【給与引き上げは待ったなし(その1)から続く】
人材不足が叫ばれて久しい介護業界ではあるが、その割に従業員の給与改善を含めた待遇改善の速度は遅いように思える。
公費運営が主になる介護事業であるがゆえに、介護報酬の大幅な改善がないと従業員に手当てする財源がないという声が大きいが、処遇改善加算に頼った給与改善しか行っていない事業者があることも事実だ。
そこには事業運営しかできない、経営能力のない経営者の存在があるのではないかと思う。
そんな中でSOMPOケアが10/1から、6億円を投入して国家資格などを持っていない介護職員の給与を年12万円引き上げるほか、介護福祉士とケアマネジャーもそれぞれ年6万円上げることを決めた。
同社は、2019年10月、2022年4月と2度にわたり設長や管理者、ケアコンダクター(スキルの高い介護福祉士ら)など、現場を牽引するリーダー級の介護職員の給与を改善してきたという経緯があり、今回の改善はこれらに続くものだ。
これはSOMPOケアがSOMPOホールディングス(株)という大手グループに所属し、資金力があることも影響して実施できる待遇改善なのだろうと思う。そのことについて僕のFBには、「保険販売で違法行為をして荒稼ぎをしながら、介護の給与を引き上げるという手法は、複雑なものがあります。」とコメントをつけられた方もいる。
しかし結果として、SOMPOケアに所属する従業員の待遇は段階的に引き上げが行われているのである。

他の介護事業者にとってこれは脅威になる。
従業員から見れば、同じ仕事をするならより待遇の良い職場で働きたいと思うのは人情として当然である。その中で全国に事業展開して、経営基盤も安定していると思われる大手介護事業者が、マスメディアを有効に使って従業員の待遇改善を喧伝しているのである。
そのような状況の中で、今自分が所属している職場の、すぐ近くにSOMPOケアがあり、そこで従業員を募集しているとして、自分の職場からSOMPOケアに人材が流出する恐れはないのかを考えなければならない。
世の全ての事業で人手が不足している。その中で介護事業者がくまなく人材確保できる状況にないことを考えると、自社の待遇改善の必要性を考えていかねばならないのだ。
特に非課税の社福は、課税民間営利事業者に待遇面で負けてはならないと思う。
だがSOMPOケアの待遇改善後の状況を大まかにみると、さほど他の事業者が恐れをなすほどの給与改善とも言えないような気もしないではない。
なぜなら役職ごとの年収をみると、施設長・管理者で600万円から700万円ほど、ケアコンダクターで450万円ほどの水準でしかないからだ。
僕が8年前に退職した社会福祉法人では、その当時既にその程度の給与水準に達していた。そしてなおかつ収益も挙げており、単年度で赤字決算を出したこともなかった。
SOMPOケアの改善後の待遇とは、その程度のものでしかなく、改善前の給与水準が考えられているよりも低かったのではないかと思われるのである。
同時にこの程度の給与水準は、十分他の事業者も実現して、なおかつ収益を挙げられる水準でしかないと言えるものだ。
だからこそ経営努力によって、職員の待遇を他の事業者に負けない水準に保ち、良い人材を育てて良質なサービスを提供できるようにする必要がある。
幸いなことに介護事業については、顧客はたくさんいるのである。その顧客がこぞって、サービス利用したいと思う介護事業者は、十分利益が上げられるのだ。
その為に他の事業者にない自社の魅力づくりに励まねばならない。サービスマナーの向上は、その際に欠くことができない選ばれる要素となるだろう。




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