全国社会福祉協議会が運営する「中央福祉人材センター」の調査結果によると、介護支援専門員の有効求人倍率は昨年12月の時点で4.04倍となっている。

これは5月30日に厚労省が公表した全産業の有効求人倍率の1.32倍よりかなり高い倍率といえる。

このように介護支援専門員も介護職員と同様、人材難となっている実態が数字で示されたわけである。

これを受けて様々なところから、「ケアマネ試験の受験資格緩和」を求める声が強くなっている。

そこで叫ばれている、「受験資格緩和」とは、2018年に行われたケアマネ試験の受験資格が厳格化によって、受験資格から外された要件を復活させて、元に戻せというものである。

受験資格の厳格化の時期からケアマネ受験者数が大幅に減ったことから、厳格化前に戻すことで、受験者数が増え、そのことによってケアマネ実務に就こうとする人も増えると考えての要望だと思う。

しかし2018年に受験資格を失ったのは法定資格のない、「実務経験のある介護福祉士以外の介護職員」だけである。

この除外資格に該当する人が受験しなくなったことによって、ケアマネ受験者数が大幅に減少し、ケアマネの人材不足が助長されたということではないと思う。

受験資格の厳格化も受験者減の要因の一部にはなったとは思うが、それより大きな理由が別にあるのだ。
円形の棚田
ちょうどそのころから度重なる介護職員処遇改善加算の増額で、介護職員の給与改善が実感とされてきたのである。

特に夜勤を行う介護職員の場合は、夜勤手当を含めると、同じ法人内の同経験の介護支援専門員と比較した場合、介護職員の方が手取り給与額が高いという逆転現象が見られてきた。

そのため将来的に見ても、処遇改善は介護職員を中心に行われることが確実だと考える人が増えたのである・・・つまり介護支援専門員より介護職員の方が将来性があると考えて、わざわざ勉強して試験を受けてまでケアマネ資格を取る必要はないと考える介護職員が多くなっているのである。

現にその時期から、介護支援専門員実務に就いていた介護福祉士等が、処遇改善加算の配分が得られる介護職員に配置転換を希望する人が増えてきている。この実情を理解する必要がある。

つまり介護支援専門員の受験資格を、厳格化前の状態に戻したからと言って、受験者数が大幅に増えて、ケアマネ不足が解消するなんてことはないのだ。

受験資格をどういじろうとも、現在ある3種類処遇改善加算がすべて、居宅ケアマネを蚊帳の外に置くような状況を改善しなければ、介護支援専門員の資格を得て実務に就こうとする人は増えない。

よって本当にケアマネの成り手を増やそうとするのであれば、介護支援専門員の処遇改善がなにより必要だ。次の報酬改定では、なんとしてでも介護支援専門員の処遇改善加算を実現せねばならないのである。

そもそも受験資格を厳格化前に戻し、「実務経験のある介護福祉士以外の介護職員」を受験資格として復活させた場合に、何が起きるのかを考えねばならない。

それらの人が介護支援専門員となったときに、その分だけ介護職員の数は減るのである・・・それでよいのかということを真剣に考えているのだろうか。

現状では介護支援専門員より介護職員のほうが不足しているのだ。それによって利用申し込みを断わざるを得ない介護事業も多いのである。

そのような状況で、経験が長いというだけで介護職員に試験を受けさせてケアマネにしてよいのかを考えてほしい。そして法定資格を持たない介護職員は、ソーシャルワークを専門的に学ぶということをしていない人たちであることも同時に考慮してほしい。

それらの人たちは、介護職員として頑張ってもらえばよいのである。

ケアマネの受験資格を見直すならば、長すぎる実務経験5年という期間を見直すべきである。

ケアマネ受験になぜ実務経験は5年も必要なのか(下)」で指摘しているように、ソーシャルワークの専門知識を持つ若い人たちが、実務経験がないとして介護支援専門員実務研修受講試験を受けられないことで、社会福祉士などの資格によって就ける業務を担っている。

しかしそこで5年働けば、その部署では頼りになる専門家となっており、今更介護支援専門員の資格を取って転職なり、部署変更しようとする動機づけを持つ人は少なくなるのである。

そういう人たちが、大学卒業前にケアマネ試験を受けることができるようになれば、専門知識を大学で社会福祉援助技術を学び、社会福祉士の資格を得た人が受験できるようにすれば、社会福祉援技術(ソーシャルワーク)の専門知識を持った受験者は増えるし、新卒でケアマネジャーとして配置できれば、その人たちがケアマネとしてキャリアを積んで、ケアマネジメントの質も向上していくのである。

本当に求められるケアマネ受験資格の見直しとは、こうした形でソーシャルワークの専門知識を持った人が、ケアマネジャーとして活躍できる方向性ではないかと思う。

介護支援専門員の確保のために、介護職員が今以上に減っていく方策など、誰からも求められない愚策である。それは日本の介護の闇を深めるだけの愚の骨頂ともいえる。
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