介護事業経営者にとって、従業員の皆さんは宝であると同時に、家族同様の存在である。
だからこそ自分が経営する事業に所属する、すべての従業員の仕事に報いる待遇を与えたいと経営者は考え、その努力を行うことが義務であり経営能力だと思っている。
これは建前ではなく、僕が社福経営に携わっていた時に常に念頭に置いていたことだ。
そういう大切な従業員の方々だからこそ、信頼して業務を任せるということも必要になることが多い。それに応えて成長してくれる貴重な人材がたくさんいることも事実だ。このシステムなりサイクルなりを、いかにうまく回すかが経営能力の大きな部分を占めている。
だからと言って、すべて従業員が期待通りの人材に成長していくとは限らない。
中にはいくら教育してもその効果が表れずに、ファミリーになりきれないどころか、職場内の和を乱す言動に終始する人もいないわけではない。
そういう人がいた場合、経営者や管理職はどれだけ忍耐をもって教育指導を行うべきなのだろう。・・・対人援助という仕事に関して言えば、この部分の見切りは非常に重要になると思う。
誰かの心に咲く花になろうとせず、その場で枯れたままの残骸を残しておくことは、その場の環境を悪くするだけのデメリットしか生じさせないからだ。
私たちの職業は、人の暮らしに深く介入して心身に不自由のある人に求められる支援の手を差し伸べることである。その手が届かない状態を放置するということは、それらの利用者の暮らしを護ることができない状態を放置することに等しい。
介護という職業は、決められた作業を手早くこなすだけであってはならない職業だ。人の暮らしを豊かにする・誰かの日常を護るという意味は、介護を受けている人が心地よく感じる結果責任を常に意識しなければならないからである。
おむつ交換が手早くできたとしても、仏頂面でやさしい声をかけることもなく、黙々と作業に終始する支援者を求める人が、果たして何人いるのだろうか・・・。
心が寒くなる冷酷な扱いに対しても、おむつを替えてもらわねばならないから、口元に出かかった文句をぐっと飲みこんで我慢し、気持ちを抑えて耐える日々を繰り返さねばならないとしたら、それだけで日常は息詰まるような苦悩に満ちたものとなるだろう。
そうしないために、立派な介護支援者を目指す以前に、感じの良い人として利用者に受け入れられる介護支援者であってほしい。
勿論、最低限の介護技術が求められるが、うまくいかないことがあっても、「気にしないでいいよ。」と利用者から声をかけられるような、利用者の方々に好かれる存在であることは、人と向かい合って手を差し伸べる仕事の中では大事なスキルだ。
そうした意識を持った介護技術者として存在できるかどうかが、本当に必要とされる介護人材となり得るかどうかという点においては重要なのである。
だからこそ、向き・不向きの「見切り」は必要不可欠なのである。
そのためには、誰であっても一定の教育効果が及ぶと考えるのは間違いであるということに気が付かねばならない。
そして教育効果が及ばない人員に対する教育時間は無駄な時間にしか過ぎなくなることも理解する必要がある。そういう人に長くかかわる教育係は、自分の貴重な時間を成長しない人罪に削り取られバーンアウトする原因にもなる。
つまり一定のスキルに達しない人員によって、能力のある人材に過重労働がかかりバーンアウトすることになってしまうのだ。
さらに一定のスキルに達せず、仕事に習熟しない職員は、手を動かす代わりに、必要もなく口を動かして上司の悪口、同僚間の陰口を言い続けたりする。それによって職場の環境ぎすぎすした状態に悪化し、そうした不平。不満ばかり口にして、ちっとも仕事ができない人間を置いておくことに、仕事のできる人間の不満は高まり、有能な人材が職場を去る原因にもなる。
そのため人材の見切りをつけられない職場の、生産性は著しく低下するのである。
僕は先週の土曜日から博多に滞在しながら、良い人材の育て方とともに、良くなることが決してない人罪の見切りについてレクチャーしてきた。
今日からの介護事業経営に参考にしていただければ幸いである。
今日はいったん北海道の自宅に帰ることになる。幸い天気は晴れ。フライトに支障はないだろう。
今週末は、連合会館で行われる自治労主催の介護・地域福祉集会全体集会で講演を行うために上京する予定があるが、その際には、「今こそ介護に誇りを持ち、介護に携わる労働者が安心して働き続けられる体制を」というテーマで、介護事業に従事する方々にエールを送り、勇気を与える講演を行う予定だ。
次の土曜日は、駿河台で愛ましょう。
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