今年5/9、埼玉県飯能市の特養で、入居している90歳の男性の背中を車いすごと蹴ったとして40代の職員が暴行の疑いで逮捕された事件・・・男性入所者はその後、搬送先の医療機関で内臓破裂で死亡しており、本件は傷害致死事件となったわけである。

この事件報道に触れて、よくこんな非道なことを昼日中の職場でできるものだと唖然とした。同時になぜこんな卑劣な行為が、利用者に対して行えるのだろうと憤りを感じた。

そもそも48歳の元施設職員の男が口にしている犯行動機が理解できない。

被告は、「忙しいときにいろいろ頼まれて腹が立った」と供述しているそうである。しかし介護職員は利用者からものを頼まれてなんぼの商売である。

僕自身は人からものを頼まれることは嬉しく感ずることはあっても、煩わしく思ったことはない。特養の生活指導員として就業し始めた当時、経験もなく知識も足りない僕に、僕よりずっと年上の利用者の方々が物を頼んだり尋ねたりしてくれることが嬉しかった。

それに応えようと知らないことは調べたし、できないことは他の職員に手伝ってもらいながら、できるだけ希望に沿うように努力した。

物を頼まれる=信頼されているという意味だと僕は思うのだ。その期待に応えることが対人援助という職業を選んだ僕の生きがいやモチベーションにも通ずるのである。

そもそも利用者からものを頼まれて、いちいち腹を立てていては介護の仕事なんて成り立たない。ものを頼まれることがストレスならば、人と向き合って行う職業は不向きである。そういう人は、人に向かい合わずに黙々と機械的作業に終始できる仕事に就くしかない。

そういう意味では、この被告は選ぶ職業を間違えてしまたのだろうか・・・。しかし職場内のこの被告への評判は悪いものではなかったようだ。

被告はこの施設に1年ほど勤務し、勤務態度は良好という評価であり、上司からも期待されていたとの報道がされている。

某報道機関のインタビューに答えてる他の施設職員によると、被告は「寡黙だが淡々と業務をこなしていた」という。「過去にトラブルになったこともない。」との報道もされている。
心の闇
さすれば事件の際に魔がさしたというのだろうか・・・。しかしというのには、あまりにも酷い行為である。

犯行は5月9日13:50分頃、2階の食堂で行われている。つまり被害者のほかにも多くの利用者がいたであろう時刻と場所であり、他者に見られることも構わずに行われていることになる。そのような被告が、果たしてその時以外は利用者に真摯に接することができていたのであろうか。

もしかしたら他の職員が見ていない場所では、とても人に見せられない態度で利用者対応をしていたのかもしれない。そんなことを疑いたくなるほどひどい犯行である。

それにしても、内臓が破裂するほどの強さで車いすの背もたれを蹴るほどの怒りの感情・・・被害者は、お身体が不自由な要介護の方でありお客様である。そういう方に対して、単にものを頼まれただけでそのような行為に至るほどの怒りの感情が噴出するだろうか・・・。ここは今もって理解不能だ。

この事件から教訓を得るものがあるとすれば、従業員全てが自己覚知を得る機会を常に意識して作る必要があるということだろう。

介護従事者は自分の感情を自覚し、自分の感情をコントロールして援助する必要があることを忘れないでほしい。仮に利用者が負の感情を自分に抜つけたとしても、その感情に引きずられて冷静な判断力を失わないように訓練する必要がある。

その時に必要となるのが、「自己覚知」であることは、このブログで何度も指摘している。自分が今、どのような行動をとり、どのように感じているかを客観的に意識することが大事なのだ。

つまり自己覚知とは自分をあるがままに受け入れること。そしてその感情をコントロールすることであり、自己覚知のない人は、自分の怒りが深刻な問題にならないように上手く制御し管理することは不可能であることを理解すべきだ。

アンガーマネジメントをいくら学んでも、「自己覚知」のない状態のテクニックは付け焼刃でしかない。いざという時に使い物にならないのである。

だからこそ日常的に職員教育の場で、「自己覚知とは何か・なぜそれが必要か・どのようにしたら自己覚知につながるのか・自己覚知を常に意識できる研修スタイルはどうあるべきか」についてしっかり考えてほしい。

このあたりは希望に応じて、僕の講演内容に取り入れて話をしているので、是非講演希望の連絡を頂ければお手伝いしたいと思う。

今日のブログで論じた事件の現場でも、「自己覚知」について、もっと真剣に学び取る場があれば、状況は変わっていたのではないかと考えるのである。
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