先日とある法人の管理職・リーダー向けオンライン講演を行った。

そこでは管理職・リーダーの方々が部下に直接伝えなければならない、『介護事業に携わる者の使命と責任』とは何かについて、僕の実践をもとに話させていただいた。

つまりそこで語ったこととは、実際に僕が行ってきたこと、現在も僕の後輩が行っていることであり、フィクションは何一つ入り込んでいないのである。

そうした実践論を話した後に、当日は質疑応答の時間をとっていなかったため、後日事務局担当者より受講者の質問をまとめたメールが届き、それに対して回答した。

その質問内容は、このブログ読者の皆様も興味がわく内容ではないかと思ったので、今日は質疑応答形式にしてここで紹介しようと思う。

ということで下記を参照願いたい。

質問 伝えるスキルについて、どのように鍛えられたのか教えていただきたいです。(例えば参考の書籍など)
回答:特に鍛えたつもりはありません。自然と備わったということになるでしょうか。一つ言えることは、良い作家は良い読者からしか生まれません。そういう意味で、伝え方は「伝え方」を学んでもうまくなりません。よき聞き手となり、どのような語り口がわかりやすいかを、聞き手の立場で考えることが大事でしょう。同時に優れた伝達文を読む習慣を持つことが大事です。新聞は真実を伝えませんが、事実を解かりやすく伝える文章なので、毎日新聞の報道文を読む習慣を持つことで、伝え方も上達すると思います。

質問◆Ю萓犬了楡澆任詫諭垢平Πの方が、現場で工夫をされている。職員の方に対してどのような取り組みや研修をされておられるか知りたいです。
回答:僕が総合施設長として、全職員に伝えたい事柄については、僕自身が講師役になって、全職員が受講できるように、複数回同じ講演を行って周知に努めていました。また外部研修も、単に伝達研修を行うのではなく、外部研修参加者は、内部研修講師として、研修を受けた同じテーマで法人内で講義を行う形式で伝達していました。

質問:虐待でよくグレーゾーンという言葉を耳にすることがあるのですが、そもそも虐待行為にグレーゾーンはないと先生はおっしゃっていますが。言葉遣いであったり、そのあたりを詳しくお聞かせ願いたいと思います。
回答:例えばタメ口とは、年下の者が年長者に対等の話し方をすることを意味し、親しみを表現する言葉遣いではなく、顧客に対しては、「失礼な言葉遣い」です。そうした言葉遣いを放置して従業員が顧客に接していた場合、顧客側から、「失礼な言葉遣いをされて傷ついた」と言われてしまえば、それは心意的虐待行為そのものです。言い訳がききません。家族そのものではない介護サービス従事者が、家族と同様のタメ口で利用者に接することで失礼と思われてしまえば、それだけで過失責任は生ずるのです。ここにグレーゾーンは存在しません。そういう意味で相手がそこまで傷つかないとしても、傷つく可能性のある言葉遣いをしているというだけで虐待なのであり、ここは真っ黒です。

また悪気がないから虐待・不適切行為に当たらないということも間違った考えです。虐待当事者に悪気がなくとも、行っている行為が不適切だと認められた場合、その結果利用者が精神的あるいは身体的に傷を負った責任は問われることになるのです。だからこそ介護サービスの場では、顧客である利用者に対して、顧客対応としてふさわしい対応ができているかどうかが問題となり、必要最低限の顧客対応が取れるようにしておくことが最大のリスクマネージメントなのです。

質問ぁГ翰用者を中心として周りにいる支援者が一歩下がって対等に話し合う為の連携の取り方のポイントはありますか。また、職種と連携をとる為のポイントについても教えていただきたいです。
回答:利用者ではなく顧客意識を忘れずに、私たちはお客様あっての職業に就いており、それがたまたま対人援助という人の暮らしに深く介入させていただく職業であると意識することが大事です。そして利用者本位を建前ではなく本音にするプロが対人援助職なのだと、繰り返し伝えなければなりません。ケアプランはその宣言書です。

またや対人援助における多職種連携の基盤は、他職種の理解というより先に、自分以外の他人を理解しようとする姿勢が求められることを忘れてはなりません。他のメンバーの役割りや思いを理解しようとしない限り、チームのパフォーマンスは上がらないし、課題解決には結びつきません。それは自分自身が使命を果たせないという意味なのだから、チームケアが不可欠な領域において、チームメンバーを協力者として理解する態度がない限り、プロとしての責任は果たせなくなると理解すべきです。そして多職種連携とは、人に頼る前にチーム内で自分の役割を叱り果たすことだということを忘れないことが大事です。その役割を果たしたうえで、自分の力に余るところや専門外の事柄について、他職種にコンサルテーションを求めたり、力添えをしてもらうという意識が必要になります。

質問ァ毎日風呂が増える事で残業や、光熱水費等のコストは問題にならなく実施出来たのか。
釣りのレクリエーションで休みの日に出て来た職員の対応は時間外ですか。そういったものはコスト度返しで実施していくべきなのか。サービスの質を上げる事とコストについて管理的な立場としてどういう考え方をすべきか教えていただきたい。
入浴回数を変更したり、長時間の外出支援を実施するにあたり職員の反発はありましたか?その後全職員からの理解は得られたと感じますでしょうか。

回答:僕の法人は源泉かけ流しの天然温泉が売りの一つでしたので、毎日入浴支援していない時期も、お風呂は24時間365日使える状態でした。また入浴設備内のシャワーの源泉は、水道水ではなく飲料につかえる井戸水(自家水)でしたので、この面でコスト問題はあまり問題となりませんでした。勿論、入浴人数が増えることで電気代等はアップしますが、それは介護の品質アップと地域の高評価にもつながることであって、必要なコストと考えてよいと思います。

入浴回数の変更は職員から大反発がありました。その中には反対のための反対意見も少なくありませんでした。しかしそれは法人として必要としていることを説明し、それに納得できない方は辞めていただいて結構という態度で、トップダウン方式で実施しました。その後、反対意見を強く口にしていた職員も、地元の老施協の研究大会で、自分の施設は毎日利用者が入浴可能な施設であることを自慢するかのような研究発表をしていましたよ。

質問Α理念やビジョンに沿った、達成基準が明確な目標設定の方法について。
「施設の適切な目標」を文章化するための、具体的なプロセスや文章、数値等など参考にさせていただきたいです。

回答:自分の言葉を持つことが大事です。そのうえでやれること、できることを1段階ずつ踏まえて目標設定することが大事でしょう。理想とは達成可能な目標であり、今できなくとも、段階を踏んで絶対に達成するという強い意思と信念をもって、取り組むことが大事で、その取り組みを具体化する言葉が目標になります。例えば、毎日入浴支援ができた後には、夜間入浴も実施しましたが、まず週に何回夜間入浴の取り組みができて、その際に何人入浴支援ができるのかという数値も、いきなり希望者数全員ではなく、週に1回一人から始めてよいわけです。その取り組み過程で、工夫を凝らして回数や人数が増えていくことを目指せばよいだけの話です。

質問АЬ鐚韻世間の非常識となってしまう、そもそもなぜ介護従事者がそのような心理になる傾向があるのでしょうか。
回答:講義で話したように、神経はどんどん鈍い方向に流されていくので、小さな感覚麻痺がさらなる感覚麻痺を生み、小さな不適切ケアが大きな虐待に発展します。そこを防ぐために小さなほころびを繕う「介護サービスの割れ窓理論」が求められるのです。
特に介護事業者は、暮らしの支援をする中で、利用者の陰部に触れたり、人の一番恥ずかしい部分に介入する仕事ですから、それが当たり前にできるだけで、人前に陰部をさらけ出してケアを受けることも当たり前なのだという感覚麻痺にも陥る仕事であるという理解が大切です。でも本当は誰しもが、人前に自分の陰部をさらしたくはないし、排泄ケアなんて受けたくないのです。それを忘れないことが大事です。

質問─Щ愼蛙Δ箸靴董⊆分の価値観や考え方が強く指導や助言の受け入れが難しい職員に対してのかかわり方を教えていただきたいです。
回答:教育指導法としては、部下に対し説得するのではなく、納得できるように伝えること、認めながら逃げ道も作って、アフターフォローも欠かさないなどの指導法が求められます。

しかし法人の方針としてやるべきことを伝えているにもかかわらず、それが受け入れ難く実行できない方については、法人の方針を相いれないということで、命令違反の常習者となるという意味で、法人にふさわしくない人材として辞めていただくなどの厳しい態度も必要になります。

質問:施設の方針等について、全職員が理解して同一方向の介護意識を持っているような印象を受けたが、そこに至るまでの紆余曲折な意識改革や思案等があれば参考にしたい。
回答:一つの方針を打ち出した際に、その瞬間から全員が同じ方向を向いて、一致協力するなんてことはあり得ません。必ず抵抗勢力や反対勢力が跳梁跋扈すると想定しておく必要があります。その反対意見に耳を傾けながらも、必要なこと・すべきことを丁寧に、かつ根気よく経営者自身が伝えます。
その方針どうしても従えない人は、他の職場を探していただきます。それくらいの覚悟をもって、介護サービスの高品質化に取り組んできました。

質問:介護人財難でいろいろな人が入職し質の低下を感じています。職業人として、専門職としての意識付けの難しさをについてお聞きしたいです。
回答:採用段階で人手が足りないから、スキルに問題がある人であっても誰でも採用しては質の低下は否めません。人が足りなければ、事業の一部を一時的に休止してでも、良い人材をより求めて、高品質サービスができる介護事業者で働きたいという動機づけを持った人を探すことが大事です。7/19付で更新している、僕のブログ「他と同じ人材対策では効果は出ません。」を参照ください。

以上、参考になれば幸いです。
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