先週11日に開かれた財政制度等審議会・財政制度分科会において財務省は、次期介護報酬改定時に居宅介護支援費にも同一建物減算を適用するように提言した。

この提言の背景には、サービス付き高齢者向け住宅で暮らす利用者に対するサービスの適正化が必要であるとの認識がある。

サ高住の入居条件として、併設居宅ケアマネに担当を替ることを強制しているサ高住があり、併設サ高住以外の外部の利用者と居宅介護支援契約を結ばないことを原則としている悪質な居宅介護支援事業所もあることを問題視して、同一建物減算によってそのような扱いを防ごうとするものである。

しかしそれはあまりにも乱暴すぎる提言である。
沈む太陽
サ高住の利用者の計画担当居宅介護支援事業所が偏る理由の中には、対応の評判がよく、利用者の口コミで特定事業所が選ばれているケースもあるのだ。何もサ高住併設の関連事業所だけが選ばれているとは限らない。

また限度額いっぱいのプランの批判についても、本当にそれが不適切プランなのかを検証せねばならない。サ高住自体には介護機能はないのだから、中重度者がサ高住で暮らし続けようとすれば自ずと毎日の訪問介護利用等が必要になり、区分支給限度額を最大限使ったサービスプランが必要になるケースは少なくないからだ。

そもそも同一建物減算の主旨と、サ高住のプランの適正化問題をごっちゃにして考えてはならないと思う。

今さら言うまでもなく同一建物減算とは、訪問系サービスや通所系サービスに横断的に適用されている減算である。

訪問系サービスの場合は、同一建物に一定人数の利用者がいる場合、一度の訪問でサービス提供できるため、地域に点在している利用者の居宅を訪問する場合と比べて移動に係る労力や時間が軽減できるという理由があり、減算理由も理解できる。

通所系サービスの場合は、事業所と同一建物等に居住する利用者にサービスを提供した場合や、事業所と同一建物から事業所に通う者にサービスを提供した場合に適用される減算だから、送迎の手間や時間がかからないという意味で、その減算理由も理解できる。

つまりこの減算は、利用者が一定の建物に集中していたり、サービス提供場所と同じ空間に居住していることで、移動や集合の手間や時間が削減できることから、それに見合った費用とするという意味である。

しかし居宅介護支援はそれらのサービスとは異なり、減算される合理的理由は見当たらない。

なぜなら居宅介護支援は、利用者宅で完結されるサービスではないし、一定場所でサービス提供して終わるものでもないからだ。

居宅介護支援費とは、居宅サービス計画の作成を含めた一連のケアマネジメントに対する対価である。サ高住利用者全員に一度の訪問でモニタリングは可能となるが、その他のサービス調整やプラン作成などは、地域に点在している利用者と変わらない労力が必要とされるのだ。

そもそもサ高住の利用者に対するプラン適正化は、2021年10月から、市町村が定める基準を上回ったケアプランが検証される仕組みが導入されている。

それが機能していない点が一番の問題である。その理由は、「居宅介護支援事業所にフィードバック等を行っても、改善すべき課題のネックが住まい運営事務所との関係でもあるなどの理由から改善が進まない」というものなのだから、ケアプランの是正を義務付けたり、そこで不適切とされたプランを減算するルールを考えていくことがまず先だろう。

同一建物減算は本来、業務コストがかからないことを理由にしたコスパ減算である。それはケアプラン適正化とは異なる趣旨のものだという原点に還って考えるべきではないか。

ということで、財務省の居宅介護支援費への同一建物減算適用提言は、あまりに短絡的で乱暴すぎると思わずにいられないため、僕は反対の立場をとりたい。
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