介護事業において人が育たない一番の理由は、人を育てる才能と介護実務の才能を同じだと考えてしまう傾向にあるからではないかと思っている。
介護実務に長けている人が、自分の知識や技術を後進にうまく伝えられるとは限らないのである。
逆に言うと、介護実務においては経験の長い人に劣る部分はあっても、自分が劣っている部分を補ってなおかつ余りあるほどの知識や技術を後進に伝えれられる才能を持つ人はいるのだ。
ここの見極めをしっかりと行い、教育役のリーダーとなる人は何より人に教えるというスキルを持つ人材であるとして、そうした人材を見つけ、しかるべき職務に就かせるという考え方が必要だ。
一方で、人に教えることには不向きであっても、介護実務には長けている人については、教育役という重荷を担わすことなく、実務に専念できるようにすることで、事業者にとって貴重な人財となり得る。
どちらも介護事業者にとっては貴重な人財なのである。だからこそどちらの才能があるのかを見極めて、それぞれの才能を伸ばしたり、それぞれの才能を発揮できる場を与えることが、人が育つ職場づくりの条件に繋がっていくのである。
この部分こそ適材適所の考え方が必要とされるところだ。
そういう意味では、一定年数介護実務を経験して仕事がこなせるようになった職員を、すべて教育役のリーダーとみなして、新人教育に当たらせている介護事業者で、人材が育つのは偶然でしかないといって過言ではない。
そうした事実は歴史が証明してる。
誰もが知るナイチンゲールは、「看護覚え書き」という現代看護学としても通用する看護の教本を書いて、後進育成に功績を挙げた偉人である。
彼女は、「ナイチンゲール看護団」を組織し、クリミア戦争に従軍して活躍し献身的な看護活動に従事したことから、「クリミアの天使」・「ランプの貴婦人」と称えられもしたが、彼女が看護実務を行った期間は、わずか2年半でしかない。
彼女は90歳という長寿を全うしたが、40歳の頃から慢性疲労症候群のような症状により、以後ほぼベッドの上での生活になったこともあり、看護実務は以後できなかったわけである。
だから看護実務だけを取り上げれば、ナイチンゲールより優れた技術を持つナースは、他に幾人もいたであろうと想像できる。
しかしナイチンゲールは、野戦病院での現状を分析するためにレーダーチャートやグラフを用いた医療統計学を生み出し、かつ専門的教育を施した看護婦の必要性を提唱したことで、誰よりも優れた功績を挙げたと言ってよい。
特に1860年(40歳時)に世界初の看護学校と言える『ナイチンゲール看護学校』を創設するとともに、『Notes On Nursing(看護覚え書き)』出版したことをはじめとし、150点の著作を遺し看護思想を確立させたことは、看護史上たぐいまれな功績であるというべきだろう。
介護事業においても、思想教育を含めた知識と技術を伝えられる才能を見出すことが大事だ。それは必ずしも介護実務に長くかかわっている者の中だけからしか見いだせないということではないことを理解すべきだ。

このレベル指標は、僕が社福の総合施設長を務めていた際に、僕が作成して使っていたものである。
全ての職員は就業から1年以内にLEVEL3(実行・実践できる)に達しなければならず、期間内にそこに達しない職員は介護職員としての適性が問われ、配置転換などが余儀なくされることになっていた。
またLEVEL3に達した者も、必ずLEVEL4まで達するという目標を立てて、研鑽してもらうことにしていた。
しかしLEVEL4に達した職員は、LEVEL5以上を目指すかどうかを自己判断することができ、人によっては、「介護実務は頑張るけれど、人に教える役割には就きたくない」という希望も認めていた。
それぞれの長所を生かすことができる地位や職種で働き続けてくれることが、最も大事だと思うからである。
勿論、LEVEL5以上になることができれば、リーダーの役割にふさわしい職制上の位置づけが与えられるのだから、給与等の待遇も良くなるわけであるが、それを目指すかどうかも自己判断できるようにするために、こうしたレベル指標を作成したのである。
今振り返ってもそうしたシステムは、人材教育という面では非常に機能していたように思う。そして人材の定着という面でも効果があったと評価している。
このことは紛れもなく事実であり、実績なのである。だから誰もそのことを否定できないのである。
登録から仕事の紹介、入職後のアフターフォローまで無料でサポート・厚労省許可の安心転職支援はこちらから。




北海道介護福祉道場あかい花から介護・福祉情報掲示板(表板)に入ってください。
・「介護の誇り」は、こちらから送料無料で購入できます。
・masaの看取り介護指南本「看取りを支える介護実践〜命と向き合う現場から」(2019年1/20刊行)はこちらから送料無料で購入できます。

新刊「きみの介護に根拠はあるか〜本物の科学的介護とは」(2021年10月10日発売)をAmazonから取り寄せる方は、こちらをクリックしてください。
でも、実際は「なんでこの人が役職者(教育担当)なの?」という事例ばかりでした。
以前勤めていた入所施設に入職した当初、ご利用者様に高圧的な態度をとるだけでなく、その他業務態度にも問題ありなベテラン職員が私の教育係になりました。
当時、彼女は腰を痛めており、介助に制限が出ていたので、介助代わりの仕事として私の新人教育を任されたようです。
当然、まともな指導とフォローをしていただけるはずもなく、まだ経験の浅かった私でさえ「それはマズイでしょ…」と気付くような間違ったケアを、ドヤ顔で教えてくるのは日常茶飯事でした。
これではまずいと思い、私自身も書籍や動画サイトを参考に、介助方法のインプット・アウトプットを可能な限り頑張りましたが、独学で対応できることには限界があり、大変理不尽なことに、結局最後まで「使えない職員」扱いをされました。
あとで判明したことですが、上司も彼女の諸々の業務態度のマズさは知っていたようで、「新人教育をすることで、彼女自身が自分を振り返る機会になればと思い、(本当は教育係としては不適当なのは承知だけど)あえて貴女の指導をお願いした」という経緯があったようです。
「ふざけるな!こっちは真剣に介護の仕事をしたいのに!」と呆れたのは言うまでもありません。
その上司の部下への指導は「気をつけようね〜」レベルの緩いものであり、「とりあえず形だけでも業務が回っていれば加算がつくから、明らかな虐待行為さえ起こらなければそれでいいや」というのが本音だったのでしょう。
なお、その上司はご利用者様へのタメ口容認派でした。
全体的に職員の質が低かったのも納得です。
masa
が
しました