福祉医療機構(WAM)が7日に公表した調査レポートによると、特養の電気代などの水道光熱費が、昨年の4月から12月の間に、前年同期と比較して40%以上増えた施設が約3割に上っているという。(※30%以上が約5割、20%以上が約7割にのぼっているそうである。

水道光熱費以外にもガソリン価格や食材料費等も上がっているので、これらの物価高は特養以外の他の介護事業者にも大きな影響を与えていることと思う。それはそのまま経営危機に直結しかねない大きな問題でもある。

そのことについて、全国介護事業者協議会・介護人材政策研究会・日本在宅介護協会の3団体が、全国1277の施設・事業所を対象として今年3月に実施した物価・光熱水費等の高騰による介護施設・事業所への影響調査についてをみるとコスト増の実態が垣間見える。

それに対する対策をどうしているかは、この調査報告書の11頁に示されているが、それは以下のようなグラフで表されている。
物価・光熱水費等の高騰によるコスト増への対応について
これをみてわかるように、昇給や賞与の見送り・減額という対策に走っている事業者が27.30%もある。

これは驚くべき数字だ。1/4以上の介護事業者が賃金カットに踏み込んでいるということになるからだ。

しかし介護事業者以外の業種を見渡すと、大企業の春闘結果を受けて大幅な賃上げに踏み込んでいる事業者が多い。

そうなると他産業と介護事業の賃金格差が広がるだけではなく、今現在介護事業者に勤めていれば賃金カットされてしまう人が、介護以外の他事業者に転職すれば、賃金が上がるという現実が生まれている可能性が高い。そこで介護事業からの人材流出が加速する恐れがあるということになる。

4/7に、「職員の賃金水準を公表するのはよいけれど・・・。」という記事を書いているが、そこで懸念したことがまさに現実化しつつある。

賃金カットに踏み込んだ介護事業者は、一時的にコストカットできて、収益が挙がったり、赤字幅が縮小できるかもしれない。しかしそれによって事業経営を続けるために必要な人材を失いかねないことを念頭に置いて賃金カットを決断しているのだろうか・・・。

日本というこの国の社会情勢と今後の介護事業の課題を見据えた場合、僕が経営者の立場ならそのような決断はできない。

総務省が12日に公表した最新の人口推計では、総人口は前年より55万6千人少ない1億2494万7千人で、働き手の中心となる15〜64歳は29万6千人減っている。新成人の数の減少をみても、今後とも生産年齢人口は減り続けることは確実で、少なくとも今後20年以上はその回復の見込みがないということになる。

その中で要介護高齢者は2042年くらいまで増え続けるのである。つまり今踏みとどまって、今後20年間近く増え続ける要介護者へのサービスを提供できれば、収益は必ず上がってくるのである。そのためには、サービスを続けられるために必要な人材を失わないようにすることが最重要課題である。

よって介護事業経営者は、従業員の給与カット以外のあらゆる手立てを講じて物価高に対応しながら、緊急補助金や介護給付費の引き上げを国に要望していく運動にも力を注ぐ必要がある。

そのような中で経営者には、自らの給与をカットしてでも、従業員の給与は下げないという矜持が求められると僕は思う。

27.30%もの介護事業者が従業員の賃金カットを行っているとしたら、そうであるからこそ自分が経営する事業者従業員の賃金を適正水準に上げて企業体力を示してほしい。

そうすることは、自分の経営する介護事業者に、他事業者で賃金カットされた人たちが転職してもらうチャンスでもあると考えるべきだ。この状況で優れた人材を確保できることで、来年度以降の収益増が期待でき、介護業界で勝ち組となることができるのだ。

国がいくら財布のひもを固くしようとも、要介護者の絶対数の増加に伴って、介護市場にはまだまだお金が流れ込み、介護給付費で言えば10年で10兆円以上増えるということを忘れてはならないのである。

この費用を手に入れるためには、介護事業を続け顧客を確保するための人財が何より必要なのである。

今般の様々な情勢を鑑みたとき、従業員の賃金カットと収益確保を図ることは愚の骨頂と僕は思う。
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