介護事業者のシステムエラーと、その際の確認ミスで人命が奪われるという恐ろしい事件が起こった。
大阪市生野区の特別養護老人ホーム・瑞光苑(ずいこうえん)(社会福祉法人・慶生会が経営母体)で、7/12に利用システムのトラブルが発生。復旧に伴うデータ確認作業で、同園のショートステイを利用予定だった被害者など、複数の予約情報が見落とされたという・・・。
その結果、7/15〜21までショート利用予定だった80歳代の独居男性宅に、利用開始日だった15日に、同園から迎えがなかった結果、この男性は6日後に自宅で亡くなった状態で発見されたことが分かった。
ショートステイ利用終了予定日であった21日は、男性が帰宅後、自宅でショート事業所とは別事業所のサービスを受ける予定になっていた。その為、サービスを提供するため男性宅を訪問した別事業所の職員が男性の遺体を発見したとのことである・・・。
この独居男性は要介護5のであったそうだ。さすれば身の回りのことは、すべて他者支援が必要な状況だったのだろうから、ヘルパーは毎日サービスに入っていたのではないだろうか。逆に言えば、毎日ヘルパーの訪問がない状態では、日常の暮らしが成り立たない方であったのではないのだろうか。
しかしショート利用後から終了までの間は、当然自宅でのサービスは必要ないのだから、他のサービスは計画されていなかったはずである。

ところがショートを利用していると思われてた男性は、この間、誰からの支援も受けらずに自宅という密室に放置されていたのである。
計画担当の居宅ケアマネは、まさかショート事業所が送迎することを失念して行っていないなどとは想像もつかないので、ショート計画期間中に何も連絡がないということは、無事に変調なくショート利用している証拠であると考えるのが普通だ。よって通常その間にショート事業所を訪問したり、連絡したりしないのも普通である。
つまり本件で「非」があるのは、ショート事業所のみだろう。
この方は独居という暮らし方を選んでいるのだから、意思や判断力はかなりあった方ではないのだろうか。さすれば自分を迎えに来るはずのショート事業所から誰も迎えが来ず、何の連絡もない状況の理解もあったのではないのか・・・。訪問介護の職員もショート利用期間中は訪問してこないということも理解していたのではないか。
そうであれば、その恐怖と絶望は想像に難くない。恐ろしいことである。
食事や水分を口にすることもできず、排泄物も垂れ流しの状態で、「苦しい・辛い・助けて」という声はどこにも・誰にも届くことなく、絶望と悲嘆の中で死を迎えたとしか思えない。
死因は明らかになていないが、餓死・衰弱死の可能性もある。このような悲惨な死に方がほかにあるだろうか。
この結果を単に、「システムエラーの確認ミスで申しわけない」という謝罪だけで済ませられる問題なのか。道義上の責任として、この社会福祉法人は、地域社会に対してどのような姿勢を今後示すべきなのだろうか。
当該事件に関しては、社会福祉法人の理事長の責任は当然問われるものと思われるが、そうであったとしても無残に、見捨て死させられた男性の命は戻ってこない。
その無念は察するに余りある。ただただご冥福をお祈りするしかない。合掌。
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私も昔、統括管理していた訪問介護事業所のサ責が朝の訪問漏れを起こして、「昼までの間に亡くなることだってあるんだぞ!」と叱ったことを思い出しました。とにかく、お亡くなりになられた方には本当にお気の毒としか言いようがありません。事業所だけではなく、介護システムのベンダーにも責任の一端を感じてほしいものです。
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