2024年度からの介護保険制度改正に関しては、昨年末に、「介護保険制度の見直しに関する意見」がまとめられている。
この中で保険料負担に関連して、『低所得者に配慮しつつ、利用者負担は原則2割負担とし、3割負担の対象も拡大すべき』として、次期改正で「現役並み所得」、「一定以上所得」の判断基準を変更する必要があるとしている。(※要するに基準所得の引き下げを行って、より多くの利用者負担を求めるという意味)
国は次期改正で介護保険料負担について、後期高齢者医療制度並みに所得上位 30%の被保険者の負担割合を2割としたいことは間違いのないところである。
しかし昨年末の意見書では、その方針を明確にすることはできなかった。物価高が国民の懐具合を直撃し、生活苦という状況も生ずる中で、更なる国民負担を求めることは政権基盤を揺るがす問題になりかねないという声が、政権与党の中で高まったためである。
ただし、2割負担層の拡大は、制度を持続させるうえで必要不可欠という考え方は維持されており、今年の夏ごろまでにその方針を示す予定であった。
何故その時期かということは、夏(6月末)までには、統一地方選挙が終わり、しばらく国政選挙がない時期であり、毎年その時期に内閣の骨太方針(経済財政運営と改革の基本方針)が示される時期であり、そこで2割負担層の拡大方針が示される予定であった。

しかしその骨太方針2023でも、「保険料の上昇を抑えるため利用者負担について検討を行い、年末までに結論を得る」というふうに決定時期が先送りされている。
次期制度改正の中で最重要課題と位置付けられている問題が、昨年末に続き、骨太方針決定過程でも先送りされるのは極めて異例な事態である。
おそらくここには内閣支持率の低下を懸念する意図が働いているのだろう。
広島サミット後に一時的に内閣支持率が上昇したにもかかわらず、直近の選挙情勢が予想以上に悪かったうえ、少子化対策を打ち出したものの、その直後の世論調査では支持率の下落傾向が続いており、この時期にさらに国民の痛みにつながる介護保険料2割負担層の拡大方針を示すことはタイミングが最悪と判断されたのだろう。
しかしこの再先送りという異例の事態は、2割以上の保険料負担層の拡大をぎりぎりまで検討して、できる限り次期制度改正時に実現するという国の強い意思の現れとも言えなくはない。
将来的に介護保険料の利用者負担は、2割負担をスタンダードにして、現役並み所得者の3割負担層の所得基準も引き下げて、3割負担者の数も増やしていくことが国の方針だ。
当然のことながら1割負担はいずれなくしていくのが既定路線である。原則2割負担とした際に、既に1割負担とされていた人は、経過措置でそのまま1割負担とされるが、同じ時期に被保険者となった人については、2割負担から始まるということになるのである。
このことは覚悟しておかねばならないことであるが、同時に利用者負担上限が3割にとどまり続けるとは限らないことも頭の隅に入れておかねばならない。制度維持のために保険料の定率負担はどこまでが限度なのかについても、今後議論されていくことになる可能性が高い。
その際にきちんと国民発・現場発の意見を発信できる準備も進めなければならない。
どちらにしても今年の年末は、来年度の介護報酬の改定率がどうなるのかに加え、サービス利用の際の2割負担者の拡大が実現するのかどうかについても注目していかねばならない。
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