僕が住む登別市の東隣は白老町という小さな町である。

ここはアイヌ文化を伝える国立施設ウポポイがある町として知っている方も多いと思う。もともと大手製紙会社の企業城下町で、財政事情も良い町である。

その白老町の議会が開かれている最中であるが、先週の一般質問において町長は、町立の介護老人保健施設の収支改善が困難と判断し、休止および廃止を検討していることを表明した。

実はこの老健「きたこぶし」(定員29名)・・・昨年12月、複数の利用者が柵で囲まれたベッドに寝かせられたり、排せつ時に「汚い」「臭い」などと暴言を浴びせられたとして、道から改善指導を受けている。(※虐待事案自体は昨年10月に発覚している。

それをきっかけに新規入所者を受け入れず、在籍していた人も転所・在宅復帰を図るなどして現在入所者はゼロとなっている。さすれば道の指導を受けたことをきっかけに、確信犯的に事業廃止に向けて動いていたということではないのだろうか。

職員を教育しなおして経営立て直しを図る意欲もないということだろう。町立施設とはなんともお気楽である・・・。

民間経営母体なら、とてもではないがこのように簡単に休止や廃止に踏み切れない。何とか経営の立て直しに躍起となるところだろう・・・。
白川郷
しかしながら一度虐待事例が発生すると、このように事業経営危機に直結するのも事実だ。大きな法人の一部門でも、こうした事件が起きると法人全体のイメージに傷がつく。

だからこそ顧客対応を意識した、最低限のサービスマナーを身に着けるような従業員教育が不可欠である。これをおざなりにしている事業者は、いつそのしっぺ返しを食らうかわからない。そのような経営危機を孕んだままの介護事業経営は綱渡りと言える。そんな不安定な状態にしてはならない。

介護事業者の顧客の中心層はもう団塊の世代の人たちになってきている。その人たちはしっかり自己主張する人であり、介護事業に従事する職員のプロ意識に欠ける対応を許してくれない人たちも多いことに注意しなければならない。

なぜなら団塊の世代は日本の経済成長を支えてきた人々であり、従業員が顧客対応する際にサービスマナーを護るのは当たり前で、それに加えてホスピタリティ精神が求められることの指導・教育の先頭に立ってきた世代でもあるからだ。

その世代の方々は、自分が介護サービスを受ける身になった際に、適切な顧客対応されない状況に不満を持つだけではなく、自分自身がそういう対応を受ける身になったことを誰よりも嘆くことになる。

人の暮らしを豊かにするための介護事業が、人を嘆かせるために存在して良いのだろうかと考えたならば、人権を侵害する要素を排除するために、利用者から誤解されないための、「サービスマナー」を身に着ける必要があるということだ。

馴れしい対応で、利用者の尊厳や誇りを奪い、心を殺してしまうことを恐れる人でなければならず、よそよそしさを恐れるより、無礼で馴れ対人援助のプロとして、いつでもどこでも、マナーをもって接することができるように訓練する必要がある。

それは私たちに求められるコミュニケーション技術であり、それができないならプロ失格として別な職業を探さねばならない。

この問題に関して言えば、コロナ禍の3年間という特殊事情も大いに影響があると言える。

外出・面会制限が当たり前という風潮の中で密室化した介護事業者は、外部の目が行き届かない状況が生じた。その中で従業員に甘えと感覚麻痺はないかという検証をすべき時期に来ている。

面会者が誰もいない状況で、第3者の目が届かないことに緊張感を失い、従業員の利用者対応に乱れがなかったかということや、顧客意識の薄れた言動が目立っていないかということを確認し、必要なら修正・改善していかねばならない。

そうした意識の高い介護事業者からは、サービスマナー研修講師依頼が増えてきている。

先日も社福祉法人さんの職員研修として、「介護事業におけるサービスマナー」をテーマに講演を行ってきたが、 受講された方々から、「介護の基本的姿勢を再確認できました」・「なあなあになってた事を改めて感じることが出来た」・「様々な場面、具体的事例から思いやり、ホスピタリティーについて学び直すことができた」等の感想意見が挙がってきた。

気付きを得ていただき、講師としてありがたい気持ちである。それと共に、法人内の職員研修を行う時に気が付いたこともある。それはコロナ禍以後に初めて介護事業者に就職した人も決して少なくないということである。

それは何を意味するのか・・・そのことはまた明日続きを書くとしよう。






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