web会議で行われた8/7の第221回社会保障審議会介護給付費分科会(※資料)は、介護保険3施設と特定施設等の議論が中心となった。
そこで行われた議論では、すべての施設で、「看取りへの対応の充実」が重要な論点として挙がっている点が注目される。
居宅サービスの論点でもこのことは取り上げられており、多死社会に突入した我が国においては、全サービスで看取り介護・ターミナルケアの実践が重要とされていることがわかり、それに関する加算報酬は今後も優遇されていくだろう。
僕は我が国で最初の、「看取り介護指針」の作成者でもあり、その指針に基づく看取り介護実践を行ってきた経験から、全国各地で数多くの看取り介護講演を行っているので、是非機会があればそうした講演を聴きに来ていただきたい。
それはともかく、今日は老健の論点が興味深かったので、そのことを取り上げて考察してみよう。
今更言うまでもなく、老健の最重要機能とは在宅復帰機能であり、この機能に関する議論が活発に行われた。
例えば、老健におけるリハビリテーションについて、老健入所直後は、集中的なリハビリテーションにより比較的大きく、ADLが改善することが示されているとして、在宅復帰に結びつく効果あるリハビリテーション実践への更なる評価が必要であることが示唆されている。
同時に、認知症リハビリテーションについては、「学習療法や記憶訓練等に比重が偏っている」と指摘され、もっと在宅復帰に結びつくための廃用予防や活動・参加につながる訓練をすべきであるとの指摘がされている。
このように老健の論点では、今まで以上に在宅復帰・在宅療養支援機能の促進に向けた報酬設定が最重要課題とされているのである。
さらに当日の議論では、「在宅復帰に向けた地域拠点としての役割、リハビリで心身機能を維持・改善する役割は引き続き重要。報酬のメリハリ付けも念頭に置きつつ、サービスを必要とする高齢者がしっかりと利用できるようにしていくことが必要」という指摘もされており、基本サービス費についても、より在宅復帰機能が高い老健の報酬が今まで以上に優遇される可能性が高まったと言える。
現在老健は、超強化型・強化型・加算型、・基本型・その他の5類型に分かれている。当然超強化型の報酬単価が一番高く、その他に向かうほど低く設定されているわけであるが、この報酬単価の傾斜配分がより強化されるのではないかと予測する。
というのも今年2月のデータでみると、老健の類型は既に超強化型、強化型、加算型の3つで全体のおよそ7割を占めるに至っているのである。基本型とその他は少数派に落ち込んでおり、この2つの類型はなくなっても良いと国は考えている節がある。
さすれば加算型以上の老健の基本報酬が上げられると仮定した場合、その財源は基本型とその他の報酬をカットして回すということもあり得るわけである。
昨年書いた、「基本型老健には厳しい制度改正になります」の中で、特養の特例入所要件の緩和と、老健の多床室室料負担が実現した場合、基本型老健に長期入所している要介護1と2の利用者の、特養への流出現象が起きて、基本型老健の空きベッドが大量発生する可能性を指摘しているが、このことと併せて考えると、基本型老健は制度開始以来最大の逆風を受けることになりかねない。
どちらにしても長期的に考えると、基本型老健はいずれ経営困難なほど報酬カットが行われ、自然消滅へのシナリオが描かれることは間違いないだろう。
よって基本型の報酬しか算定できていない老健は、一日も早く加算型報酬を算定できる体制へと移行していく必要があることを指摘しておきたい。
※別ブログ「masaの血と骨と肉」と「masaの徒然草」もあります。お暇なときに覗きに来て下さい。
北海道介護福祉道場あかい花から介護・福祉情報掲示板(表板)に入ってください。
・「介護の誇り」は、こちらから送料無料で購入できます。
・masaの看取り介護指南本「看取りを支える介護実践〜命と向き合う現場から」(2019年1/20刊行)はこちらから送料無料で購入できます。
新刊「きみの介護に根拠はあるか〜本物の科学的介護とは」(2021年10月10日発売)をAmazonから取り寄せる方は、こちらをクリックしてください。