昨日、介護事業所の敷地内で悲惨な事故が発生した。
さいたま市の通所介護事業所、「ビッグスマイルリハビリセンター」で9/14、駐車場で送迎車が3人をはね、利用者2人が死亡するという事故が起きたのである。(※そのほか職員1名が怪我)
ネット上にアップされているニュース映像では、事故車両が通所介護事業所の玄関前スロープに前方から突っ込んでいる画像が映っている。
※スロープに突っ込んでいる当該事故車両
ニュース映像の中では、この事業所の運営会社代表が、「玄関付近で送迎車両を(利用者が)待っていたところノンストップでスロープに突っ込み。ご遺族の方にも、本当に申し訳ありませんでした」と謝罪しているシーンを見ることができる。
運営会社や代表に直接過失があるわけではないが、2人の利用者の命が奪われたという結果を考えたときに、事故が起きた責任をとらねばならないことは当然だろう。
悔やんでも悔やみきれない事故が起きたということで、心中察するに余りある ・・・。
それにしてもこの事故の原因は何だろう。事故車両を運転していたのはアルバイトの運転手・窪島達郎容疑者(75)であり、昨日過失運転致傷の疑いで現行犯逮捕されている。
画像のようにスロープに前から突っ込んでいる状態・・・ここが事業所の駐車場であるということ・・・運営会社代表が目撃証言として、「ノンストップでスロープに突っ込み」と語っている事実。
これらのことを総合的に考えると、単純な不注意とか、運転操作ミスで片づけられないのではないかと思う。ドライバー自身に運転に影響を及ぼす認知機能低下という状態があったのではないかと疑われても仕方がない。
それにしても当該ドライバーは、これまで敷地内で他の車にぶつけるなどの物損事故を2、3回起こしていたという・・・事業者側の管理責任が問われてもおかしくない状況が見て取れる。
今後、これらの点を含めて事故原因を検証してほしいと思うが、介護関係者のすべての人に送迎担当職のあり方を考えるきっかけにしてほしい。
このブログには、「カテゴリー高齢ドライバー問題」というカテゴリーも設けており、高齢ドライバーの認知機能低下が、いかに悲惨な事故を引きおこしているのか、それを防ぐために運転からの勇退という考え方も必要ではないかということを再三指摘してきた。
通所介護の業務がより専門性を帯びて、サービス提供時間以外に行わねばならない記録業務等が増えていることから、通所介護サービスを提供する専門職(機能訓練指導員や相談員や介護職員等)が送迎を担当しない事業所が増えている。
しかし運転専門職員を雇用するにも、社会全体の人手不足と、その業務に特化した職種の人件費負担を重くできない事情などを鑑みて、退職高齢者を運転業務担当者として雇用する事業所が多くなっている。これは通所介護や通所リハビリだけではなく、介護施設等のショートステイの送迎など、送迎サービスが伴う介護事業に共通してみられる特徴だろう。
しかし運転技術も様々な要因で老化することを理解しておかねばならない。加齢に伴う運動機能の低下のみならず、知らず知らずのうちに低下する認知機能によって運転機能は劣化するのだ。
そもそも現在65歳以上で7人に一人(※2025年には5人に一人と予測)が認知症であると言われている。軽度認知障害(MCI)であれば、65歳以上の4人に一人がそれに該当すると言われている。
65歳以上の高齢者をドライバーとして雇用するということは、そのリスクを背負っているということだ。
ましてや当該事故の加害者となったドライバーは75歳である。送迎という利用者の命を預ける行為を担当させる当事者として、適性年齢と言えるのだろうか・・・。
少なくともこうした高齢者をドライバーという職種で雇用する場合は、アルコールチェックと同様に、毎日の運転業務前の認知機能検査は必須ではないだろうか。
そうした議論が行われなければならないと思う。
(9/16AM7:10追記)
事故を起こした運転手の履歴書や運転免許証のコピーなどの生年月日が、実際より7歳若くなる昭和30年5月になっていたため、運営会社のビッグスマイルの代表取締役は、「事故が起きるまで運転手は68歳だと思い込んでいて、75歳と報道されて驚いた」と取材に答えています。しかしこれも余りに無責任。採用時に住民票もしくは戸籍謄本などをとらないのは何故でしょう。免許証も原本確認が原則です。労務管理の徹底的な見直しが必要と思います。
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