介護保険制度の開始当初、通所介護の看護職員は、「サービス提供時間を通じて専従配置が必要」とされていた。

しかしこの基準はあまりにも厳し過ぎるとして、全国老施協等が基準緩和を働きかけた結果、看護職員はサービス提供時間を通じて専従する必要はないとされ、「看護師が不在の時間帯があるとしても、必要に応じてこれらの対応を行うことが可能であれば配置規定を満たす。」とされた。

しかしこの場合も、対応する看護職員は併設の特養を想定しており、外部の機関からの看護職員の対応は認められていなかった。

その規定がさらに緩和されたのが平成27年度介護報酬改定であり、その際には新たに下記の配置基準に変更された。
-------------------------------------------------
一定の要件を満たす場合であって、病院・診療所・訪問看護ステーションとの連携により看護職員を確保している旨を届け出ている場合は、看護職員の人員基準を満たす。

病院、診療所、訪問看護ステーションとの連携により、看護職員が指定通所介護事業所の営業日ごとに利用者の健康状態の確認を行い、病院、診療所、訪問看護ステーションと指定通所介護事業所が提供時間帯を通じて密接かつ適切な連携を図っている場合には、看護職員が確保されているものとする。

なお「密接、かつ適切な連携」とは、指定通所介護事業所へ駆けつけることができる体制や適切な指示ができる連絡体制などを確保することである。
-------------------------------------------------
このように外部機関との連携による必要時の看護職員対応によって、通所介護の看護職員配置基準は満たすとされたのである。そしてこの規定が現在も適用されている。
富士山
ただしこの規定にも、『指定通所介護事業所の営業日ごとに利用者の健康状態の確認を行い』という要件が入っていることから、営業日に看護職員が通所介護事業所にいる時間がまったくない状態は配置基準違反とされている。看護職員は少なくとも一度は通所介護事業所に顔を出して、利用者のバイタルチェックなどを行う必要があるとされているのである。

これは仕方のない基準と言えるのだろうか。果たしてこれ以上の基準緩和は困難であろうか・・・。

何度もこのブログで指摘しているが、既に我が国は人口減少社会に入っており、特に生産年齢人口の減少が著しい社会となっている。そのような中であと20年程度は、後期高齢者と要介護高齢者の数は増え続けるのである。

そうであれば看護職員という限られた数の人材資源を、もう少し効率よく活用できる方法を考えても良いのではないだろうか。少なくともバイタルチェックだけのために、利用者がいる場所に行かなければならないなんて言う効率の悪い方法は変えるべきだ。

例えばバイタルチェックなら、スマートベッドが求められる時代で指摘したように、通所介護でもスマートベッドを一台置いておけば、利用者が到着順にそこに横たわってバイタルチェックを済ますことができる。そのデータは訪問看護ステーションにリアルタイムで送られていくのだから、そこで看護職員は利用者各々の利用可否・注意事項を判断すればよい。

スマートベッドがないとしても、血圧や脈拍・体温を自動測定してアプリでそのデータを確認するなんて方法は簡単に可能になっている世の中だ。そのような形でICT活用して、看護職員が一度も顔を出さなくてもサービスが成立あるいは完結する通所介護サービスの在り方を考えるべきではないのだろうか。

それが求められる介護DXと言えるのではないだろうか・・・。
CBニュース連載
CBニュースの、快筆乱麻masaが読み解く介護の今!!(88)は本日朝アップされていますので、文字リンクをクリックして参照ください。
登録から仕事の紹介、入職後のアフターフォローまで無料でサポート・厚労省許可の安心転職支援はこちらから。




※別ブログ「masaの血と骨と肉」と「masaの徒然草」もあります。お暇なときに覗きに来て下さい。

北海道介護福祉道場あかい花から介護・福祉情報掲示板(表板)に入ってください。

・「介護の誇り」は、こちらから送料無料で購入できます。

masaの看取り介護指南本看取りを支える介護実践〜命と向き合う現場から」(2019年1/20刊行)はこちらから送料無料で購入できます。
きみの介護に根拠はあるか
新刊「きみの介護に根拠はあるか〜本物の科学的介護とは(2021年10月10日発売)Amazonから取り寄せる方は、こちらをクリックしてください。