24日に開催された第217回社会保障審議会介護給付費分科会では、人材確保につなげる観点から介護職の追加的な処遇改善の必要性を指摘する声が相次いだ。
歴史的な物価高が続く中、賃上げを求める政府や世論の声が強いこともあって、今年の春闘は平均賃上げ率が30年ぶりの高水準となるなど、様々な企業が基本給を底上げするなどしている。そのことを考えると、介護事業者もそれに後れを取っていては、ますます人材難が拡大しかねないのだから、介護給付費分科会で挙がった声も理解できるというものだ。
しかしそれらの声が諸手を挙げて認められるわけではない。現に経団連委員などは、保険料負担増につながる給付費増は認められないという立場を崩しておらず、「更なる処遇改善の条件」は、「給付の適正化・重点化の徹底」であると指摘している。
つまりサービス種別によっては、報酬ダウンや切り捨てを行いながら、処遇改善の財源をひねり出し、全体としてはプラス改定にさせないことを示唆しているのである。
しかしこれをされると介護事業経営者は困ったことになる。昨今の状況は、物価高を超える給与改善ができないほど、介護事業収支が悪化しているからだ。
特養や通所介護などは、単年度赤字の事業者が5割近くなっている。繰越金を取り崩して経営を続けている事業者にとっては、次期報酬改定で事業収入につながる費用の増額がなければ数年内に事業廃止となりかねないという危機感を持っていることだろう。
それは従業員にとっても望まれない事態だ。処遇改善加算のみ引き上げられたって、一時的に給料が上がったとしても、それを支払ってくれる事業者自体が無くなれば元も子もないわけである。
何より利用者にとってそれは大きな不利益となる。制度あってサービスなしという事態が引き起るからだ・・・。
そうならないように、処遇改善加算だけではなく、事業収入となる費用も含めて大きなプラス改定にしてほしいと思わずにはいられない。
24日の分科会では、次期改正は診療報酬との同時改定となるため、看取りも含めて医療との連携を強化する施策を講じるよう促す意見も多かった。
そうなると看取り介護関連の加算がさらに手厚くされる可能性があるとを視野に入れなければならない。利用者の日常ケアの延長線上に、ごく当たり前に看取り介護があるという意識を強くもって、その実践と実践力の向上に努めてもらいたい。
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さて介護事業経営に関連しては、「介護職の派遣規制は実現するのか」という記事を書いて、派遣手数料負担が介護事業経営を圧迫していることを指摘した。
これに関連して19日の衆議院・厚生労働委員会で立憲民主党の小川淳也議員が、「紹介手数料の上限規制が必要ではないか」という質問を行った。
派遣手数料に上限規制を求めることは、介護事業者の利益に沿った質問のように感じる人が多いのかもしれないが、僕はそうは思わない。
上限を設けたとしても、本来介護事業として支出されるべき介護給付費が、本来業務とは全く別の手数料として支出されることには変わりない。それは国民の税金と保険料が、派遣会社に中間搾取されているという意味だ。
そこに上限規制を設けるという意味は、上限までならそうした中間搾取を認めるという意味にもなる。それは本末転倒だ。
そもそも手数料の上限を国が設定するということになれば、自由な市場競争の確保と相反する民業価格への国権介入という事態になりかねない。それは避けなければならないことではないのか・・・。
派遣手数料の高騰による介護事業経営への圧迫という問題を解決しようとするなら、人の命や暮らしを護る医療や介護という事業に、果たして派遣という就業形態を認めている現行制度そのものが問題ではないかという観点から論じてもらいたい。
税金や保険料を使って、国民の命や暮らしを護る事業については、事業者が従業員を直接雇用する以外の配置は認めないということになれば、医療・介護に対する派遣業そのものが成立しなくなるので、直接雇用できる人材も増えるということになる。
手数料上限などという中途半端な解決策ではなく、根本的な問題解決につながる法改正を行ってほしいと切に願うものである。
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