共同通信社の調べによると、全国の市町村社協が経営する訪問介護事業所が、過去5年間に少なくとも約220カ所、廃止や休止されたそうである。
廃止や休止の理由は、都市部で一般の民間事業者との競合を理由に撤退するケースもあるが、多くはヘルパーの高齢化や人手不足、事業の収支悪化を理由としている。
しかし訪問介護事業所の数自体は増えているのだ。つまり顧客はいるということだ。そのような中で社協の訪問介護事業所がこれだけ減っているのは何故なのだろうか。
その理由は、民間に比べて社協の経営努力が足りないという意味なのだろうか・・・たぶんそうではないのだろう。
社会福祉協議会は、民間の社会福祉活動を推進することを目的とした営利を目的としない民間組織であり、市町村社協は多様な福祉ニーズに応えるため、地域の特性を踏まえ創意工夫をこらした独自の事業に取り組んでいるはずだ。
しかし営利を目的としないと言っても、サービスを提供するために必要な財源が天から降ってわいてくるわけではない。訪問介護を行う場合に、そこで必要となる人件費をはじめとした経費は、訪問介護事業所の収益の中で確保する必要があるのだ。
ヘルパー人材の確保が難しい中で人件費が高騰し、訪問介護の収入だけで事業経費を賄えなくなっているのだろう。
そもそも民間の訪問介護事業所が増えているのは、採算性の高い都市部などに事業所と人材を集中させて事業展開しているという意味もある。
しかし社共は、そうした地域を選んで事業展開するわけにはいかず、一軒一軒の移動時間が長く、採算性が低い過疎地域などで事業展開しているところが多い。そうした地域での事業運営が難しくなってきたという意味もあるのだろう。
これを受けて、次期報酬改定で訪問介護費を大幅にアップすることが対策となるのだろうか・・・しかし全国平均で4人に一人が65歳以上というヘルパーの高齢化が進んでいることを考えると、それも決定打にはならないように思える。
そもそも事業廃止は、訪問介護事業所に限ったことではない。

上の画像は9/24の北海道新聞朝刊である。一面トップ記事に介護施設の事業休止が相次いていることが報道されている。
つまり訪問介護事業所を減らさないように対策しても、その付けは他のサービスに回され、介護事業全体の人材不足の解消にはならないということだ。
今後、特定技能の外国人にも訪問系サービスへの従事を認める動きもあるが、そうなった場合は、施設サービスに従事している外国人が、訪問サービスに回るだけの話で、訪問介護の有効求人倍率がほんの少し下がる分、施設サービスの求人倍率は上がることになる。
介護職員に占める外国人材数はわずか2.1%に過ぎないが、今後、量的・人的に受け入れの総量を増やすという議論はほとんどされていないのだから、外国人材の配置基準などの規制撤廃は、介護人材不足の解決には結びつかないという意味だ。
だからこそ介護労働の生産性を高めて、今より少ない人的資源でサービスを完結させようと、介護DXが推奨されているわけであるが、「看護・介護職員配置基準緩和の危うさ」で指摘したように、配置基準緩和は非現実的である。
さすれば、この問題を解決に導くためには、国の劇的な政策転換のもとに、「移民政策」の議論が進むことが唯一の道ではないかとさえ思ってしまう。
それだけ人材対策は手詰まり状態であると言えるのではないだろうか。
どちらにしても、介護事業における生産性の向上を実現する最たるものとは、介護実務に精通した職員を育てて定着させることであり、今、介護事業者としてできることは、人材マネジメントにより一層のお金と労力を注入することである。
そこをおざなりにしている介護事業者は、ごく近い将来、人が誰もいなくなったと言って廃業するしか道はなくなる。




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成り手不足、(待遇面と業務内容のアンバランス)高齢化が主な原因だと思います。
事業所内で退職者が出るとなると今までの担当ケースの受け手をさがすことは大変困難です。
このような場合にはどのように対応したら良いのでしょうか?
近隣の事業所も受け入れはできない状況です。
masa
が
しました