生産年齢人口が減少し続け、その解決策が見いだせない我が国では、全産業において深刻な人材不足が経営危機に直結していく。

人の暮らしを人の手によって支える介護事業では、この状況はより深刻な事態を生み出すことになる。

支え手がいなくなることで事業経営が困難になるだけではなく、そこで介護難民が生まれ、悲惨な暮らしに耐えながら、誰からも手を差し伸べられずに野垂れ死にする人が増えていくからである。

それは国民の福祉の低下そのものであり、より深く広い闇が社会全体を覆っていくことに他ならない。そうなればもはや福祉国家という言葉は死語に近いと言ってよい。

そうならないように国は重い腰を上げて、介護分野で外国人材の就労しやすい対策などをとってはいるが、それも焼け石に水の感があり、国内人材の枯渇の手当には程遠い。しかも円安や物価高なども影響して、外国人材は他国へ流れつつあり、少ない外国人材の取り合いという状況も生まれている。

どちらにしても介護人材不足は日ごと(※年単位・月単位ではない)に深刻化しているのである。

これに対して国が行っていることは、制度改正や報酬・基準改定等で人員基準をできるだけ緩和して、人が対応しなくてよい部分はテクノロジー対応に代えていくというものでしかなく、効果は極めて限定的なものでしかない。

なぜなら介護労働の大部分は、実際には人の手によらざるを得ないことに変化はないからだ。そして介護ロボットを言われるものが人にとって替われる部分が、今後劇的に増えない限りこの状況は変わらないのである。

しかしいくらテクノロジーが進化・発達しても、人に代わるロボットができる可能性は低い。力をかける動作と巧緻性の必要な動作を、絶妙の加減でつなぐことができる人の動作にかなうロボットが生まれるとは思えないのである。

人に替わる介護ロボットが現に存在するというのは事実ではないが、将来的にそうした便利な機器が誕生するということも幻想と言えるのかもしれない。
朝日を浴びるひまわり
よって介護事業者は独自の人材マネジメントで人材不足を乗り切っていくしかない。しかしどのような人材マネジメントが必要なのだろう。

勿論、思い切った給与改善が求められるし、そのための介護報酬のアップが求められる。しかし介護業界全体の対策だけに頼っていてはどうしようもない。地域の介護人材の必要絶対数を確保することは不可能であるからだ。

地域の中で、全介護事業者があまねく人材を十分確保して事業継続できることはあり得ない。人材確保競争に勝利した事業者だけが生き残るのである。そのため少なくなる介護人材から選ばれる要素は何かについて考えを及ばせなければならない。

その要素の一つがサービスマナーが充実した職場環境づくりである。

僕が介護福祉士養成校で育てた卒業生のうち、就職先から短期間にバーンアウトしてしまう卒業生は、「職員が利用者をまるで物のように扱っている」・「聴くに堪えないひどい言葉で、利用者を蔑んでいる」といって退職している。

こんなふうにして、将来人材人財となる素質を持つ若者が、先輩職員の乱暴な介護の仕方やタメ口にストレスを感じて職場を辞めているという実態がある。

さらに卒業生以外であっても、優れた人材であるほど上司や同僚の、マナーのない言葉遣いにストレスを感じてるのである。

そういう人たちは、丁寧な対応ができる職場で働きたいという動機づけを持っている。

だからこそ僕は、そういう人が自然と集まり定着する職場づくりを目指そうと考えた。その為に僕が管理していた社福では、サービスマナーを徹底して、マナーのない利用者対応しかできない人は排除して、マナーをもって対応できる人をリーダーに就けて教育役を任せた。

マナー意識を持てない職員を排除する過程で、一時的に職員数が減る時期はあっても、マナー意識のある職場で働きたいという動機づけを持つ職員が集まってくる過程で、その問題は自然と解決し、マナー意識を徹底することで職員が辞めない、定着率の高い職場となって、人材確保に日々汲々とするようなこともなくなった。

某介護事業者の指導的立場にいる人は、『丁寧語を使って会話するのは良いが、それでは利用者に対して親密になれない。普通に会話した方が良い。』として、職員にタメ口対応を敷いているような現状もある。

こうした民度が低く、コミュニケーションスキルが低い職場は、人材の草刈り場でもある。そうした職場でも志を高くもって、利用者対応をもっと丁寧に行いたいという動機づけを持った人材はいるからだ。そういう人たちを見つけ、声を掛けて働いてもらえるような職場づくりをしていけば、自然と人材不足問題は解消するだろう。

なぜなら介護業界全体では、未だにサービスマナー意識が浸透していないと言ってよいからだ。

ここの部分に着目して、サービスマナー意識のない職場と差別化を図るだけで、有能で志の高い介護人材は確保できるのだ。現に僕が現在、コンサルタントとしてアドバイスしている介護事業者でも、僕が社福で行ったのと同じ方法で、人材を増やし定着率が向上している。

こうした現状把握と対策に遅れをとって、事業廃止に至らななければよいのだが・・・。

どちらにしても人材確保に困っている介護事業経営者は、サービスマナーを重視した新たな経営視点を持つように発想転換が必要であることを理解してほしい。
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