昨日(8/3)東京・小金井市の介護付き有料老人ホーム「アプリコ武蔵小金井」で、入居者の90代の女性を暴行しけがをさせたとして、介護職員・中川忠容疑者(41歳)が逮捕された。
アプリコ武蔵小金井
※画像は事件が起きたアプリコ武蔵小金井
事件が起きたのは先月20日。中川容疑者が夜勤巡回中、失禁した女性(90代)のベッドのシーツを交換しようとしたが拒否され、激高し女性(90代)が着ていた服の襟をつかんで引き倒すなどの暴行をして、けがをさせた疑いが持たれている。 被害女性は認知症の症状がある利用者だそうである。

女性は腕を打撲するなどしていて、中川容疑者は施設側に「暴れてけがをした」と説明していたが、それは真っ赤な嘘であった。

不審に思った親族が、設置していた部屋の防犯カメラを確認したところ、中川容疑者が暴行する様子が映っていたことにより事件が発覚したそうである。

ところでこの防犯カメラは、事前に親族が部屋に設置していたもので、施設の設備ではない点が注目される。ということは親族はかねてより、施設側に何らかの問題があるとか、施設職員が虐待などの行為に及んでいるなどという疑いを持っていたのではないかと思える。そうだとしたら施設側の労務管理の在り方も問われる問題である。

虐待がネット動画で拡散される時代の介護」でも指摘しているように、簡単に動画撮影ができ、その動画がネットを通じて拡散することが当たり前になっているのだ。そしてその動画の中には、当然のことながら利用者のプライベート空間に隠しカメラを置いて撮影した画像も含まれてくる。

だからこそ、いつ誰に見られても恥ずかしくない態度で利用者対応できるように、職員を教育指導しなければならないし、なおかつ撮影された動画の一部が切り取られて配信され時に、「ひどい対応だ」と誤解されるようなことがないように、マナーに欠けるタメ口対応などを早急に止めさせなければならない。

利用者と従業員の関係性とは、顧客とサービス提供者との関係性であって、家族や親しい友人の関係性とは異なるのだから、介護という職業を通じて生活の糧を得ているプロとしての態度や対応が求められることを日ごろからきちんと教育していかないと、本件の中川容疑者の予備軍のような人間を大量発生させてしまうことになる。くれぐれもご注意いただきたい。

それにしても容疑者が口にしている犯行動機はあきれたものである・・・取り調べに対し中川容疑者は「日頃の仕事に対するストレスがあった。女性が言うことを聞かず、かっとなって暴力を振るった」と容疑を認めているという。

どんな仕事にもストレスはつきものだ。ストレスのない仕事などないと言っても良い。

対人援助という仕事に就いていながら、利用者に対する暴力という行為でうっぷん晴らしをするような人間は、もともと対人援助には向かない人間でしかない。そもそも利用者を虐待して、介護の仕事のストレスなど解消できるわけがないことは、ストレスコーピングを少しでも学んだことのある人にはわかりきったことだ。

この施設はグループ企業の一部門であるが、多角経営している母体グループ法人は、従業員教育としてストレスコーピングや自己覚知・アンガーマネジメントなどを行っていないのだろうか。行っていないとしたらリスクマネジメントに欠けた法人という誹りは免れない。

本件のような事件が起き、犯行動機が仕事のストレスだと報道されると、介護という職業がいかにもストレスフルな職業であると誤解されがちである。しかし介護の仕事が、他の仕事に比べて特別ストレスが高い職業であるという科学的データはどこにも存在しない。

精神科医療機関に入院している患者を調べても、職業上の悩みが主因で「うつ病」などを発症している人の中で、介護職の割合が突出して多いなどという事実もない。むしろ職業うつの患者の多くは、金銭ノルマを過度に掛けられた人や、上司のパワハラを受けた人であって、介護の職業が原因となっているケースは少ない。

どちらにしてもストレスを利用者虐待の理由にしているのは、卑怯な犯罪者の言い訳にしか過ぎない。こんな卑劣な犯罪者の言い分を、そのまま報道するマスコミも見識に欠けるといって過言ではない。

このような虐待事件が起こると、それが氷山の一角で、多くの介護事業者が虐待・不適切サービスという闇を抱えていると思われがちであるが、大部分の介護事業者は、虐待や不適切サービスとは無縁ンの、人の暮らしを豊かにするケアを行っているのだと声を大にして言いたい。

だがそのこと自体は何の自慢にもならず、対人援助に関わる事業を行っているのであれば、虐待とは無縁の高品質サービスを成し遂げることが、ごく当然のことであると言うべきである。
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