先週の木曜日に北海道の自宅を経って、東京講演〜愛媛県八幡浜講演を終え、今日は明日の講演に備えて大分県日田市まで移動予定である。

東京と八幡浜の講演も、盛況利に終えることができた。何よりうれしいことは、そこで新しい出会いがあり、素晴らしい人との繋がりが新たに生まれたことである。会場での対面講演は、こうしたつながりができることが一番の財産だ・・・がしかし・・・僕自身は、名刺入れを自宅に置き忘れて、名刺をいただいた方に、自分の名刺を渡すことができないという大失態を演じた。

名刺をいただいた方には、この場を借りて深くお詫びしたい。帰宅後できるだけ速やかにお詫びの手紙に名刺を添えて送らせていただくので、どうぞよろしくお願いいたします。

さてそんな講演の旅の最中に、またぞろ介護事業に対する社会の信頼を揺るがす事件のニュースが入ってきた。介護施設を舞台にした事件は決して少なくはないが、それにしてもひどい事件が起こったものである。

事件概要を以下にまとめてみる。
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長野県塩尻市内の「ケアハウスえんれい」で同僚に向精神薬入りの飲料を飲ます傷害などの罪に問われ、逮捕後に保釈され公判中だった元介護職員の男が、塩尻署により入所者殺人疑いで先週11日に再逮捕された。

再逮捕されたのは望月大輔容疑者(40)。容疑は去年5月に入居者の前田裕子さん(当時77)に薬物を飲ませ殺害したというもの。

事件があった昨年5月28日は、前田さんから体調が悪いと申告があり、望月容疑者が対応。望月容疑者は「おなかの調子が悪いので夕飯は要らない」と言われたとの記録を残していた。

その翌朝前田さんが死亡しているのを他の職員が見つけて消防に通報したが、目立つ外傷はなかったという。

容疑者は、被害者が死亡した翌月の6月に自分から退職していた。しかしその後、前田さん名義の通帳を使って金融機関の現金自動受払機(ATM)から現金7万円を引き出した窃盗容疑や、同僚女性に薬物入りの飲料を飲ませた傷害容疑で5回逮捕され4回起訴されている。

裁判では現金を不正に引き出した理由について、検察が「女性との交際に金が必要だった」などと主張している。

このほか容疑者は、役場に偽の火事通報もしたことも明らかになっている。

知人らによると、望月容疑者は持病のため向精神薬を常用していたといい、処方されていた向精神薬と同様の成分が、死亡した入所者女性の体内から検出されているため、望月被告が自身の向精神薬を女性に服用させたとみて調べているが、被告は殺意を否認しているそうである。
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以上である。
介護事件
死亡した前田さんは穏やかな性格で礼儀正しく、他の入所者や職員とのトラブルなどはなく、鍵付きの個室に入所して通帳も自身で管理していたという。

容疑者は被害者の個室に入ってケアを行う立場を利用して、被害者が自己管理していた通帳を勝手に持ち出しATMから預金を引き出していたということになる。その発覚を恐れて殺害にまで及んだことだろうか・・・。そのような犯罪が、いとも簡単に行われているとしたら非常に恐ろしいことであり、介護保険施設や居住系施設に対しての世間の信頼を大きく損なわせる重大事件と言える。

容疑者に対する周囲の評価は、「おっとりとしていて物静かなタイプ。おとなしくて優しく、介護向きの性格だった」と言う。リーダーシップを取るタイプではなかったが、「利用者からの評判も良く、周囲の人に好かれていた」という声もあるそうだ。

そうであるがゆえに、経営陣・管理職などは、同容疑者が利用者の財産を搾取するなどの行為を行うような危険人物には見えなかったのだろうし、ましてや殺人や傷害という行為に及ぶ危険性のある人物などと考えもしなかったのだろう。

このようなサイコパス的人物は、採用面接やその後の人材評価などでも、真のパーソナリティを見抜くことは難しい。そういう人物が、従業員として混じっていないかということは、介護事業経営者が常に不安視している問題でもある。

しかし経営者や管理職の立場からは見えていないものが、同じ仕事をする同僚などには見えている場合がある。

例えば本件では、容疑者が向精神薬を処方され、服薬していたという事実を、管理職以上が把握していなかったという。しかし同僚はその事実を知っていたのである。

こうした個人のプライバシーにかかわる情報を、告げ口のように上申することには大きな抵抗があることは理解できる。

しかし利用者に心身をゆだねてもらい、そこに介入していく仕事をしている者自身が精神的不調を抱えながら業務に就いている状態を、管理職等が把握していないことは大問題であり、後々大きな問題に発展しかねないことは容易に想像がつくことである。

つまり精神的不調を抱えて介護業務に従事していることは、秘密にしてよいプライバシーではなく、少なくとも上司には報告すべき事柄なのだ。その状態を管理職が把握しておくことは労務管理上、必要不可欠である。

よってそのような情報を同僚等が知った場合、上司にその情報を伝えることも、労務管理上必要なことであり、プライバシーの侵害には当たらないのである。こうしたことを、きちんと従業員に伝える教育を行っておく必要があるのだ。

そのための報連相のシステム確立と、報連相の意味を伝える教育がしっかりできているかどうかが問題である。

管理職は、ただ単に年数を重ねてその地位に就かせるだけではなく、そうした教育を行って、教育内容を理解させたうえで、自らがそうした教育を部下に対して行うことができる能力を持つと判断したうえで、その地位に就かせる必要があるのだ。

そのことを介護事業経営者・管理職は、今一度確認・理解してほしいと思う。






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