7/20に開催された第7回介護保険制度における福祉用具貸与・販売種目のあり方検討会に関する資料を読むとわかるように、国は福祉用具を貸与で使うか、販売で使うかを利用者が選べる選択制の導入の是非などを、改めて論点として提示している。

福祉用具の選択性とは、例えば歩行補助つえや固定用スロープなど、比較的廉価である程度中長期の利用が見られる福祉用具については、レンタルのメリット・デメリットを利用者自身が考慮・判断してレンタルを受けるか、購入するかを選ぶことができるというスタイルである。

国が福祉用具の選択制導入を議論の俎上に上げている理由ははっきりしている。選択性が導入されれば今までレンタルの対象としかされていなかった福祉用具が購入されるケースも増えることになり、給付費の削減につながるのである。なぜなら福祉用具の販売単独サービスは、ケアマネジメント(居宅介護支援費)の費用がかからないからである。

ということでこの選択制の議論は、居宅介護支援費の自己負担導入が最短でも2007年4月まで先送りされたことによって、(※介護保険制度の見直しに関する意見(12/20)で、ケアマネジメントに関する給付の在り方については、利用者やケアマネジメントに与える影響、他のサービスとの均衡等も踏まえながら、包括的に検討を行い、第 10 期計画期間の開始までの間に結論を出すことが適当であるとされたため。)それに代わる財源抑制策として、ひねり出されたという経緯がある。

特に福祉用具販売のメニューを増やせという財務省の圧力は無視できないということだろう。
福祉用具
現行ではこうした福祉用具の貸与・購入の選択はできず、レンタル用品と購入用品は完全に区別されている。そして購入できる福祉用具は、他人が使用したものを再利用することに心理的抵抗があるのもの等(便器や尿器など)13品目のみが対象となっている。

貸与品のメリットは、購入より価格が抑えられることと、状態像の変化等に応じて貸与物品を変更できる点及び定期的にレンタル業者が点検・メンテナンスをしてくれる点にあろうと思う。

一方でデメリットは、レンタルする福祉用具のほとんどは新品ではないことから、(※消毒はされており、清潔度合いに問題はなくとも)神経質で見ず知らずの他人が使ったものに抵抗感を持つ人には向いていないという点だろう。

選択制が実現すると、それらのメリット・デメリットを利用者自身が考えて選択できるようになるのだから、僕はそのことに反対する必要はないと思っている。

ところが日本福祉用具供給協会などの関係団体が、選択制導入に異論を唱えている。それらの関係者は、「販売だと利用者の状態変化に対応できない」・「身体状態に合っていないものを使い続けると悪化を招く」・「貸与でないとメンテナンスや安全性の確保が難しい」・「買い替えが必要になるケースなどでは、販売の方が利用者負担が重くなる」といった理由で、福祉用具販売の対象品目が拡大することへの懸念を述べている。

しかしそれらの主張・意見に説得力があるとは思えない。これらの主張が説得力を帯びる条件は、一定の貸与品目が、強制的に購入品目に変えられた場合のみである。

前述したように選択制は、利用者が貸与と購入それぞれのメリット・デメリットを考えたうえで、自らの意思で選ぶことができるというものだから、負担が重くなったりすることもあることを視野に入れながら、それでもなおかつ購入したいという何らかの理由があっての選択という結果になる。

利用者の意思尊重という面では、それは大いに推奨されるべきだ。

それにしても福祉用具貸与の必要性を、利用者負担減という理由で論ずることは、ある意味大きな皮肉が込められているように思う。

前述したように今回の選択制議論は、居宅介護支援費の自己負担導入が先送りされた代替案ともいえるわけである。しかし介護保険制度の見直しに関する意見(12/20)を読むと、2007年4月からは自己負担購入を認めるという手形を厚労省が切っているように思えてならない。

すると2007年以降は、自己負担数百円の杖を借りるためだけに居宅介護支援を受けている人は、別に居宅サービス計画書作成業務等のために千円以上の自己負担が発生することになるかもしれないのである。

その可能性は極めて高まっていると思えるが、仮に居宅介護支援費の自己負担導入が実現された後にも、福祉用具単品貸与はあり得るのだろうか・・・。福祉用具貸与以外のサービスが必要ない人であれば、毎月、居宅介護支援費の自己負担が生ずる福祉用具貸与なかやめて、全額自己負担でもよいから同じ物品を購入しようと考える人が増えるのではないか。

さすれば居宅介護支援費の自己負担導入とは、居宅介護支援事業所よりも福祉用具貸与事業所に大きな影響を与える問題になってくるように思えてならない。

福祉用具貸与事業所関係者は、このことに気が付いているのだろうか・・・。
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