昨年の我が国の出生数は、調査以来初めて80万人を割り込んで7年連続で過去最少となった。

ということは20年後の成人の日には、新成人は7年連続で減少し過去最少になったという報道がされることになる。生産年齢人口が減り、国全体が活力を失っていくのである。

こんなふうに少子高齢社会が現在進行形で止まる見込みのない我が国では、社会保障の「支え手」が財政・サービス両面で急速に縮小していくことが確実である。

そのためより少ないお金と人によって、効率的に社会保障サービスを提供する仕組みを構築していく必要がある。いわゆる介護の生産性向上とは、その目的を達成するために必要とされているのだ。

つまり社会保障サービスでは、今より少ない費用で従前と同じ効果を求められるという意味だ。

医療と介護の関係性からこのことを論ずると、わかりやすいかもしれない。

例えば、医療と介護にまたがる似たようなサービスが存在するとしたら、医療サービスの方が、介護サービスよりお金がかかることは誰が考えてもわかることだ。

そうであれば、より費用のかからない介護サービスを優先して利用し、医療サービスを利用していた際と同じ効果が引き出せるならそれに越したことはないし、それが即ち生産性向上につながるとされていくのである。
誰かのあかい花
持病を抱える人が多い高齢者のサービスは、この傾向が特に顕著となる。

今後の我が国では、入院治療は本当に必要な人のみとする方向にシフトされ、治療や管理が必要な疾患を抱える人であっても、そのサービスは医療から介護への付け替えが進められることが必然となってくるのである。

脳卒中後遺症モデルでは、入院治療期間をできるだけ短くして、外来治療に切り替えた後、医療外来から介護保険の通所リハに切り替え、さらに一定期間を経過した時点で、通所介護に切り替えていくことが求められてくる。

こうして療養の場暮らしの場へと移り変わっていき、介護サービスに医療が深く食い込んでくるのである。

しかし前述したように、サービス利用の効果は従前と同じか、より高い方向に求められてくる。

せっかく費用が安いサービスに付け替えても、その結果が悪くなることによって、より医療サービスが必要になり、付け替える前の費用以上に財源支出が必要になっては本末転倒と言えるからだ。

科学的介護の実現や、介護・医療連携が必然となる理由はここにある。

ここで求められる介護・医療連携とは、多職種連携そのものであるが、それは自分以外の誰かが手を差し伸べてくれることを期待する前に、自分自身の役割を積極的に果たすことが前提となるということを理解する必要がある。

その中でソーシャルワーカーや介護職員などの、「福祉系専門職」の重要な役割は、利用者の直接支援であると同時に、利用者の代弁者となり、利用者自身が他者に伝えられない希望やニーズ・人に伝えたい訴えを代弁することである。いわゆるアドボカシーもしくはアドボケイトという機能を果たすことだ。

この機能と責務を積極的に果たすためには、利用者本位という言葉を建前にすることなく、本音にしていかねばならない。ケアプランはそのための宣言書である。

多職種連携チームの中には、いろいろな個性を持つメンバーがいる。その中には連携姿勢に問題があるようなメンバーも含まれ、情報提供も上手にしてくれなかったり、こちらが提供した情報に沿った対応をしてくれないようなことも起こり得る。

しかしそのことにいちいち憤慨して、支援の手を止めている暇はない。動かないメンバー、声が届かないメンバーがいたとしても、ケースは動き続けていることを忘れてはならない。

メンバーの誰それが、「〜をしない」のであれば、してくれるのを待つのではなく、してくれるように促すのでもなく、自分ができることをしていくことが大事だ。

利用者が持っている時間には限りがある。ごく短い時間しか持たされていない人も多い。

その人たちに、「少しお待ちください」と言わなくても良い支援に努める必要があるのだ。

待たずに自ら行う福祉、何事にも積極的に働きかけて、自分で動かす介護・・・それが私たちに求められる考え方だ。

何よりも利用者の暮らしの質の向上と、そして関わる誰かの幸福のために。・・・私たちが誰かのあかい花になるために。
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