本年4月から本格稼働している、「ケアプランデータ連携システム」は、居宅介護支援事業所と(訪問介護や通所介護等の)居宅サービス事業所間で、ケアプラン1.2.6.7表の情報授受を行うシステムである。
しかしこのシステムを使うには、1事業所あたり年間2万1000円(消費税込み)の使用料が必要とされている。
このことに関して国は、システムを利用することで削減できる人件費等を考慮した場合、年間81.6万円のコスト削減につながると試算している。
確かに居宅介護支援事業所から各サービス事業所に毎月送らねばならないサービス提供票及び別表について、それらをFAXで送る手間を考えた場合、その作業がなくなることによる業務軽減効果は少なくないものと思われる。
しかしそれをルーチンワークにしている居宅ケアマネジャーにとって、その分の人件費削減効果があると言われてもさっぱり実感はわかない。そのためだけに事務員を雇っているわけではないのだから年間81.6万円のコスト削減なんて嘘だろうと思っているケアマネが多い。
むしろシステム利用料として国にいくら入るのかを考えたとき、年額2万1000円というのはぼったくり以外の何ものでもないと思えてしまう。(参照:ケアプラン連携システム使用料収入は年間10億を超える法外な利権)
そもそも提供票及び別表をアナログの方法で送っている事業所がいくら残っているだろう・・・ケアプラン1.2.6.7表をデータ化して情報授受するだけなら、Googleのラインワークスを使えば無料でできちゃうので、そうした方法でやり取りしている事業所は、年額2万1000円もかけてケアプランデータ連携システムを使う必要は全くない。
またこのシステムは、居宅介護支援事業所と居宅サービス事業所間双方で使わなければ意味がないので、そのすり合わせも必要だろうし、様子見している事業所もかなりの数あるだろうと思う。導入するにしても焦る必要はないわけである。
ところで国はワムネット内で、ケアプランデータ連携システム利用状況を公開している。
今日現在公開されている最新データは、8/10時点のものとなっているが、全国の利用状況は上記画像の通りである。
ご覧のように利用率はまだかなり低いと言える。(※ちなみに僕が住む登別市では、このシステムを使っている事業所はまだゼロであると掲載されている。)
しかしこの低利用率についても国は、「想定内」としているそうである。それは単に時期的な問題ではなく、このシステムを普及させるための決め手をまだ示していないという意味だろう。
では次の一手、あるいは決め手とは何か?
おそらくそれは来年度の介護報酬改定で、居宅介護支援費に新設される可能性が高い、「科学的介護推進体制加算(※加算名は流動的)」の算定要件に関連したものであろうと思われる。
居宅介護支援事業所の場合、他の事業所と異なり利用者データを直接LIFEに送る必要はない。それは居宅サービスを直接提供している事業所から送られているからだ。
その為、居宅介護支援事業所の「科学的介護推進体制加算」とは、通所介護や通所リハビリ事業所等が同加算を算定するためにLIFEに送っているデータのフィードバック情報について、フィードバックされた事業所と情報を共有したうえで、そのフィードバックを居宅サービス計画書に反映して再作成することによって算定できる加算となる予定だ。
モデル事業ではこのフィードバック情報を、サービス担当者会議で確認・共有して居宅サービス計画書に反映させるという形をとっているわけだが、この方法は実践的方法とは言えない。
なぜならサービス担当者会議で、初めて目にしたフィードバック情報を、その場で的確に居宅サービス計画書に反映できるなどということは神業とは言えないまでも、達人技に近いことだからである。
実際にはもっと考える時間が必要になるはずだ。
よってフィードバック情報は、サービス担当者会議以前に、居宅サービス事業所から居宅介護支援事業所に提供されている必要があるということになる。担当者会議では、その情報を反映して再作成された居宅サービス計画書原案を居宅ケアマネが示して検討するようにすることが実践的方法と言える。
するとここにケアプランデータ連携システムの出番が生まれるわけである。
サービス担当者会議前の原案作成時点で、ケアプランデータ連携システムを通じてフィードバック情報を、居宅介護支援事業所とフィードバックを受けた事業所間で共有することで、居宅介護支援事業所の新加算算定作業はより効率化できるし、それによって算定率も高まる可能性がある。
居宅介護支援事業所にすれば、どうせ情報共有するなら、できるだけ早い段階でデジタルデータを得たいと思うの当然なので、この方法は歓迎されるだろう。
ということでケアプランデータ連携システムの普及のための国の勝負手とは、フィードバック情報を同システムを通じて情報授受できるようにするということではないかと思う。
このブログ読者の皆さんは、どう思うだろうか・・・。
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現状、ケアプランデータ連携を使えるパソコンは1事業所1台限定となっています。
そのため、月2回の取り込みと送信程度であれば問題は生じないと思いますが、一連のケアマネジメントでケアプランデータ連携を活用しようと思うと、さまざまな調整が必要だと思います。
予備のパソコンがあれば、使いたい時だけそのパソコンを使えばよいですが、他の人が使っているパソコンをケアプランデータ連携の時のみ借りて、というのは現実的とは思えません。
活用には、まだまだ先が長そうです。
masa
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