来年度からの介護報酬改定に関連して、介護事業者にとって必要なプラス改定に向けた追い風が吹き始めていることについて昨日、「介護報酬アップへの追い風」という記事を書いて解説した。

しかしこのことが必ず大幅なプラス改定に結びつくとは限らない。昨日の記事でも指摘したように、問題は財源をどうするのかということである。

大臣や事務次官がインフレ基調に対応した思い切った報酬アップが必要だと主張していることに対し、今のところ国民の多くは関心を持っていない。

その発言の真意や、今後の議論の流れを注視しているのは、関係者にとどまっている。

しかし公費支出が伴う大幅な報酬引き上げには、国民の一定の理解が必要不可欠である。そのような理解が得られるのだろうか・・・。

特に今後改定議論が展開される中で、報酬アップの財源を確保するために国民の痛みが伴うとなった場合、果たしてどれだけの国民がそのことに理解を示し、痛みを受け入れてくれるだろうか・・・。

むしろ多くの国民が、保険料等の負担が増加することは認められないとして、報酬引き上げなど必要ないという声が挙がり、その声が大きなうねりとなって襲い掛かる可能性はないだろうか。

もしそうなれば、政治家もその声を無視できなくなるかもしれない。
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そうならないために介護関係者が心しておかねばならないことがある。

それはとりもなおさず、介護事業が国民の暮らしにとってなくてはならないものであるということを、我々自身の実践で示すことに他ならない。

毎日、誰かを相手にサービスを提供する我々自身が、日々サービスの品質向上に努め、利用者の暮らし向きが良くなっているという結果を示すことで、介護事業が国民にとって必要なサービスであることを証明していかねばならない。

逆に介護サービスの場で、人の体や心を平気で傷つける虐待行為や不適切サービスが横行するとしたら、自分が痛みを負ってまでそのような事業にお金をかける必要はないと考える国民が増えるだろう。

毎月のように、日本のどこかで引き起っている介護事業を舞台にした虐待事例が、氷山の一角でしかないと思われるのであれば、国民の多くは介護事業に国費をこれ以上かけることを良しとしないという危機感を抱かねばならない。

そうならないようにするために、我々は自分の足元の介護サービスを見つめる目を失わず、私たちの提供するサービスが、「対人援助」としてふさわしい内容になっているのか、国民の福祉の向上に寄与しているのかを検証していかねばならない。

利用者の暮らしの質(QOL)向上のための視点と方法論をきちんと身につけなければならない。

それとともにそうしたサービスの質やアウトカムについて、広く国民にアピールしていく必要もある。

介護事業者の最大の弱点は、「情報発信力不足」だといわれることが多い。その弱点を克服して、我々の職場で虐待や不適切サービスが、氷山の一角に隠れるようにはびこっているという事実はないことを伝えなければならない。

大多数の介護事業者が虐待とは無縁の、「人の役に立ち、信頼されるサービス」を提供し続けていることをアピールする必要がある。

他人だよりでなく、自ら進んでその必要性を発信することで、多くの国民に声が届くのだということを信じて、各自がそれぞれのステージでそうした取り組みを行っていただきたい。

そのようにして介護報酬の引き上げの必要性を訴える声は、真に人を幸福に導く介護実践によってしか、人の心に響く言葉にならないことを忘れてはならない。
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