僕は複数の出版社から何冊かの著作本を上梓しており、定期的にいくばくかの印税を頂いている。

著作本以外にも、「文章を書く」という仕事を頂き、執筆料・原稿料として毎月収入を得てもいる。

そういう意味ではプロの物書きと名乗っても良いのではないかと思う。それは頭の中に思い浮かんだ言葉を文字にして表すプロであるとも言えるのではないだろうか。

飛鳥亮は、「SAY YES」という楽曲の中で、「言葉は心を超えない。とても伝えたがるけど、心に勝てない」というフレーズを書いているが、歌手ならそれでよいとして、プロの物書きはそういうわけにはいかない。

心を超えなくても良いとしても、少なくとも心を伝える言葉を書かなければならない。伝わらない言葉を書いても、読み手は迷惑でしかないからだ。

しかし思いを伝えようとして、説明が長々と書かれている文章は、読み手にとって苦痛でしかないことにも注意が必要だ。

そもそも文章を読むことをはじめから苦手としている人もいることを、書き手は知っておく必要がある。自分が読むことを苦にしない文章も、読むことが苦手な人・嫌いな人にとっては、読み終える前に投げ出してしまうのが落ちとなる代物に過ぎない。

しかも読むのが得意な人、苦にならない人というのは案外少数派なのだ。一般的には文章を読む行為はどちらかといえば苦手な人のほうが多いのである。特にネットが普及して、動画を簡単に視聴できる現代社会では、文章を読まずに生活できてしまう空間が簡単に創られているので、文字から遠い場所で暮らしている人が多い社会でもある。

そういう社会であるからこそ、書き手は自らの文章をできるだけ簡潔にまとめ、要点をかいつまんで伝える必要がある。それと同時に、そういう人たちの心の琴線に触れる言葉やエピソードを盛り込んで、その人達を引き込む文章を綴れれば、書き手としていうことはなくなる。

自分の言葉を持つ、数多くの言葉を知っているということは、そういう意味でも重要である。それと同時に、自分にしか書くことができない実例を経験するということは貴重なことであるといえるだろう。

どちらにしてもプロの書き手とは、自分自身の文章に酔う人ではなく、常に読み手の存在を意識して伝える人のことを指す。大多数の人が自分の文章を、「まずは読んでくれる」ことを目指し、そのうえで伝えたいこと・理解してほしいことを文字で示す玄人である必要があるのだ。
合掌造り集落
実はそのことは介護支援専門員にも求められることであろうと思う。

ケアプラン(施設サービス計画書及び居宅サービス計画書)は、作成者の意図が読み手に伝わらないとなんの意味もない書類にしか過ぎなくなる。

読み手が理解できない計画書を書いても、それはただのゴミである。介護職員が読んでくれない計画は、介護の場で実践できない戯言(たわごと)にしか過ぎなくなる。そこでは計画自体が意味のないものに成り下がる。

そうなれば介護支援専門員が行っている、アセスメントから計画書作成という一連のケアマネジメントが、すべて空しい意味のない作業と化してしまうのである。

計画書を作っておれば実地指導では叱られることはないが、その計画書が読まれていないのであれば、それは行政検査のためだけの書式に貶められているといって過言ではなくなる。

だからこそ、介護サービスの場で毎日忙しく利用者に接する人々が、業務の中で手に取って確認できる計画書を書く努力が介護支援専門員には求められるのだ。

読まれない計画書の存在を、読まない人の責任として放置せず、計画作成者自らの責任と考えて、何を改善すべきかを考えなければならない。自分の言葉や思いを、介護職員に伝える努力を惜しんではならないのである。

今後の介護事業では、科学的介護の推進が求められるが、それはLIFE(科学的介護情報システム)からのフィードバッグをPDCA活用することによって実現するとされている。

しかしPDCA活用の前提条件は、介護の場での実践、計画書に基づいて行われているということを忘れてはならない。

P(PLAN:計画)のD(DO:実行)がなければ、C(CHECK:評価)をA(ACTION:見直し実践)につなげられないことを理解して、実行につながるケアプラン作成のために何が必要かを考える必要がある。

そこで求められることは、伝えられる言葉を持つということだ。説得する言葉ではなく、納得される言葉を操るということである。

だからこそ介護支援専門員の方々には、数多くの文章を読みこなす人になってもらいたい。

作家はすべからく良い読み手から生まれることを理解して、文章を読むことを苦手とせずに、たくさんの文章を読みこなして、そこからたくさんの言葉・表現方法を拾い集める人になる必要があるのだ。

その手始めに読むものは何が良いかって?・・・「きみの介護に根拠はあるか〜本物の科学的介護とは」を薦めておこうか・・・。

少し手前みそ過ぎたかもしれないが・・・今日はこれから明石市の介護支援専門員の方々に向けた講演を行う予定が入っているので、この辺で失礼します。






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