次の介護保険制度改正における最大の目玉は、「新複合型サービス」の創設ではないかと思っていた。
そのことは昨年末にまとめられた、「介護保険制度改正の見直しに関する意見」の6頁に次のように書かれている。
「定期巡回・随時対応型訪問介護看護、(看護)小規模多機能型居宅介護の更なる普及に加え、例えば、特に都市部における居宅要介護者の様々な介護ニーズに柔軟に対応できるよう、複数の在宅サービス(訪問や通所系サービスなど)を組み合わせて提供する複合型サービスの類型などを設けることも検討することが適当である。」
これによって、コロナ特例で通所サービス事業所から職員が自宅訪問してサービス提供した方法をモデルにした新サービスが創設されると考えられていた。・・・というか僕はそう思っていた。
しかしそれは決定事項ではないようだ・・・なるほど見直し意見にも創設決定とは書いておらず、検討することが適当としか書かれていないから、これから新複合型サービスの創設は検討して、創設せずという結論もあるということか。
8/30の第222回社会保障審議会介護給付費分科会(web会議)は、新複合型サービスの創設について侃々諤々の議論が展開されたが、その創設に反対の意見が相次いだ。
反対論者の主な意見は以下の通りである。
・「なぜ新たなサービスが必要なのか。事業者間の連携を深めれば済む問題ではないか」(日本経団連・井上隆専務理事)
・「今でも制度が複雑だと言われているのに、屋上屋を重ねて更に複雑化させるのは反対。新たなサービスがないと現場が成り立たない、というエビデンスもない」(全国老人保健施設協会・東憲太郎会長)
・「必要性を感じない。既存サービスの規制緩和を先行させてはどうか」(日本慢性期医療協会・田中志子常任理事)
・「人材不足への根本的な対策ではない。介護職への応募を増やす施策を考えて欲しい」(認知症の人と家族の会・鎌田松代代表理事)
制度がますます複雑になり、わかりづらくなるというのはその通りだと思う。しかしそれにも増して新サービスの創設は意義があるとされていた。
新複合型サービスは、地域密着サービスとして月額定額報酬制として考えられていた。そしておそらくヘルパー資格(初任者研修等の受講条件)がない職員でも、訪問できるサービスとして創設される考えられていた。
つまり訪問介護員の絶滅危惧に対応するサービスであるという意味だ。
訪問介護員の成り手がなく、有効求人倍率が16倍を超え、しかも75歳以上のヘルパーが1割を超えているという現状は、訪問介護事業所が地域から撤退してしまって訪問介護サービスが提供できない地域が今後出てくるであろうことを意味している。
それに対応して、訪問介護に代わるサービスとして新複合型サービスは意味があると言えるだろう。
しかし新複合型サービスを通所介護事業所が行う際に、そこがお泊りデイサービスを行っている事業所である場合、そのサービス体系は小規模多機能型居宅介護と同じで、違いがないという意見がある。
その違いについては、新複合型サービスは小規模多機能型居宅介護と異なり、事業所に介護支援専門員を配置せず、外部の居宅介護支援事業所の介護支援専門員が居宅サービス計画に位置付けて利用できるサービスにするのではないかという予測がされていた。
というのも小規模多機能型居宅介護がなかなか普及しない理由は、居宅介護支援事業所の介護支援専門員の担当から外れて、小規模多機能型居宅介護事業所内の介護支援専門員の担当に替わってしまうことが理由で、それを嫌って居宅介護支援事業所の介護支援専門員が、自分の担当利用者が小規模多機能型居宅介護を利用することを勧めないケースが多いと言われていたからである。
しかし先般の介護給付費分科会の小規模多機能型居宅介護の議論では、担当ケアマネジャーの選択制導入という意見が示されている。
小規模多機能型居宅介護を利用する際に、利用者自身が小規模多機能型居宅介護の介護支援専門員に担当を替るか、そうではなくて居宅介護支援事業所の介護支援専門員が担当したまま小規模多機能型居宅介護を利用するか選択できるようにするという考え方である。
これが実現すれば、居宅介護支援事業所の介護支援専門員が担当したまま小規模多機能型居宅介護を利用するケースは、新複合型サービスとまったく同じということになりかねないのである。
そうであるがゆえに、8/30の分科会での反対意見は大いに説得力を持つともいえるわけである。
これに対して新複合型サービスの創設に賛成する意見は以下の通りである。
・「新たなサービスの創設には意義がある。人材の有効活用、柔軟な対応による質の高いサービスの提供などが期待できる」(全国老人福祉施設協議会・古谷忠之参与)
・「サービスの効率化や人材の有効活用など、うまくいけばプラスに働く。多くの事業者が参入して運営を続けられるよう、しっかりした報酬設定・制度設計を」(民間介護事業推進委員会・稲葉雅之代表委員)
新複合型サービス創設賛成論を唱える人の意見は、いまいち意味が分からない。人材活用が小規模多機能型居宅介護の更なる普及で可能になるのではないかと思え、説得力に欠ける意見と言わざるを得ない。
厚労省はこれから年末にかけて更に議論を深める方針だそうで、今後は8/30に示された賛否両論の意見も踏まえて検討していくことになるそうだ。果たして次期制度改正の目玉とも言えた新複合型サービスは創設されるのだろうか・・・。はたまた幻の創設論で終わるのだろうか・・・。
今後の議論に注目したいところである・・・しかし新複合型サービスがぽしゃって創設見送りになったら、昨年末にその創設を高らかに掲げた厚労省の面子は丸つぶれだな。
そのしっぺ返しもありそうな気がする。怖いな〜!!
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とにかく我々小多機の事業所は、本当に固唾を飲んでこの成り行きを見守っています。
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