最低限こうした方法で介護サービスを提供することで、全国共通してある程度の質を担保したサービス提供が可能となる・・・このような介護の方法論が科学的介護だろう。

それは最も効率的に、利用者のQOLの向上や自立支援にも結び付ける方法論として実現が求められている。

その為に科学的介護情報システムLIFE)は、全国から情報を集めそれを解析したフィードバックを行い、各介護事業者はフィードバックをPDCA活用して、LIFEの解析結果が正しいエビデンスに結びついているかを確認する作業が求められてくる。

しかしこうしたLIFEシステムの運用に関する介護事業者の理解の薄さに今更ながら驚かされる。

例えば科学的介護推進新体制加算のフィードバック要件の理解のなさなどは絶望的である。

6月30日から事業所フィードバックと利用者フィードバックがダウンロードできるようになったために、これをPDCA活用していく必要があると思われる。

だがフィードバック内容を見ると、これが本当に科学的エビデンスに結びつくのか大いに疑問を持たざるを得ないと指摘したところ、表掲示板の関連スレッドでは、「重要なのはPDCAなのでフィードバック票にこだわる必要がない」などと指摘されている。

しかしその意見はおかしい。PDCA活用するものはフィードバックそのものなのである。しかし今回新たにDLできるようになった利用者フィードバックは、ADL数値等の変化を示すものでしかなく、その変化がやむを得ない自然廃用なのか、別の要因に起因する変化なのか、何らかのアプローチで改善可能性が生ずるものなのかなどに言及せず、原因と結果の因果関係につながるデータ解析結果が全く存在していないのである。

介護の科学が生み出せるという前提条件は、原因と結果の因果関係を導き出して、それを根拠にして介護実践ができるということだ。

LIFEという介護データベースは、全国の介護事業者から事業所情報と利用者情報を収集して、それを解析することで、自立支援やQOL向上といった結果に因果関係があるものを示し、具体的方法論を介護事業者が利用者の個別計画に反映できるようにフィードバックしなければならない。

しかし今回のフィードバックではその要素は皆無で、集めた情報の統計を取っているだけで、その分析や、そこからの根拠の抽出は介護現場に丸投げしているのである。それなら今までLIFEの介入なしで各事業者が勝手にケアの方法論を決めてきたことと何ら変わりない。

それはLIFEというビックデータを収集しているシステムが、単に情報の集積所になっているにすぎず、まったく分析の役割を果たしていないという意味だ。巨額の国費をかけて、介護データのゴミ処分場を創っているのかと言いたくなる。

このことも大いに問題であるが、仮にフィードバック内容が改善されたとしても、科学的介護が実現するのかは大いに怪しい。
闇に霞む
というのもそもそもケアプランに沿ったサービスが行われていない介護事業者が少なからず存在しているからだからだ。介護職員がケアプランを読んでいない・・・読んでいてもその内容を理解していないか覚えていない・・・そもそもケアプランはケアマネが必要としているだけで、介護実務に携わる職員にとっては、必要のないものと思われている。・・・そんな実態があるのだ。

これではフィードバックをPDCA活用しても意味がない・・・というかPDCAサイクル活用できない。

なぜならPDCAサイクル活用とは、プランに沿ったケアサービスが行われていることが前提で、LIFEのフィードバックをプラン再作成時に新しい計画に反映して、それまでのケアサービスのやり方を変えたり、グレードアップしたりするものだからだ。それなのにプランに沿ったケアが実施されておらねば、いくらプランを再作成しても、ケアサービスの中身は変わらないということになってしまう。

そこに科学は生まれない。科学的介護も概念だけ存在し、実態はどこにも存在しないという事態に陥りかねないことが危惧される。

ということで、介護事業の実態は、科学の前に常識を創り出さねばならないレベルにあると言ってよい。困ったことである。
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