介護報酬改定に伴い検討されている福祉用具の選択制。

現在、貸与物品とされている、固定用スロープ・歩行器・単点杖・多点杖などについては、貸与で使うか、あるいは販売で使うかを利用者が自ら選べるようにするという案が介護給付費分科会に示されているところだ。

これは介護給付費抑制策の一つでもあり、福祉用具の販売単独サービスは、ケアマネジメント(居宅介護支援費)の費用がかからないことを念頭に置いたものであることは今更言うまでもない。

この案の背景には、「ケアプランの内容が福祉用具貸与のみの場合、居宅介護支援の介護報酬を引き下げるべき。」という提案が、福祉用具貸与のみのケースでもケアマネジメントの手間は変わらないとして否定されたことも関係しているだろう。

それに代わる給付抑制策が選択制の提案に結びついているということだ。

この提案に対しては、福祉用具貸与業者等が、「販売だと利用者の状態変化に対応できない」などの反対の声を挙げているが、そうしたデメリットを含めて、利用者が選択すれば済むことだろうということは、「福祉用具貸与・販売の選択制議論に思うこと」で指摘済みである。
夕闇迫る
そういう意味で、僕は選択制に反対する立場はとっていない。

しかし実際に選択性が導入されても、購入を選ぶ利用者はわずかでしかないように思う。

自分専用のものとして購入したいという人や、他人が使用したものを再利用することに心理的抵抗があるとして購入を希望する人は、ある程度居ると思うが、それらの希望を持つ人が、その希望通り購入を選択するとも限らない。

なぜなら選択制とした場合、貸与を受けるか・購入するかという判断については、介護支援専門員等サービス担当者会議などを通じて利用者に販売か貸与を提案したうえで、利用者の合意に基づき決定する仕組みとされるからである。

このことは担当ケアマネジャーにとっては大きな負担になる一方で、ケアマネ主導で提案ができるというメリットもあるのではないかと思う。

ケアマネジャーが、「私が今後も責任をもって、あなたの心身の状態に最も適した福祉用具を、リアルタイムで選択していくことが一番良いと思うし、福祉用具貸与の計画を立てることで、関わっていくことができるので、その他のニーズにも的確に対応できます」という姿勢を示すことで、利用者は安易に貸与を購入に切り替えないのではないだろうか。

選択制になった場合に(販売か貸与を提案したうえで、合意を求めるという)新たな役割を求められるのに、それに対する対価を与えられるわけではないことを考えると、この程度のアピールは許されるのではないだろうか・・・。

そもそも福祉用具貸与のみしか介護保険サービスを利用していない人が、販売利用に切り替えた場合、その人は福祉用具購入月以降、居宅介護支援の対象からはずれてしまうことになる。そうなれば自分の担当ケアマネがいなくなるのだ。それをよしとする利用者がどれだけいるのだろうか。

多くの介護サービス利用者は、担当ケアマネジャーに信頼を寄せて、保険外のことも含めて様々な相談に乗ってもらっている。そういうケアマネジャーが担当ではなくなるのは困ると考えて、福祉用具購入を選択する動機づけを失って、貸与を続けようとする利用者が多くなるのではないか。

そうであれば福祉用具が選択制になった以降、福祉用具貸与単独利用者が、そのまま貸与を続けるか、購入に切り替えるのかは、利用者が担当ケアマネに信頼を寄せているのか、不満があるのかというリトマス試験紙役になるのかもしれない。

どちらにしても日ごろから利用者から信頼を寄せられているケアマネジャーであれば、福祉用具選択制で顧客が減ることを恐れる必要もないと思う。

そういう意味では、選択制に反対するより、選択制で新たに生ずる提案・合意の役割に対し、正当な対価を求める方がポジティブな動きであると言えるのではないだろうか。






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