諸物価と人件費の高騰が経営を直撃し、厳しさを増している介護事業者にとって、来年度の介護報酬改定で大幅なプラス改定がないと、今後の事業経営の先は真っ暗闇になりかねない。

そのような危機感が多方面に伝わっていることから、政治家も報酬アップに動き出している。

5/22に自民党の社会保障制度調査会・介護委員会が、次期改定時に介護報酬を大幅に引き上げるよう求める要望書をまとめ厚生労働省へ提出したのに引き続き、5/31には自民党の「介護福祉議員連盟麻生太郎会長)」と「地域の介護と福祉を考える参議院議員の会末松信介会長)」が連名で大幅な介護報酬アップを訴える決議文を鈴木俊一財務相へ提出した。

与党第一党の議員団が財務大臣に直接決議文を手渡し、介護報酬の大幅なアップが不可欠であると訴えている影響は小さくはないと言えるのではないだろうか・・・。これもまた介護事業者にとっては、大きな追い風といえそうだ。
骨太の方針2023に向けた決議文
ただしこの決議文では引き上げ財源について、「その財源について介護分野をはじめとする社会保障費の歳出削減により確保するとの案については、介護分野にその余地を見出すことが困難であることから、両議員連盟ではまずもって必要な介護施策推進のための財源確保を最優先とすべきであるとの見解で一致した」として、具体的な案を示していない点が気になるところではある。

介護分野に引き上げ財源がないということになれば、他の分野にそれを求めると言っているわけであるが、場合によってそれは、国民の新たな負担を伴うことにもなりかねないという意味にもなる。

それは、「介護事業者のために自分たちが痛みを負うことはまかりならない」という反発にもつながりかねない。

だからこそ介護事業関係者は、そうならないように襟を正して、国民の福祉の向上に寄与していることを証明できる介護実践を行い続ける必要がある。

ところでこの決議文について僕が注目している点が別にある。

それは提出議員団のうち、「介護福祉議員連盟」の会長が、麻生太郎衆議院議員であるということだ。

今更言うまでもなく麻生氏は首相経験者であるだけではなく、現在も党副総裁として政権与党第一党の有力者であり続けている人である。

氏の出身は福岡県で選挙区も同県であるが、福岡には九州の帝王とも称される麻生グループという企業があり、このトップである麻生泰氏は、麻生太郎衆議院議員の実弟である。

麻生グループは医療関連や人材・教育、情報等のほか、介護事業も広く経営している。その為、僕も麻生グループの介護関連機関誌に連載を行っていた時期があり、同グループの関係者とも顔見知りである。

僕がその連載をしていた時期は、麻生太郎氏が安倍内閣の副首相兼財務大臣を務めていた時期であったと記憶しているが、弟が介護事業に携わっているわりに、介護業界には厳しい態度で臨んでいたという印象が強い。

報酬改定でも財務大臣という立場から、高い壁となって立ちはだかり、基本サービス費の引き上げを断固阻止する立場にいたような印象が強いのである。特に財政規律の面から、介護報酬の引き上げには、それに見合った別の部分から財源をきちんと確保せよという姿勢だった。

いわゆるプライマリーバラスゼロの立場を決して揺るがせることがなかったような印象を持っていた。

そに人が今回、財源を別に示すことなく大幅な介護報酬引きあげを求める決議文の、署名人トップにその名を記しているのである。与党有力者が180度立場を変えて、介護報酬の大幅引き上げを求めているという意味は決して小さくないだろう。

ということで2024年度の介護報酬改定は、今までであり得なかった変化が生ずる可能性があるのではないかと考えたくなる。

コロナ禍が新たな段階に移行し、経済活動も通常活動に戻りつつある中、企業の業績も急速に回復しており、国の税収は増えている。一時的にはそれらの税収増加分が新たな財源とみなすこともできるわけである。

そして介護保険制度が始まって以後、ずっとデフレ基調で行われてきた報酬改定が、初めてインフレ基調に振れた中で行われるという状況もあり、そうした社会情勢に合わせた形で、大幅な報酬引き上げが行われることを期待したい。

その為に、それぞれのステージで必要な声を挙げ、アクションを続けていこうではないか。
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