待につながる問題の根はどういうところにあったのかを、法人全体で深刻に検証する必要がある。

多くの場合それは親しみやすい対応と、無礼で馴れ馴れしい対応を勘違いして、後者の利用者対応がエスカレートして、虐待へと発展するのだ。

だからこそ対人援助における顧客対応として、利用者の方々に対するサービスマナー精神を忘れないように、しっかりその視点を備えて信頼を寄せられる顧客対応に終始できる介護事業を創り上げる必要がある。

毎日繰り返される日常の介護における声掛けにも。顧客対応としてふさわしい言葉を選択して使い分けるコミュニケーションスキルを身に着けさせる必要がある。

介護に必要な日常の会話の中であっても、お客様に対して使ってよい言葉と、使ってはならない言葉を取捨選択し、最もふさわしい言葉を使いこなすスキルを磨く訓練も、介護事業者として必要不可欠な内部訓練だ。

同施設は、昨年虐待認定を受けているのだから、徹底的に職員の再教育を行い、利用者が単なるユーザーではなく、大切なお客様であるという教育を行いなおして、職員全体にサービスマナーの徹底を図る必要があったのだ。その過程では信賞必罰の原則を取り入れて、その流れについていけない職員は、役職などから外れたり、昇給ベースをカットするなど、流れに乗れ事ができる職員との差別化も図る必要があったはずである。

ところが同じ暴言虐待が繰り返されているという事実は、こうした教育が行われておらず、意識向上の徹底が図れていなかったということになる。職員教育もおざなりだった可能性が高い。

虐待防止の研修は、ユーチューブ等で配信されている動画を職員全員に一度視聴させて効果があるというものではない。

虐待とは何を意味し、それがどのように人の心を殺してしまう行為であるのか、そうした虐待と無縁の介護事業の在り方について、介護という職業の使命と誇りという面と絡ませて考える学習機会を創る必要があるのだ。

今回問題となった職員は、おそらく本件以外にも日常的に利用者に罵声を浴びせていたのではないか・・・それがあまりにひどいために、通報されたということだろう。それが外部通報ではなく、内部通報であったならば、少しは救いがあるのかもしれない。

こうした罵声は、他の職員の耳に届かないわけがないのだから、そうした状況が少しでも見られたときに、職員間で「それはないでしょ」と云い合って、その場で改善を図ることができる職場環境を創ることが本来である。

」という言葉は、云うという文字がついているから、人の健全なる心を表す意味になるのだ。「」という文字から、云うを取り去ってしまえば、魂は「」に変わってしまうのだ。

私たちが携わる対人援助・介護サービス事業を、鬼の心持ちを持つ人間が取り仕切ることがないように、魂を持つ私たち自身が、不健全なるものは徹底的に排除するための「云う」を忘れてはならない。






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