財政制度等審議会は29日、政府が来月にもまとめる今年度の「骨太の方針」に向けた提言(建議)をまとめた。
その中で来年度の介護報酬等の改定について、「給付費自体の抑制に取り組み、制度の持続可能性を確保する必要がある」と提言している。そのほかの箇所でも、物価高を背景にした大幅引き上げを望む声をけん制する言葉を並べ連ねている。
国の懐を預かる立場の財務省は財布のひもを固く結ぶ姿勢を崩さず、物価高に対応した報酬アップを求める介護事業者にとって、相変わらず高い壁となり続けているわけである。・・・だがそれはいつもの光景であり、今に始まったことではない。
一方で、26日に開催された政府の経済財政諮問会議で加藤勝信厚生労働相は、診療報酬や介護報酬の大幅な引き上げが必要との認識を示している。
大臣発言は、「足元で物価が大きく上昇しており、(医療機関や介護事業所などは)公的価格のもとで経営状況の悪化につながっている。賃上げも他分野に比べて進まず、人材確保の観点からも報酬の大幅な増額が必要」というものである。インフレ基調に対応した診療報酬と介護報酬のアップが必要不可欠としたものだ。
これは3/12日に行われた『日本介護経営学会主催シンポジウム』で、厚労省大島事務次官が、「これまでとは根本的な考え方を変えて臨む必要がある。日本ではデフレが長く続いてきたが、物価や賃金が上がるインフレの局面に変わる。これに応じた報酬改定のあり方を新たに組み立てていく」と発言した内容とリンクしているように思える。

報酬改定の各論審議前に、大臣と事務次官がそろって改定結果に影響を及ぼすような発言を行うことは極めて異例なことではないだろうか。
これらの動きと、5/22に自民党の社会保障制度調査会・介護委員会が、次期改定時に介護報酬を大幅に引き上げるよう求める要望書をまとめ厚生労働省へ提出した動きと合わせて考えると、介護業界関係者は思わず、次期報酬改定は収支差率が改善できる大幅な引き上げになるのではないかと期待してしまう。
しかし情勢はそう甘くはない。大幅な報酬アップには財源が必要になるからだ。
今後示される財源が、新たな国民負担を伴うものならば、国民の多くから反対の声が挙がりかねない。そう考えると喜んでばかりいられないのが現状で、取らぬ狸の皮算用にならないように、心を引き締めて必要な声を挙げ続けなければならない。
また報酬アップの目的が、「賃上げ」・「他産業の平均年収との格差解消」ばかりに目が行くと、新たに統合・一本化される処遇改善加算のみ引き上げられて、介護事業者の収支差率改善につながる基本サービス費等の引き上げは行われないか、わずかなものになりかねない。
そうなってしまえば、すでに単年度赤字の事業者は来年度からの3年間で事業廃止に追い込まれてしまう。
特養や通所介護事業所の4割以上が、昨年度決算で単年度赤字に陥っているといわれ、そうした危機に瀕しているのだ。そうであるからこそ制度あってサービスなしという状況を生まないように、インフレや物価高に対応した基本サービス費の引き上げを訴えていく必要があるだろう。
例えば処遇改善加算を引き上げて一時的に介護職員の給与改善ができたとしても、事業者自体が廃業の憂き目にあえば、職を失って路頭に迷う人が出かねない。それを避けることは経済対策としても介護事業者の収支差率改善につながる基本報酬の引き上げが必要ではないのだろうか。
そもそも介護事業者の収支差率が下がっている一番の要因は、社会福祉法人等の多額の内部留保批判等をきっかけにして、介護事業者は「もうけすぎ」であるとして、基本サービス費等を大幅に削減したり、抑制したりした結果によるものである。
まさに公費のコントロールによって、収支差率は下げられたのである。
その当時と正反対の状態が生まれているのだから、今回は公費手当てによって介護事業者の窮状を救ってほしいと、すべての介護関係者が強く要望しなければならない。
公費運営されている介護事業者の収支差率の低下は、経営努力で何とかなる問題ではない。根本的な経営問題は、公費による手当でしか改善できないのである。
そのことを介護事業関係者自らが訴え続けていくことが重要になってくる。介護報酬の改善努力を他人任せにしないで、自らできることを一人一人の関係者が探して実行していくことで、それは大きな力になっていくということを忘れてはならない。
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