来年度からの介護報酬改定を議論する介護給付費分科会は、各種サービス別の議論の2ラウンド目を控え、各種業界団体のヒヤリングを2回に分けて行った。
先月27日の介護給付費分科会(資料)では、第1部ヒヤリングとして、全国ホームヘルパー協議会など8団体が要望・意見を挙げたが、その中で求人倍率が16倍を超えている訪問介護員の確保について、意見が述べられる場面があった。
そこでは、「初任者研修は施設・在宅を問わず、基本的な介護業務を担えることを目的としてカリキュラムが組まれているが、訪問介護の魅力に触れる機会がない状況」と問題を提起する意見があり、「ヘルパーの魅力に触れ、人材育成の強化につなげるために、研修講師の要件に在宅サービスの実務経験があることを追加して欲しい」という要望も示された。
ヘルパー(訪問介護サービス)という仕事の魅力を世間にアピールして、ヘルパーの成り手を何とか増やしてほしいという気持ちは理解できる。
しかし仕事の魅力は、他者から発信して伝わるものではない。仕事をしている当事者自身が発信して伝えなければ、人々の心に届かないと僕は思う。
そもそもヘルパー不足は、初任者研修に人が集まらないことで拍車がかかっているのに、その初任者研修で魅力を伝えて何が変わるというのだ・・・。人気がない初任者研修を受講する人は、すでにヘルパーになろうという動機づけを持っている人であり、それなりにヘルパーという仕事の魅力を感じ取っている人である。
ヘルパーを増やすために、その仕事の魅力を伝えるべき人とは、そうした研修に見向きもしない人々ではないのか。よって初任者研修に訪問介護の魅力に触れる機会を設けても、ほとんど意味がないと思う。
ましてや数ある介護関連職種の中で、ヘルパーの仕事だけを取り上げて、その実務を研修講師の条件にする提案など他の実務者から反発を受けるだけで、ヘルパーの確保や魅力発信などにはつながらないと言いたい。
介護関係者に欠けているのは発信力だとよく言われる。ヘルパー実務に携わっている人が、本当にヘルパーが魅力がある職業であると思うのなら、自らがその魅力を発信する工夫をすべきである。
現在はSNSで簡単に情報発信できる時代なのだから、そうした媒体を使って、不特定多数の人々に、いかにヘルパーという職業の魅力を伝えられるのかを、ヘルパー団体自らが考えて工夫すべきである。ICTの活用とはそうした面で行うべきだ。
それにしてもヘルパー不足は深刻な問題である。募集に応募がないばかりではなく、従事者の平均年齢が高く、50代以上のヘルパーが全体の7割強に上っている。(※70歳代のヘルパーも全体の7%を超えている)
この状況をみるといかに工夫を重ねても、いずれヘルパーという職業に就く人は枯渇する。少なくとも顧客ニーズに合致する訪問介護を提供できるだけの人的資源は充足しない。
この状況を抜本的に解決するためには、給与改善につながる訪問介護費のアップだけではなく、ヘルパー資格という既得権にとらわれることなく、他の介護職と同様に、無資格でも訪問介護が提供できるようにしなければならないのではないだろうか。
新複合型サービスの創設は不透明になっている状況ではあるが、そんなサービスを新設して制度を複雑化して、無資格者の訪問サービスを増やす手立てを講ずるのではなく、誰でも訪問介護に携わることができるようにした方が、よほどわかりやすくすっきりした形で、訪問サービス資源を護ることができるのではないだろうか。
それが国民ニーズでもあると思うのであるが、いかがだろう・・・。
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