科学的介護情報システム(LIFE)が更新され、6/30〜事業所フィードバックと利用者フィードバックがダウンロードできるようになった。
しかしその内容があまりにもお粗末で、PDCA活用するには無理があることを、「科学的介護手法とは昭和レトロなのか?」の中で論評した。
同時に表の掲示板にもスレッドを建てて、広く意見を求めた。
そこに意見を書き込んでくれた方がいることはありがたいが、その意見の内容を読んで心配になる部分もあった。それはLIFEのフィードバックのPDCA活用の意味と目的が正しく理解されていないのではないかということだ。
というのも、「重要なのはPDCAなのでフィードバック票にこだわる必要がない」というコメントが書き込まれているからだ。
これが、「フィードバック票の形式にこだわる必要はない」という意味なら問題ないが、どうもそうではないと思えた。
なぜなら僕はこのスレッドに情報を求めるに際して、「6月30日からダウンロードできるようになったLIFEの事業所フィードバックと利用者フィードバック・・・これって本当にPDCA活用するに値する内容でしょうか?」と問いかけているからだ。
今行われているフィードバック内容では、PDCA活用なんてできないのではないかと問いかけているのに対し、「その内容にこだわらずにPDCA活用すればよい」という意味のコメントがされていることになる。
その考え方は間違っていると思うのだ。
なぜなら6/30〜DLできるようになった利用者フィードバックは、半年前のADLとの比較数値でしかない。単にその数値が変わっていないのか、上がったのか、下がったのかという内容でしかなく、仮にADL数値が下がっているとしたら、そうなった要因を分析し、ADLの低下をスローダウンさせるとか、低下しないよう維持させるとか、向上させるとかいう方法論に結びつく情報が何も示されていない。
それはおかしいと思う。フィードバック内容には徹底的にこだわるべきである。
なぜならLIFEがフィードバックする情報とは、日本全国の介護事業者から送られてきた情報を解析して、より良い結果(※自立支援につながっているとか、QOLの向上に結びついているという結果)が得られるような方法につながるものであるはずだからである。
それが証拠に2020/12/18の介護給付費分科会資料で、「科学的介護の目指す姿(将来像)」として国が示したフィードバックのPDCA活用図は以下の通りである。
ここでは通所リハビリで個別リハビリテーションが行われてる利用者について、ADLの改善効果が乏しく歩行距離が改善していない結果と共に、その原因としてBMIが低い状態(低体重)で経過していることを挙げ、「リハビリテーションの提供に合わせて、間食など食事提供料の増量を推奨」という具体的方法論をフィードバックしているのだ。
このようにPDCA活用されるフィードバック内容とは、単にADL等の数値変化を示すものではないのである。本来はLIFEがデータ解析して導き出した結果につながる因果関係のある原因を、ADL等の改善につながる方法論のヒントとして示すものだ。
それがなければ数値改善の科学など生まれない。科学的介護の実現などできるわけがないのである。
そうであるにも関わらず、こうしたフィードバックができていない事業所フィードバックと利用者フィードバックをも、その内容にこだわらずにPDCAサイクル活用すべきというのは乱暴すぎる。
そうした意見を述べる人は、モニタリング内容を反映したプランの再作成業務を行ったこともなく、ケアプランに沿った介護の実践状況を把握したことのない人ではないかと疑いを持たざるを得ない。
要するに机上の空論でしかない。
今回新たにDLできるようになった利用者フィードバックは、ADL数値等の変化を示すものでしかなく、その変化がやむを得ない自然廃用なのか、別の要因にも続く変化であり何らかのアプローチで改善可能性が生ずるものなのかにも言及せず、科学が全く存在していないのである。
そうであるがゆえに、ケアプラン作成実務や介護実務に携わっている関係者であるなら、現在行われている事業所フィードバックと利用者フィードバックは、PDCA活用できない代物であり、科学的介護の実現には何の役にも立たないものであることを、声を高くして訴えなければならない。
こんなアリバイ作りにしかならないフィードバックしかできないシステムに、いったいいくら公費を垂れ流しているんだと批判しなければならない。
それが求められるソーシャルアクションである。
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